今回は「熱運動」と温度について詳しく勉強していこう。

どんな物質であっても、どんな状態にあっても、存在する全ての物質には必ず熱の存在がある。そして何かしらの運動をしていて、エネルギーを持っているんです。

今回はそんな「熱運動」について、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.物質における運動

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人は走ったり自転車に乗ってみたり、泳いだりスポーツをすることを運動といいますよね。ただ起きて椅子に座っているだけで運動しているという人はいないでしょう。しかし、物質においては、存在しているだけで必ず振動という運動を伴います。

全ての物質のもとは原子という小さな粒子です。これらが集まって単体や化合物、混合物として様々な物質を形作っていますね。原子というのは常に乱雑に揺れ動いています。見かけ上は固体でも、原子レベルで見ると振動しているのです。物質における運動の始まりは、この振動運動といえるでしょう。

1-1.熱運動と熱エネルギー

1-1.熱運動と熱エネルギー

image by Study-Z編集部

これまで反応熱、熱エネルギー、熱量だとか、化学においては「熱」というものが非常に深く関わっているのがわかるでしょう。物質における振動運動熱振動であり、熱運動とよばれます。

固体では原子や分子が結晶のようなきれいな配列で固まっているように見えますね。しかし実際は熱運動を繰り返しています。液体や気体になればさらにその運動は激しくなり、空気中を自由に飛び回ったり、ときには原子や分子同士の衝突も起こっているのです。このときの熱運動の激しさが熱であり、熱運動における運動エネルギーと覚えましょう。

2.運動エネルギーの種類とその意味

ところで、エネルギーには様々な種類がありましたね。全ての物質は熱運動をし、運動エネルギーを持っています。しかし、実際の物体の動きやはたらきとして見ると、運動エネルギーの「運動」の意味合いが異なる場合があるのです。

\次のページで「2-1.位置エネルギーと運動エネルギー」を解説!/

2-1.位置エネルギーと運動エネルギー

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わかりやすい例としては、ボールの動きやジェットコースターなどでも例に挙がる位置エネルギーと運動エネルギーについてでしょう。物質が高い位置にいればいるほど位置エネルギーは大きくなり、坂道を下ることで位置エネルギーは運動エネルギーに変えられます。

この場合、熱運動による運動エネルギーとは意味合いが異なるのがわかるでしょうか。物質そのものがもつ熱による運動エネルギーとは別に、高さやスピードといった別の要素が関わっているものです。高いところにいる物質のほうがより分子が振動して液体が気体になったり、逆に振動しなくなって液体が固体になったり状態が変化することはありませんよね。

この例での運動は、物を動かしたり変形させたり、速度や質量、摩擦などの要素が関わる運動に伴うエネルギーを意味しています。粒子の振動である運動とは全くの別物ですよね。こう考えてみると、同じ運動エネルギーといっても、意味合いが違うのがわかるでしょう。

3.温度の種類

「熱運動」というからには「熱」「温度」の存在を忘れてはいけませんね。ここでは、温度の種類について解説します。

温度の単位を思い浮かべてみましょう。どんなものを知っていますか?温度を表すのは度(℃)だけではありませんよ。

3-1.セルシウス温度(摂氏)

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みなさんがよく知っている温度の単位はでしょう。セルシウス温度摂氏のことですね。

水の凝固点を0℃、沸点を100℃として定義された温度です。これを考案した学者の名前をとってセルシウス温度と名付けられました。しかし後の研究で、厳密には0℃、100℃ではなく、それぞれ 0.002519℃ 、99.9743℃であることがわかっています。

\次のページで「3-2.ファーレンハイト温度(華氏)」を解説!/

3-2.ファーレンハイト温度(華氏)

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温度計に℃と、2つの単位を見たことのある人はいませんか?目盛りの間隔や数字の大きさが全く異なるものなので、読みづらいと感じた人も多いでしょう。これはファーレンハイト温度、華氏とよばれる温度の単位の1つです。日本ではマイナーですが、海外では日常的に使用される単位でもあります。

