化学理科高分子化合物

「天然高分子化合物」とは?化学系学生ライターがわかりやすく解説

よぉ、桜木建二だ。今回は「天然高分子化合物」について勉強していこう。

天然高分子化合物はその名の通り天然に存在する高分子の化合物のことだが、実際にどこに存在するのかを知っている人は少ない。

そんな天然高分子化合物について、大学で高分子系の研究室に属する学生ライターずんだもちと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/ずんだもち

化学系の研究室で日々研究を重ねる理系学生。1日の半分以上の時間を化学実験に使う化学徒の鑑。受験生のときは化学が得意でなかったからこそ、化学を苦手とする人の立場に立ってわかりやすく解説する。

そもそも高分子とは?

image by iStockphoto

まずは簡単に高分子とは何なのかについて解説していきますね。

高分子とは「大きい分子量をもつ分子」のことで、その分子量は1000や10000を超えるものなども存在する巨大分子です。私たちの体の中にもあるDNAもその代表例で、下の画像のように日本の鎖がはしごのようにつながっていて、全体としては螺旋を巻いています。この画像では一部しか見ることができませんが、この鎖は長く伸びており、非常に大きい分子です。

では、実際に自然界のどこに高分子が存在するのかを見ていきましょう。

自然界にあるものの例1.お米

私たちが日々口にするお米の中にはデンプンという天然高分子化合物が入っています。

デンプンは「α-グルコース」(またはブドウ糖)という糖が数万や数十万個と繋がってできたものです。そして、その繋がり方によってアミロースやアミロペクチンのように呼ばれます。イメージしにくいと思いますので下の2枚の画像をご覧ください。

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NEUROtiker投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

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NEUROtiker投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

上の画像はグルコースの端と端が結合(α1-4結合という)で繋がっていて、この結合をつなげていくと分子は直鎖状になります。これに対して下の画像は、この直鎖に対してもう1つ結合が加わって分岐構造ができたものです。この事実は、高分子の糖(糖が多く繋がったものなので多糖と呼ばれます)には「2つのパーツがある」と考えるとわかりやすいと思います。もちろん末端の部分は糖が1箇所しか結合していないパーツになりますが、それ以外はこの「端と端で結合するグルコース」と「3箇所で結合し分岐をつくるグルコース」から成っているのです。

ここまでくると、デンプンには分岐が少ないものから多いものまで、いろいろなものが存在することがわかります。アミロースやアミロペクチンもこの分岐の多さで分類されたものでして、ほとんど分岐を持たないものはアミロース、グルコース約25個に1つの割合で分岐を含むものはアミロペクチンです。これらには明確な線引きがあるわけではないので注意してください。実際に、これらの間くらいの分岐の数を持つものを中間体と呼んだりもします。また、当然これらよりもさらに分岐の多いものも存在し、グリコーゲンとして知られるもの化合物の分岐は約3個に1つです。

アミロースとアミロペクチンの割合は、お米の粘り気に大きく影響しています。私たちが日頃食べているうるち米はアミロースが20%、アミロペクチンが80%程度含まれていますが、もちもちしたお米の食感はアミロペクチンから来ていて、実際にアミロペクチンが70%のお米となるとパサパサしてしまうのです。逆にアミロペクチンの割合が増えて100%近くになったものはもち米と呼ばれています。もち米のあの食感はアミロペクチンのものだったのですね。

さて、デンプンの構造がわかったところで、高分子について少し勉強していきましょう。

先ほどアミロースは分岐がほとんどなく直鎖であるという説明をしました。しかし、仮に分岐が全くなかったとしてもアミロースはまっすぐな分子にはなりません。実際にはアミロース間の水素結合により螺旋を巻いているのです。このような事実は高分子化合物によくあることであり、デンプン以外の高分子化合物も様々な構造をとります。分子の骨格がどうなっているかを1次構造と呼ぶのに対して、この1次構造がどのような形(螺旋など)をとっているかのことを2次構造と呼ぶので覚えておきましょう。

自然界にあるものの例2.ゴム

ゴムも身近な天然高分子化合物の1つです。その代表例としてイソプレンゴムの構造を見てみましょう。イソプレンゴムは炭素と水素からなる単純な構造の化合物で、ゴムノキの樹液から採取することができます。

この化合物にはシス-トランス異性体があることに気づきましたか?主鎖が二重結合をはさんでどちら側に出ているかによって、全体の形が変わってきますね。天然ゴムでは100%シス体であるために下の画像のように分子が曲がっていて、隙間の多い構造になっています。そのため、天然ゴムは軟らかい性質を持っているのです。

image by Study-Z編集部

一方でトランス型のゴムも存在し、これはグッタペルカと呼ばれています。シス体は曲がっていて隙間が多い構造なのに対してトランス体はまっすぐに伸びていて全体として綺麗に配列し結晶のようになるため、硬い樹脂となるのです。実際にグッタペルカはゴルフボールに使われていることからもその性質が感じられると思います。

余談にはなりますが、このシス体の天然ゴムを人工的に作る試みもされていて、実際に99%以上がシス体の合成ゴムも作られています。しかし、ここまでシス体が多く含まれていても天然ゴムのような性質が出ないそうです。天然物の力は凄まじいですね。

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天然物というのは凄い力を持っているんだな。

その証拠に、飛行機のタイヤに使われているのも合成ゴムではなく天然ゴムなんだ。

自然界にあるものの例4.タンパク質

タンパク質も身近な天然高分子化合物です。タンパク質はアミノ酸がいくつも繋がってできた高分子で、自然界にもその組み合わせ方によって非常に多くの種類が存在します。自然界で見つかっているアミノ酸は数百種類もあり先ほどのデンプンとは違って「パーツ」の数が非常に多いので、これらがつながったタンパク質の種類は果てしないことが分かりますね。

さらに、タンパク質にも先ほどのデンプンと同じことが言えます。高分子には全般的に言えることですが、そのパーツによって高分子全体も様々な形態をとるため、パーツの性質以上のものが発現したりするのです。このようなタンパク質は私たちの体の中にも存在することは有名ですが、実は自然界に存在するアミノ酸のうち体内には20種類しかありません。たった20種類しかなくてもその組み合わせ方は非常に多いので、このような複雑なシステムの体を動かすことができているのですね。

【番外編】天然の無機高分子化合物

ここまで紹介してきた高分子は全て有機物です。一般に高分子というと有機化合物を指すのですが、無機物高分子化合物があることも忘れてはいけません。

有機高分子化合物の主役は炭素ですが、無機高分子化合物の主役になるのは主にケイ素です。周期表でも炭素のすぐ下に位置しますので似た性質であり、ケイ素が主役になるのも納得がいくかと思います。

では、ケイ素を主役とした無機高分子化合物は自然界のどこに存在しているのでしょうか。

石英」は鉱物としてよく知られていますが、この化合物は二酸化ケイ素が結晶化してできたものです。構造は下の図のようになっており、非常の硬い化合物であることが伺えますね。

SiO2 - Glas - 2D.png
User:127.0.0.l – File:SiO2 – Glas – 2D.png, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

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