姿を消した太陽神と闇に包まれた世界
次に、三種の神器がどのようにして作られたのかについての説明を神話で語っていきます。天界に君臨する皇祖神・アマテラスオオミカミが姿を消した時、光が失われて世界は闇に包まれました。それもそのはず、アマテラスオオミカミは皇祖神であると同時に、太陽神でもあったのです。
アマテラスオオミカミはどこに行ってしまったのか?……闇に包まれたことで探そうにも探せず、神々が困り果てていたその時、知恵の神・オモイカネは一つの策を思いつきました。その策とは鏡を作ることで、早速鏡を作る神・イシコリドメは言われたとおりせっせと鏡を作り、さらに勾玉造りの神・タマオヤノミコトが装飾として勾玉をつけます。
そしてアメノウズメノミコトが裸で踊ると、神々は盛り上がってはしゃぎ出しました。闇の中で響き渡るはしゃぎ声、「これはどうしたことか?」……闇に包まれた中で聞こえる声は嘆く悲鳴ではなく楽しむ笑いの声、「なぜ世界が闇に包まれたというのにはしゃいでいる?」とアマテラスオオミカミは不思議に思います。
知恵の神の策
アメノウズメノミコトは暗闇の中、「あなた様より素晴らしい神様が来たのでみんな喜んでいるのです!」と言いました。「さてそれはどんな神なのか?」、アマテラスオオミカミがその姿を一目見ようと洞窟から身体を乗り出すと、すかさず鏡を持った神がアマテラスオオミカミに鏡を向けます。
鏡にうつる自らの姿、しかしアマテラスオオミカミは暗闇のせいでよく見えず、それが自身の姿とは気づきません。もっとよく見てみようと身体をさらに乗り出したその時、力持ちで有名な神・アメノタヂカラオに引っ張り出されてアマテラスオオミカミは洞窟から姿を現したのです。
こうしてアマテラスオオミカミが再び姿を現したため世界は再び光に満ち溢れ、この時作ってアマテラスオオミカミに向けた鏡こそ、三種の神器の一つである八咫鏡だったのでした。そして鏡につけた装飾の勾玉が、同じく三種の神器の一つである八尺瓊勾玉だったのです。
天界を追放されて地上界に降り立った神
太陽神・アマテラスオオミカミが姿を消して世界が闇に包まれた天の岩戸事件、そもそもアマテラスオオミカミが姿を消したのはスサノオノミコトの行いが原因でした。そのため、スサノオノミコトは天の岩戸事件後に天界である高天原を追放され、地上界へと降り立ちます。
降り立った先は出雲大社で有名な出雲、そこでスサノオノミコトはクシナダヒメと名乗る美しい女性と出会いました。美しいクシナダヒメを愛したスサノオノミコト、永遠の愛を誓って結ばれることを望んだスサノオノミコトでしたが、クシナダヒメの口から語られたのは残酷な事実だったのです。
「私はもうすぐ死ぬ。なぜならこの地にいる大蛇・ヤマタノオロチの生贄になってしまうからです」……クシナダヒメを生贄にする儀式など許せない!そこでスサノオノミコトはヤマタノオロチに対して果敢に立ち向かい、戦い末ヤマタノオロチの退治に成功したのでした。
ヤマタノオロチから見つかった剣
スサノオノミコトがヤマタノオロチの身体を切り刻む時、なぜか自分の使っていた剣が突然折れてしまいます。大蛇の怪物と言えど、神が扱う神聖な剣がこうも簡単に折れるはずはなく、不思議に思ったスサノオノミコトは切り刻んだ部分を探ってみることにしました。
そして見つかったのが天叢雲剣。スサノオノミコトはこれをアマテラスオオミカミに献上して、愛するクシナダヒメと結婚することができたのです。そして、スサノオノミコトはクシナダヒメと共に出雲の地・須賀にて永代幸せに暮らしていったのでした。
こうして、アマテラスオオミカミの元に揃った八咫鏡と八尺瓊勾玉と天叢雲剣の3つの宝物、これらは三種の神器として扱われるようになったのです。ちなみに、ヤマタノオロチのいる場所の上には常に雲が成っていたそうで、「天に雲が成っている怪物から見つかった剣」ということで、天叢雲剣と命名されました。
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