ファーレンハイト温度はセルシウス温度の値の1.8倍に32を加えることで変換が可能です。とてもややこしい計算ですよね。

この単位ができたのには様々な説があります。最も低い室外の温度を0℉、ファーレンハイト温度考案者本人の体温を100℉とした説。氷と塩の混合物を0℉、血液を96℉とした説。氷枕の温度、人間の体温、羊の直腸温度を基準にした説など様々です。気になる人はぜひ調べてみてくださいね。

3-3.絶対温度(ケルビン)

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そして最後に、科学を学ぶうえで欠かせないのが絶対温度、ケルビンの考え方です。温度は物質の熱運動による「熱」の存在がベースにあり、それには下限が存在するであろうという考えからこの温度が考えられました。温度が下がることで熱振動が小さくなり、運動エネルギーが最低になった状態になる下限温度を絶対零度 0Kとしています。

0K は -273.15℃ と変換することができるので、水の融点・凝固点(0℃)は 273.15K、沸点(100℃)は 373.15K です。理論上この温度下では全ての物質が運動を停止するとされ、原子の振動が完全に止まることを意味します。

しかし、近年クマムシという生物が発見され、ほぼ絶対零度(0.0075K=-273.1425℃)から150℃の条件下でも生き続けることがわかりました。生物最強ともいわれるのも納得ですよね。

全ての物質は絶対零度によって熱運動を停止する

全ての物質は原子や分子といった粒子の集まりからなっていますよね。生き物だとかそうでないとか、有機物・無機物、固体・液体・気体といった状態に関わらずです。これらは目で見えないほど小さな物質であるのはみなさんもご存知のとおりですが、これらは常に振動し、揺れ動いています。この揺れを熱振動といい、この運動を熱運動というのです。

物質の三態は原子や分子の運動の激しさによっても見ることができ、この激しさをと言い表すことができます。これは熱運動のエネルギーを表したものでもありますが、通常熱と聞くと熱いとか寒いとか、温度として捉えてしまう人が多いでしょう。しかし実際に熱という実態があるのではなく、あくまでも運動の激しさであり、物質そのものがもつエネルギーでしかないのです。

また、どんな物質も少なからず熱運動をしています。しかしどんな物質も運動を止めてしまう温度、それが絶対零度(0K)であり、−273.15 ℃です。それにもかかわらず、クマムシという生物はほぼ絶対零度となる0.0075Kの条件でも死なないという調査結果が出ているのは驚きですよね。

" /> 「熱運動」と温度の関係を元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学

「熱運動」と温度の関係を元塾講師がわかりやすく解説

今回は「熱運動」と温度について詳しく勉強していこう。

どんな物質であっても、どんな状態にあっても、存在する全ての物質には必ず熱の存在がある。そして何かしらの運動をしていて、エネルギーを持っているんです。

今回はそんな「熱運動」について、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.物質における運動

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人は走ったり自転車に乗ってみたり、泳いだりスポーツをすることを運動といいますよね。ただ起きて椅子に座っているだけで運動しているという人はいないでしょう。しかし、物質においては、存在しているだけで必ず振動という運動を伴います。

全ての物質のもとは原子という小さな粒子です。これらが集まって単体や化合物、混合物として様々な物質を形作っていますね。原子というのは常に乱雑に揺れ動いています。見かけ上は固体でも、原子レベルで見ると振動しているのです。物質における運動の始まりは、この振動運動といえるでしょう。

1-1.熱運動と熱エネルギー

1-1.熱運動と熱エネルギー

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これまで反応熱、熱エネルギー、熱量だとか、化学においては「熱」というものが非常に深く関わっているのがわかるでしょう。物質における振動運動熱振動であり、熱運動とよばれます。

固体では原子や分子が結晶のようなきれいな配列で固まっているように見えますね。しかし実際は熱運動を繰り返しています。液体や気体になればさらにその運動は激しくなり、空気中を自由に飛び回ったり、ときには原子や分子同士の衝突も起こっているのです。このときの熱運動の激しさが熱であり、熱運動における運動エネルギーと覚えましょう。

2.運動エネルギーの種類とその意味

ところで、エネルギーには様々な種類がありましたね。全ての物質は熱運動をし、運動エネルギーを持っています。しかし、実際の物体の動きやはたらきとして見ると、運動エネルギーの「運動」の意味合いが異なる場合があるのです。

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