「有機化合物」と「無機化合物」の違いって何かわかるか?

有機化合物は炭素を含む!といっても、なぜたくさんある元素の中で炭素が主役に選ばれたんだ?

今回は「有機化合物」の歴史と「無機化合物」との違いについて、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.有機化合物と無機化合物

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有機化合物と無機化合物の違いとは何でしょう?有機化合物炭素(C)を骨格として結合している化合物のことをいいます。炭素を含む化合物の大部分が、この有機化合物だということです。

世の中に知られている物質のうち、9割以上が有機化合物と、無機化合物に比べて圧倒的に種類が多いことが知られています。わたしたちの身体を作っているたんぱく質・脂質・糖質も有機化合物です。そして、有機化合物以外の化合物はすべて無機化合物となります。

1-1.有機化合物の歴史

古代から生物の体を構成する物質は「有機物」と呼ばれ、特別な力を持っていると信じられてきました。なので、物質は生物から得られる「有機物」鉱物から得られる「無機物」に分けられていたのです。

ところが、1828年ドイツの化学者ヴェーラーが、無機物から有機物を合成することに成功しました。人間が有機物を合成できるようになったことで、有機物は生物から得られる特別な物質という意味を失いました。しかし、有機物・無機物という便利な分け方は現在も用いられています。

古来より有機物とされてきた多くの物質は、炭素原子を骨格として様々な原子を結合して形成していることが分かり、現在は炭素を骨格とした化合物のことを有機化合物と呼んでいるのです。

そして、それ以外の化合物を無機化合物と呼んでいます。

1-2.化合物とは何か

ここで、化合物とは何かをおさらいしておきましょう。化合物とは、2種類以上の物質が化学反応を起こして別の物質に変化したものです。身近にある、水(H2O)・二酸化炭素(CO2)・酢酸(CH3COOH )など、多くの物質は化合物となります。化学式を書いてみて2種類以上の元素からなるものは化合物です。

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1-3.なぜ炭素が主役なのか

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有機化合物は「炭素を骨格とした化合物」だということはわかりました。

では、なぜ炭素なのでしょうか?他の元素ではなく、炭素が有機化合物の骨格をつくっているのには、きちんとした理由があるのです。

炭素には元素の中で最大の4個の価電子があるという特徴があります。炭素は4本の手(価電子)を出し、他の元素と結びつきやすい特性を活かして、多様な物質を構成するのです。

さらに炭素同士も単結合・二重結合・三重結合と色々な種類の結合ができ、たくさんの炭素同士が結びついた分子もできます。同じ元素同士で、切れにくい二重結合が作れるのは炭素しかありません。

1-4.炭素が入っているけれど無機化合物

炭素を含むけれど、有機化合物に分類されない物質も、いくつかあります。炭素単体一酸化炭素・二酸化炭素炭酸塩・炭酸水素塩シアノ化合物が、無機化合物に分類されるのです。これらは昔から無機化合物に分類すると決まっているので、覚えておきましょう。

2.有機化合物と無機化合物の違い

2.有機化合物と無機化合物の違い

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どのような分子が有機化合物と呼ばれるかは分かりました。次は有機化合物と無機化合物の化学的な違いについて、紐解いていきましょう。

2-1.結合の違い

有機化合物は炭素が4本の手(4つの価電子)をのばして、様々な原子あるいは炭素同士と結びついて、分子を形成しているということをお話しました。ということは、有機化合物は価電子を共有して結びつく、共有結合だということがわかります。

対して無機化合物は陽イオンと陰イオンの結合です。

例として塩化ナトリウムの結合を見てみましょう。ナトリウムイオン(+)と塩化物イオン(-)が引き合うことで結びついています。このように陽性のイオンと陰性のイオンが静電気的な力で結びつく結合を、イオン結合というのです。

有機化合物は共有結合無機化合物はイオン結合と結合の種類が違うことが分かりました。

2-2.融点の違い

無機化合物はイオン結合をしていて、さらにイオン結合している分子同士も静電気的な力引き合い、結びつきが強いイオン結晶を形成しています。イオン結晶は強い力で結びついた結合で、融点が高いという特徴があるのです。

対して有機化合物は、分子内は共有結合で強く結びついているのですが、分子同士は弱い分子同士の間に働く引力(分子間力)で結びついています。分子間力で結びついた分子結晶は、引き合う力が弱いため融点が低いという特徴があるのです。

有機化合物は融点が低く無機化合物は融点が高いという違いがあることが分かりました。

2-3.溶けやすさと電気伝導性の違い

無機化合物はイオン結晶なので、水に溶けて容易に陽イオンと陰イオンに分かれる(電離する)性質を持っています。

対して、有機化合物は分子間に極性(電子の偏り)がほとんどなく、水に溶けにくいという性質があるのです。水に溶けても分子のまま溶けていてイオンに分かれているわけではないため、電気を通しません

