
「アセトン」ってどんな物質?沸点や性質・使い方も元家庭教師が簡単にわかりやすく解説!
化学実験において溶媒は欠かせない。溶媒とは、他の物質を溶かす物質のことで溶剤と呼ばれることもある。メタノールやヘキサン、そしてアセトンなどが有機溶媒として実験室や工場で活躍している。ちなみに溶媒に溶かされるものを溶質、溶媒に溶質を溶かした液体を溶液というぞ。
ところでアセトンはとても極性が大きい。普通、水などの極性が大きい物質は沸点は高くなっている。しかしアセトンの沸点は水に比べてかなり低い。そこで今回はアセトンの物理的性質から利用方法まで、アセトンに大変お世話になったというたかはしふみかが説明します。

ライター/たかはし ふみか
大学では工学部で化学を学び、工業化学の教員免許を持っている。セルロースを原料に発酵させ、エタノールを作る方法を研究していた。実験に役立つ知識を身に付けたいと危険物取扱者の資格を取得。用語を覚えるのは得意で消防法はほぼ満点だったが、物性は苦手。しかし、アセトンやアルコール類は得点源だった。
アセトンとは?

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まずはアセトンについて勉強しましょう。
アセトンの分子式はCH3COCH3、分子量は58.08g/molの最も簡単なケトンです。そのため、ジメチルケトンとも呼ばれています。ケトンについてはまた後で解説しますね。
クメン法によるフェノール製造のときの副生成物として過剰に生産されやすいアセトン。そのためアセトンは安価な溶媒として実験で大量に使ったり、また有機物を溶かすことから実験器具の汚れを落とすのに使ったりと化学系の学生や工場ではおなじみの物質です。揮発性(常温常圧で簡単に蒸発する性質のこと)があり、水を嫌う実験では水で洗浄した器具にアセトンをかけてドライヤーで乾かして実験系に水が入らないようにしています。
ところでアセトンは消防法で危険物第4類、引火性液体の第一石油類の水溶性に分類されている物質です。そのため、大量に取り扱ったり保存する場合は消防署に届けたり、危険物取扱者を置く必要があります。
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アセトンと極性

アセトンの沸点は、先程説明したように56.5℃です。水の100℃よりもだいぶ低いですね。しかしアセトンは、水と同様に極性分子です。そこで同じ極性分子なのにどうしてこんなに違うのかを説明していきます。
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極性のおさらい

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まず極性についておさらいしましょう。
分子には無極性分子と極性分子があります。例えば同じ原子同士でできている水素分子と塩素分子はそれぞれ無極性分子です。一方、水素と塩素からできた塩化水素は、塩素側が負に偏っている極性分子となります。
共有結合している原子の間には共有電子対ができ、この共有電子対を引き付ける強さを電気陰性度というのです。水素と塩素では電気陰性度が塩素の方が大きく、このため塩素の方に共有電子対は引き付けられます。そのため、塩化水素では塩素原子が負に、水素原子が正の電荷に偏っているのです。
どういう分子が極性、無極性になるかについては下を参考にしてください。
・無極性分子:単体、非対称構造の多原子分子
・極性分子:異なる原子からできた二原子分子、対象構造の多原子分子
単体とは酸素分子や水素分子など1種類の原子からできた分子でしたね。単体は同じ原子同士からできているため、電荷に偏りが生まれることなく無極性分子となります。単体についてはこちらの記事をどうぞ。
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対称構造、非対象構造の多原子分子とちょっとわかりづらいかもしれません。簡単にいうと対象構造とは直線型の二酸化炭素、正四面体型のテトラクロロメタン、非対称構造とは折れ線型の水、三角錐型のアンモニアのことです。対象構造は分子の中で電荷の偏りを打ち消し合えるので無極性分子となります。一方、非対称構造は電荷の偏りがあり極性分子となるのです。
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極性と沸点
分子量が同じくらいの極性分子と無極性分子を比較すると、極性分子の方が沸点、融点が高くなります。これは分子同士の間に働く分子間力(ファンデルワールス力)が大きくなるからです。
極性分子は分子同士の間に電荷の偏りによって生じたクーロン力が働く分、分子間力が無極性分子よりも大きくなります。そして水分子の場合は分子間力に加えて水素結合がはたらくのです。水素結合は水分子に含まれる水素と別の水分子の酸素の間に働く結合で、ファンデルワールス力よりも10倍近い強さがあります。
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