今回は「熱分解」について詳しく勉強していこう。

学校の理科や化学で習う反応、身の回りで起こる反応は化合や中和といった A+B→C または A+B→C+D というものばかりではなのです。

吸熱反応の一種である「熱による分解」について見ていこう。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.「分解」反応とは

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普段の授業で習う化学反応式は、複数の単体または化合物を反応物とし、1つまたは2つ以上の生成物を得る反応が多いでしょう。例えば有機物や金属と酸素が反応する燃焼や酸化反応、炭素を反応させることで酸化物から酸素を二酸化炭素として取り除く還元反応、酸性物質とアルカリ性物質から塩と水を生成する中和反応など…。これらは化合または合成とよばれる化学反応です。

一方で、化合物から複数の単体または化合物を得る反応分解といいます。

これらの違いを、化学式から見ていきましょう。

1-1.化学式での見分け方(化合)

1-1.化学式での見分け方(化合)

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例に挙げた化合(合成)反応を反応式にしました。どれも化学では基本中の基本である反応なので、反応の意味や実験手順は必ずおさえておきたいですね。

これらの反応式を「左辺の反応物」「右辺の生成物」に着目して見てみると、このようなことに気付くでしょう。

(1)反応物となる物質が複数あること(今回の解説では2種類とします。)

(2)生成物が1種類の物質であった場合、生成物は反応物2種類それぞれの部分構造を持つ化合物であること

(3)反応物・生成物がどちらも複数である場合、それぞれの部分構造を持ちながらも性質の異なる生成物ができること

これらをまとめると、化合の場合の化学反応式は下記のようなカタチになるのがわかりますよ。

(1)より、左辺は A+B
(2)(3)より、右辺は AB または C+D

つまり、化合の化学反応式は A+B→AB または A+B→C+D のようになっているのです。合成は複数の物質から性質の異なる化合物を生成する反応といえます。そのため、反応物は単体でも化合物でも構いませんが、生成物は必ず化合物となっていることを覚えておきましょう。

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1-2.化学式での見分け方(分解)

1-2.化学式での見分け方(分解)

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それでは、分解についても考えていきます。反応過程は後ほど説明するとして、代表的な分解の化学反応式を2つまとめました。化合と同様に、反応式のカタチに注目してみましょう。

(1)反応物が化合物1種類であること

(2)複数の生成物が生じること

つまり、化学反応式を考えたとき A→B+C のようなカタチをとります。分解反応は化合反応とは異なり、生成物は単体や化合物など様々ですが、反応物は必ず化合物であるといえるのです。

2.様々な分解反応

主な分解反応の種類を簡単に見ていきます。分解反応を進めるための方法によって、以下の4つを覚えておくといいでしょう。

\次のページで「2-1.熱分解」を解説!/

2-1.熱分解

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加熱によって分解反応が進むものを熱分解といいます。今回のテーマでもあり、中学のテストでとりあげられる分解反応のほとんどがコレといっても過言ではないでしょう。受験対策もしっかりしておきたい内容です。

反応過程等、詳しくは後ほど解説していきます。

2-2.電気分解

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多くの人が分解と聞いて思い出したのが電気分解ではないでしょうか。その名の通り、電気によって分解反応が進みます。

この実験装置を覚えていますか?電気を利用することで水を電気分解し、酸素と水素を発生させるというものでしたね。詳しくはこちらの記事を見直してみてください。

2-3.光分解(こうぶんかい)

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続いて光による分解反応、光分解についてです。これは身近な例で説明しましょう。

コンビニで抹茶アイスを買うとき、カップの中に黒いフィルムが入っているのを見たことはありませんか?バニラやチョコ味とは異なり、抹茶アイスは光を通さないフィルムになっているはずです。同じくコンビニの抹茶ドリンクには黒いカップが使われていることが多々あります。これは抹茶にふくまれる成分が光によって分解され、変色するのを防ぐためなのです。

