今回は「強酸」と「弱酸」について説明します。

液体は㏗によって「酸性」、「中性」、「塩基性」に分けられる。中性のpHは7で、酸とは㏗が7より小さい物質のことです。そして㏗がより小さいほど物質は強酸となり、中性に近づくほど弱酸となる。この強酸と弱酸の分かれ目は電離度にあるんです。水素イオンがほとんど電離し、電離度がほぼ1となるのが強酸、一部しか電離しないのが弱酸となる。強酸といえば塩酸や硫酸が、弱酸といえば酢酸やクエン酸が有名です。

酸に関する知識はテストや入試はもちろん、大学での実験に欠かせない。これを機にしっかりと覚えてくれよな。というわけで、酸と強酸について以前酢酸がかかって火傷をしたことのある元家庭教師のリケジョ、たかはしふみかが解説します。

ライター/たかはし ふみか

高校生の時、指示薬の研究をしていた元化学部部員。国公立大学の化学科に在籍し新エネルギーの研究をしていた。実験中の事故で火傷をしてしまい、強アルカリや酸の怖さを身を持って体験している。

「酸」と「塩基」のおさらい

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強酸と弱酸について学ぶ前にまず、「酸」と「塩基」についておさらいしましょう。「酸とアルカリ」いえば中学校の理科の授業でリトマス試験紙を赤くするのが酸性青くするのがアルカリ性と習いましたね。高校では酸と塩基として学びます。

塩基とは㏗が7よりも大きい物質のことで、その中で水に溶けやすいものをアルカリといのです。酸は酸っぱい味がします。一方、塩基性の物質には苦みがあり、触るとぬるぬるとした感触なのが特徴です。「酸」と「塩基」は次のように定義されています。

酸の定義
アレニウスの定義  水中で水素イオンHを生じるもの 
ブレンステッド・ローリーの定理 水素イオンHを他の物質に与えるもの

塩基の定義
アレニウスの定義 水中で水酸化物イオンOHを生じるもの  
ブレンステッド・ローリーの定義 水素イオンHを他から受け取るもの

水素イオンの挙動が酸かアルカリかを見極めるポイントとなっています。ちなみに、酸性とアルカリ性の間にあるpH7の物質は中性ですね。酸と塩基についてもっと知りたい人はこちらの記事をどうぞ。

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「強酸」と「弱酸」の違い

「強酸」と「弱酸」の違い

image by Study-Z編集部

強酸と弱酸の違いは電離度にあります。電離度とは電解質が水溶液中で電離する割合のことで、水温や濃度によって異なるので注意してください。なお上の図に示した電離度は、25℃、0.1mol/Lのときです。強酸、強塩基の電離度は1に近く弱酸、弱塩基になると1よりもずっと小さな数字となります。

ただし、弱酸といってもかかったら火傷などのケガにつながります。特に原液を使って実験するときなどは気を抜かず、もしかかってしまったら素早く洗い流し、適切な処理を行いましょう。試薬をこぼさないことはもちろん、白衣を着るなどの対策も重要です。

強酸と言えばこれ!BEST3

では強酸に具体的にどのような物質があるのか確認していきましょう。

1.酸の代表格!塩酸

塩酸は塩化水素(HCl)を水に溶かした水溶液です。実験室にある塩酸は大体濃度35~37%のものですが、用途にあわせて他の濃度の塩酸も売られています。

高校で塩酸を使う実験といえば中和滴定、金属のイオン化傾向を確認する実験が一般的です。塩酸はイオン化傾向(陽イオンへのなりやすさ)が比較的大きな亜鉛やニッケルなどを溶かすことができます。

塩酸は濃度が10%を超えると劇物に指定される物質です。そのため家庭用のトイレ用洗剤などで塩酸が入っているものがありますが、その濃度は10%以下となっています。ただし、薄まっていたとしても危険な物質であることは変わりません。取り扱う際には十分気を付けましょう

2.試験にも頻出!2価の酸、硫酸

硫酸の分子式はH2SO4、ひとつの硫酸からふたつの水素が放出される2価の酸です。中和滴定の際、1価の酸の塩酸と2価格の酸の硫酸では考え方や計算方法が異なるので注意しましょう。

硫酸はその濃度によって濃硫酸と希硫酸があり、質量%が90%以上のものを濃硫酸、90%未満のものを希硫酸といいます。硫酸も金属と反応しますが、希硫酸と濃硫酸で反応性は異なり、希硫酸は常温で塩酸と同じくらいのイオン化傾向の金属と反応するのです。一方、熱濃硫酸は水銀や銀とも反応することができます。

3.金属と反応しやすい酸、硝酸

硝酸の分子はHNO3で、工業的にはアンモニアを原料に生成します。濃硝酸は無色の液体で光や熱に弱いため、褐色瓶に入れて冷暗所で保存しなくてはいけません。

強い酸化力を持つ硝酸は銅や水銀、銀と反応し、さらに濃塩酸:硝酸=3:1で王水を作れば、白金や金も溶かすことができます。その一方、濃硝酸と反応すると不動態(酸化物の被膜が内部を守る状態)を作ってしまうため、アルミニウム、鉄、ニッケルを溶かすことができません。

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弱酸と言えばこれ!BEST4

続いて弱酸を紹介します。弱酸は意外と台所にあるものが多いのが特徴です。

1.キッチンに1本はあるはず、酢酸

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酢の物に酢飯と料理に活躍の酢も弱酸の仲間です。食用のものはpH3くらいですが、実験用のものだとpHは2.4くらいを示します。酢酸は弱酸としては酸性が強く、体にかかると大変危険です。