ということは有機化合物は非電解質無機化合物は電解質ということになります。

溶媒をエーテルなどの有機溶媒にしたらどうなるかというと、水溶性の場合と逆になり、無機化合物は溶けにくく、有機化合物は溶けやすいです。

それぞれの溶けやすさをまとめると、有機化合物は水に溶けにくく有機溶媒に溶けやすい無機化合物は水に溶けやすく有機溶媒に溶けにくいという違いがあることが分かりました。

2-4.燃焼性の違い

身近な燃料である灯油・ガソリン・天然ガスはすべて有機化合物です。有機化合物には燃焼するものが多く、生じる熱も大きいので、使われている燃料の多くが有機化合物になります。燃焼すると二酸化炭素と水が生じるというのも、有機化合物の特徴のひとつです。

対して鉱物などをイメージしていただけばわかる通り、無機化合物は燃えにくいものが多くなっています。有機化合物は可燃性のものが多く無機化合物は不燃性のものが多いという事が分かりました。

2-5.反応速度の違い

燃焼という高温での反応性は、有機化合物の方が早いことが分かりました。しかし、常温では無機化合物の方が反応が早いです。

有機化合物は常温ではあまり反応しません。これは有機化合物の結合が共有結合であるため、共有結合を切るためには大きなエネルギーを必要とするためです。有機化合物は常温で反応性が遅く無機化合物の反応性は比較的早いことが分かりました。

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「有機化合物」とは炭素を骨格とした化合物で「無機化合物」とはそれ以外の化合物

有機化合物は炭素を骨格とした化合物で、それ以外の化合物を無機化合物といいます。

有機化合物は古来から生物を構成する特別な物質とされてきましたが、研究が進むにつれて炭素を骨格とする化合物という意味に変化しました。

炭素が骨格となっているのには、炭素が4つの価電子を持っていて様々な元素と反応しやすく炭素同士でも長く結合できるという理由があります。

有機化合物と無機化合物には化学的な性質の違いもあるのです。有機化合物は共有結合で、融点が低く水に溶けにくく非電解質で、有機溶媒には溶けやすく燃えやすいが常温での反応性は遅いという特徴があります。

対して無機化合物はイオン結合で、融点が高く水に溶けやすく電解質で、有機溶媒には溶けにくく燃えにくいが常温での反応性は比較的早いという特徴があるのです。

" /> 簡単でわかりやすい!有機化合物と無機化合物の違いとは?炭素がポイント?元研究員が詳しく解説 – Study-Z
化学有機化合物理科

簡単でわかりやすい!有機化合物と無機化合物の違いとは?炭素がポイント?元研究員が詳しく解説

「有機化合物」と「無機化合物」の違いって何かわかるか?

有機化合物は炭素を含む!といっても、なぜたくさんある元素の中で炭素が主役に選ばれたんだ?

今回は「有機化合物」の歴史と「無機化合物」との違いについて、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していきます。

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.有機化合物と無機化合物

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有機化合物と無機化合物の違いとは何でしょう?有機化合物炭素(C)を骨格として結合している化合物のことをいいます。炭素を含む化合物の大部分が、この有機化合物だということです。

世の中に知られている物質のうち、9割以上が有機化合物と、無機化合物に比べて圧倒的に種類が多いことが知られています。わたしたちの身体を作っているたんぱく質・脂質・糖質も有機化合物です。そして、有機化合物以外の化合物はすべて無機化合物となります。

1-1.有機化合物の歴史

古代から生物の体を構成する物質は「有機物」と呼ばれ、特別な力を持っていると信じられてきました。なので、物質は生物から得られる「有機物」鉱物から得られる「無機物」に分けられていたのです。

ところが、1828年ドイツの化学者ヴェーラーが、無機物から有機物を合成することに成功しました。人間が有機物を合成できるようになったことで、有機物は生物から得られる特別な物質という意味を失いました。しかし、有機物・無機物という便利な分け方は現在も用いられています。

古来より有機物とされてきた多くの物質は、炭素原子を骨格として様々な原子を結合して形成していることが分かり、現在は炭素を骨格とした化合物のことを有機化合物と呼んでいるのです。

そして、それ以外の化合物を無機化合物と呼んでいます。

1-2.化合物とは何か

ここで、化合物とは何かをおさらいしておきましょう。化合物とは、2種類以上の物質が化学反応を起こして別の物質に変化したものです。身近にある、水(H2O)・二酸化炭素(CO2)・酢酸(CH3COOH )など、多くの物質は化合物となります。化学式を書いてみて2種類以上の元素からなるものは化合物です。

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