その他にも、カーテンや布製品で、光のよく当たる部分だけ色あせてしまうことがよくありますよね。これも光分解によるものなのです。

2-4.放射線分解

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最後に解説するのは放射線による分解反応、放射線分解です。

放射線が物質に当たると、分子結合の切断が起こります。水の場合、水素やいくつかのイオン、過酸化水素等が分解生成物です。

考えてみてください。ヒトの体の約7割は水で出来ているのですから、体内でこのような分解反応が起こったらどうなるでしょうか。自然界に存在する微量の放射線量であれば問題ないものの、多量の被曝によって大切な遺伝子という情報をもつDNAが破壊されてしまう場合があります。これによって人体は生命活動を維持することができなくなってしまうのです。

放射線が人体に悪影響なのは、なんとなく知っていたという人も多いでしょう。そのため、通常の授業で実験を行うことはありません。しかし、放射線が人体に与える影響については簡単に知っておくといいですね。

\次のページで「3.テストに頻出の熱分解2パターン」を解説!/

3.テストに頻出の熱分解2パターン

テストで取り上げられる分解実験はこの2パターンを要チェック!化学反応式や実験のポイントをおさえておきましょう。

3-1.酸化銀の熱分解

酸化銀の熱分解はシンプルな実験です。黒色の酸化銀を加熱することで銀と酸素が生じます。

2Ag2O → 4Ag + O2

銀は金属なので、金属光沢や展性・延性を調べることで確認ができるでしょう。また、酸素を収集するためには水上置換法を用い、集めた気体に線香の火を近づけることで同定ができますね。

3-2.炭酸水素ナトリウムの熱分解

苦手とする人が多いのは、こちらの実験でしょう。炭酸水素ナトリウムを加熱することで炭酸ナトリウム、水、二酸化炭素が生成する反応です。

2NaHCO3→Na2CO3+H2O+CO2

ややこしくも思える反応式は、1つ1つの分子を原子ごとに分けて考えてみると理解がスムーズになります。物質名から組成式を思い出せるようにしておきたいですね。炭酸CO3水素HナトリウムNaのようにキーワードを見つけて考えてみましょう。

この実験では分解後の物質の同定が理解へのカギです。炭酸水素ナトリウムが炭酸ナトリウムになったことは水への溶けやすさで確認しましょう。炭酸ナトリウムのほうが水によく溶けます。発生した水は塩化コバルト紙、二酸化炭素は石灰水で確認ができますね。

化学反応は合成だけじゃない!2パターンは要理解

まずは化合と分解の違いを理解しましょう。化合は合成ともよばれ、複数の単体または化合物が反応することによって1つまたは2つ以上の生成物を得る反応です。このとき、化合物である生成物が必ず1つ以上生じます。一方で分解1種類の物質から複数の単体または化合物を得る反応であり、反応物は必ず化合物です。これを化学反応式での見極めのポイントにしましょう。

分解反応の代表である熱分解は、酸化銀の反応と炭酸水素ナトリウムの反応を解説しました。どちらも頻出の実験テーマなので、実験図や手順とともに覚えておきましょう。

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化学物質の状態・構成・変化理科

化学反応は化合だけじゃない!「熱分解」について元塾講師がわかりやすく解説

1-2.化学式での見分け方(分解)

1-2.化学式での見分け方(分解)

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それでは、分解についても考えていきます。反応過程は後ほど説明するとして、代表的な分解の化学反応式を2つまとめました。化合と同様に、反応式のカタチに注目してみましょう。

(1)反応物が化合物1種類であること

(2)複数の生成物が生じること

つまり、化学反応式を考えたとき A→B+C のようなカタチをとります。分解反応は化合反応とは異なり、生成物は単体や化合物など様々ですが、反応物は必ず化合物であるといえるのです。

2.様々な分解反応

主な分解反応の種類を簡単に見ていきます。分解反応を進めるための方法によって、以下の4つを覚えておくといいでしょう。

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