そんな酢酸ですが、実は体内で生成されています。お酒を摂取すると体内でエタノール→アセトアルデヒド→酢酸と代謝されていくのです。ちなみに、アセトアルデヒドを酢酸へと代謝するときに水を大量に使います。飲酒をすると喉が渇くのは代謝のためなのですね。

2.実は酸性の仲間、炭酸

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しゅわっとしたのど越しが楽しめる炭酸飲料。実は炭酸飲料も酸性の仲間なのです。炭酸飲料には二酸化炭素が溶けています。二酸化炭素は無色、無臭で空気より重たい気体です。水に二酸化炭素が溶けると炭酸(HCO3)となり、弱酸性を示します。

CO2+H2OH2CO3H++HCO3-

3.果物の酸味の素、クエン酸

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柑橘類の酸味の素であるクエン酸。果物だけでなく、梅干しにも含まれています。その爽やかな酸味から食品添加物としても使われている酸です。クエン酸は最近では掃除にもよく使われていますね。水垢や石鹸カス、尿石をよく落としてくれるのでぜひおうちで試してみてくださいね。

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4.蟻は酸っぱい?ギ酸

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酢酸同様に強い刺激臭があります。ギ(蟻)酸という名前でもすべての蟻が持つわけではなく、さらにギ酸を持つ蜂もいるのです。酢酸よりも強い酸で、ホルムアルデヒドを酸化することで得ることができます。毒性があり、目や皮膚にかかると危険です。

強アルカリと弱アルカリ

ここで酸の対である強アルカリと弱アルカリについて解説します。

強アルカリ、頻出はこれ

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強塩基には水酸ナトリウム水酸化カリウム水酸化バリウムがあります。特によく出てくるのが水酸化ナトリウムで、高校化学の塩基と言えば水酸化ナトリウムと言っても過言ではありません。

強塩基の代表格である水酸化ナトリウム。せっけんの材料、苛性ソーダのことです。塩酸と反応して塩化ナトリウムになることから中和について習う時によく例として出てきます。また、実験でアルカリ性の物質を使う時にもよく用いられる物資です。

弱アルカリでよく出るのはこれ

弱アルカリでよく教科書や問題に出てくるのがアンモニアです。というよりも、高校化学で他の弱塩基はほとんど登場しないと言ってよいでしょう。アンモニアは無色でとてもきつい刺激臭のある気体です。非常に水に溶けやすく、水溶液は弱アルカリ性を示します。塩化水素路反応すると塩化アンモニウムを生成し、白煙を生じることを覚えておくと便利です。

酸は意外と身近な物質だった!

強酸は教科書に出てくるものばかりですが、弱酸は飲み物や食べ物に含まれていたりと生活に身近な物質が多いですね。梅干しの酸っぱさのもとが掃除でも活躍するとは意外に感じた人も多いでしょう。

酸と塩基は受験に大切な単元ですが、なによりも実際に実験をする時に必要となります。酸と塩基の定義や具体的な物質はもちろん、安全に取り扱うための知識を身に付けてくださいね。

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化学

3分で簡単にわかる「強酸」と「 弱酸」の違い!「酸」と「塩基」の定義も元家庭教師がわかりやすく解説

今回は「強酸」と「弱酸」について説明します。

液体は㏗によって「酸性」、「中性」、「塩基性」に分けられる。中性のpHは7で、酸とは㏗が7より小さい物質のことです。そして㏗がより小さいほど物質は強酸となり、中性に近づくほど弱酸となる。この強酸と弱酸の分かれ目は電離度にあるんです。水素イオンがほとんど電離し、電離度がほぼ1となるのが強酸、一部しか電離しないのが弱酸となる。強酸といえば塩酸や硫酸が、弱酸といえば酢酸やクエン酸が有名です。

酸に関する知識はテストや入試はもちろん、大学での実験に欠かせない。これを機にしっかりと覚えてくれよな。というわけで、酸と強酸について以前酢酸がかかって火傷をしたことのある元家庭教師のリケジョ、たかはしふみかが解説します。

ライター/たかはし ふみか

高校生の時、指示薬の研究をしていた元化学部部員。国公立大学の化学科に在籍し新エネルギーの研究をしていた。実験中の事故で火傷をしてしまい、強アルカリや酸の怖さを身を持って体験している。

「酸」と「塩基」のおさらい

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強酸と弱酸について学ぶ前にまず、「酸」と「塩基」についておさらいしましょう。「酸とアルカリ」いえば中学校の理科の授業でリトマス試験紙を赤くするのが酸性青くするのがアルカリ性と習いましたね。高校では酸と塩基として学びます。

塩基とは㏗が7よりも大きい物質のことで、その中で水に溶けやすいものをアルカリといのです。酸は酸っぱい味がします。一方、塩基性の物質には苦みがあり、触るとぬるぬるとした感触なのが特徴です。「酸」と「塩基」は次のように定義されています。

酸の定義
アレニウスの定義  水中で水素イオンHを生じるもの 
ブレンステッド・ローリーの定理 水素イオンHを他の物質に与えるもの

塩基の定義
アレニウスの定義 水中で水酸化物イオンOHを生じるもの  
ブレンステッド・ローリーの定義 水素イオンHを他から受け取るもの

水素イオンの挙動が酸かアルカリかを見極めるポイントとなっています。ちなみに、酸性とアルカリ性の間にあるpH7の物質は中性ですね。酸と塩基についてもっと知りたい人はこちらの記事をどうぞ。

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