
気体の溶ける量と圧力の関係「ヘンリーの法則」を元研究員がわかりやすく解説
2.ヘンリーの法則
気体が溶媒に溶けるという現象が大体わかったところで、今回のテーマであるヘンリーの法則についてお話しましょう。
ヘンリーの法則とは気体の溶解に関する法則であり、水に溶けにくい気体について成り立つ法則です。つまり、アンモニアや塩化水素などの水に簡単にたくさん溶けてしまう気体には成り立たないので、注意しましょう。
2-1.ヘンリーの法則(質量またはモル数について)

image by Study-Z編集部
まずヘンリーの法則の1番目である、溶ける気体の質量(またはモル数)と圧力の関係について解説しましょう。
「一定温度の下で一定量の溶媒に溶ける気体の質量(または物質量=モル数)は、その気体の圧力に比例する。」
これは具体的にはどういったことでしょうか?
例えば水の入った容器の上の空間に、水に溶けにくい気体がある状態を想像してください。この状態で、上から圧力を1かけると、水に溶けにくい気体が1個溶けたとします。次に上から圧力を2かけると、圧力を1かけたときより2倍多くの気体、つまり2個溶けるという事です。そして、3倍の圧力がをかけると、水に溶けにくい気体が3個溶けます。
なんとなくイメージができたでしょうか?
2-2.ヘンリーの法則(体積について)

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次にヘンリーの法則の2番目である、溶ける気体の体積と圧力の関係について解説しましょう。
「一定温度の下で一定量の溶媒に溶ける気体の体積は、その圧力で一定となる。」
圧力に比例するのか一定なのか、先ほど学んだことと矛盾するような文言で混乱してしまいますよね。しかし、この2つの文章は同じことを言っているのです。
では体積と圧力の関係を考えてみましょう。気体の体積は圧力を加えると、押し固められて小さくなります。2倍の圧力が加われば体積は1/2になるのです。
先ほどの例でいうと、気体に2倍の圧力が加わっているということは、水に溶けた気体そのものは押し固められて体積が半分になっています。繰り返しになりますが、圧力を2倍にすると気体の体積は1/2になるのです。
体積が半分になった気体が2倍の量溶けているので、溶けた気体の体積は一定という事になります。
2-3.気体の状態方程式について
なんとなく分かったような分からないような、変な感じがする方もいらっしゃるかもしれません。では、ヘンリーの法則を気体の状態方程式を使って解説していきましょう。
気体の状態方程式とは、高校の化学で学習する、理想気体の圧力と体積とモル数と温度の関係を方程式で表したものになります。
一定量の気体について温度が一定なら、圧力と体積は反比例するというボイルの法則と、一定量の気体について圧力が一定なら、絶対温度と体積は比例するというシャルルの法則を基に組み立てた方程式です。
P V = n R T
P は圧力(atm)、V は体積(L)、n はモル数(mol)、R は気体定数(0.082)、T は絶対温度(K)を表しています。
気体の状態方程式が苦手な方でも、理想気体(分子自身の体積と分子間力を無視した仮想の気体)において、この法則が成り立つのだと思っていただければ、この後の説明も理解できるはずです。
2-4.気体の状態方程式とヘンリーの法則
では、ヘンリーの法則(体積について)「一定温度の下で一定量の溶媒に溶ける気体の体積はその圧力で一定となる。」について、気体の状態方程式を使って考えてみましょう。
PV = nRT を変形すると V = nRT / Pとなります。ここで圧力を 2 倍にしてみると体積 V の所に 2 n(mol)の気体が集まってくるのです。V = 2n RT / 2P = nRT / P ということですね。体積 V は圧力によらないことがお分かりいただけたでしょうか?
溶媒に溶ける気体の体積は一定でも、質量(または物質量)は圧力に比例するということです。
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