前回に続き状態変化と反応熱について、今回は「蒸発熱・凝縮熱」を勉強していこう。

基本的な考え方は「融解熱・凝固熱」と変わらない。具体例を考えながら進めていこう!

新しいことを覚えるときは必ず復習とセットにしてインプットすることが大切です。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.液体・気体間の状態変化

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それでは、液体と気体における状態変化について復習しておきましょう。

液体から気体への変化を蒸発、気体から液体への変化を凝縮といいましたね。蒸発を気化をいう場合もあるので覚えておきましょう。

1-1.沸点

1-1.沸点

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水を例にして考えたとき、100℃で沸騰を始めます。このように液体が気体になる温度が沸点です。また、気体が液体になる温度を凝縮点といいますが、これは沸点と同じ温度をとるためにただ「沸点」と表記される場合が多いでしょう。

液体をある一定の条件で加熱を続けた場合、時間に伴う温度変化は上グラフのようになります。固体・液体間での状態変化に比べ、液体・個体間では相転移に時間がかかっているのがわかりますね。これは固体が液体になるときよりも液体が気体になるときの方がより多くのエネルギーを必要とすることから、加熱時間もそれに伴って長くなることを表しています。

1-2.液体と気体のもつエネルギー

「固体が液体になるときよりも液体が気体になるときの方がより多くのエネルギーを必要とする」というのは、それぞれの状態の物質がもつエネルギーに由来しています。

通常物質の体積は 固体<液体<<<気体 となるのを覚えているでしょうか。ただし、水は特別な分子構造をもつために固体と液体の順番が入れ替わっていると説明しましたね。また、物質は固体の状態で分子が規則正しく並び、液体で自由に運動をし、気体になると空間を自由に飛び回っている状態だと解説しました。

このことからも気体がもつエネルギーが大きいかことが理解できるでしょう。実際に氷を加熱して溶かし、沸騰して蒸発するまでを測ってみてもいいですね。状態変化の様子が身をもって理解できるはずですよ。

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2.液体・気体間の反応熱

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それでは反応熱について考えてみましょう。

蒸発に伴う反応熱を蒸発熱、凝縮に伴う反応熱を凝縮熱といいます。状態変化名+熱なので覚えるのは簡単ですね。この2つの反応熱は、融解熱・凝固熱同様に同じ値をとります。

2-1.蒸発熱・凝縮熱

水にある一定の熱を与えることで水蒸気となります。このときの熱量が蒸発熱ということですね。また、このときに与えた分の熱を奪うことができれば、水蒸気は水に戻ることができます。このときに奪う熱が凝縮熱です。

勘のいい人は既にお分かりのように、蒸発熱は吸熱反応、凝縮熱は発熱反応に分類されます。そのために、熱量の大きさ自体は同じでも、熱化学方程式で表記する場合は+-の違いが出てくるというわけですね。

このような考え方も融解熱・凝固熱と全く同じですから、整理しながら覚えましょう。

3.エアコンで学ぶ蒸発熱・凝縮熱

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蒸発熱には汗をかいた後のひんやり感、夏の打ち水といった例が挙げられます。熱を奪うことによって温度が下がったのが感じられますよね。凝縮の例として結露が挙げられますが、凝縮熱としてはイメージが湧きにくいでしょう。そこで、蒸発熱・凝縮熱を同時に理解できるエアコンを使って解説をしてみます。

\次のページで「3-1.冷房の仕組み」を解説!/

3-1.冷房の仕組み

3-1.冷房の仕組み

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普段何気なく使用しているエアコンですが、効率良く部屋の温度調整を行うための仕組みが隠されています。まずは大まかな空気の流れを表したものが上の図です。

クーラーとして使用する場合、温かい空気がエアコン内部に入ることで循環が始まります。このときに凝縮と蒸発を繰り返すことで熱の移動を行い、周囲の熱い空気を外部に放出し、冷たい空気を室内に入れることができるのです。

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さらに室内機と室外機で起こっていることをまとめたのがこちらの図です。

室内の空気ごと熱を取り込み、冷媒とよばれるものによって熱が運ばれます。その後、空気が圧縮されることで高温になるのですが、この仕組みは後ほど解説しますね。この高温の空気は室外機のファン部分で外に放出され、それによって熱を奪われた気体は液体に変わります。これが凝縮であり、出ていった熱が凝縮熱です。

凝縮によって温度が下がった液体は、さらにある装置によって膨張させられることでさらに温度を下げます。(これについても後ほど解説しますね。)そしてこの冷えた液体が室内の熱を奪うことで気体に変わります。これが蒸発であり、奪った熱が蒸発熱です。あとは部屋の熱を蒸発熱として取り込みつつ、冷たい空気を放出し…という繰り返しになります。それによって室内の温度はどんどん下がっていくというわけですね。

さて、なぜ圧力をかけると温度が上がり、膨張させる(圧力を下げる)と温度が下がるのでしょうか。実はこれにはボイル=シャルルの法則が関係しています。簡単に説明すると、圧力と温度は比例するという法則があるのです。エアコンはこの法則を上手く利用しているといえるでしょう。詳しくはこちらの記事を参考にしてみてくださいね。

3-2.暖房の仕組み

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暖房の場合、冷房の反対と考えてみましょう。

外部の熱を取り込み圧縮させることで温かくなった空気を室内へ送ります。このときに熱を放出したことで空気は液体になって凝縮が起こりますね。その後液体としてエアコン内を循環、膨張という過程をたどります。そしてまた室外機に戻ってきて外部の熱を取り込むことで蒸発が起こり、再びエアコン内には気体が循環するという流れになるのです。

上の図を左右反転させ、室内機と室外機を入れ替えて考えてみましょう。

3-3.除湿の仕組み

除湿というのは、室内の湿気を取り除くことに特化した機能です。冷房は温度を下げるため、除湿は湿度を下げるための機能なので、そもそもの目的が違うということをまず理解したいですね。

除湿の場合、空気中の水蒸気を室内機の中の熱交換機によって水滴に変え、乾いた空気のみを部屋に戻すという方法を用いています。ここでも凝縮の原理が用いられているのがわかりますね。

蒸発熱・凝縮熱はエアコンで学べ!

物質の状態変化では、液体から気体への変化を蒸発気体から液体への変化を凝縮といいます。このときに必要なエネルギーが蒸発熱・凝縮熱です。また蒸発と気化が同義であることから、蒸発熱は気化熱と呼ばれる場合もありますよ。

融解熱・凝固熱の関係同様、理論上蒸発熱・凝縮熱も同じ値を示します。しかし蒸発は吸熱反応、凝縮は発熱反応であることから、熱化学方程式における符号は逆になることを覚えておきたいですね。

これらを学ぶのに最適なのがエアコンです。暖気を冷気に変えて室内に戻し、奪った熱は外へ排出するという仕組みが用いられています。身近なもので原理を学ぶことで、楽しく覚えることができそうですね。身のまわりにある「なぜ?」をたくさん解いていくことが、科学の知識を増やすコツですよ。

" /> 状態変化と反応熱「蒸発熱・凝縮熱」について元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学物質の状態・構成・変化理科

状態変化と反応熱「蒸発熱・凝縮熱」について元塾講師がわかりやすく解説

前回に続き状態変化と反応熱について、今回は「蒸発熱・凝縮熱」を勉強していこう。

基本的な考え方は「融解熱・凝固熱」と変わらない。具体例を考えながら進めていこう!

新しいことを覚えるときは必ず復習とセットにしてインプットすることが大切です。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.液体・気体間の状態変化

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それでは、液体と気体における状態変化について復習しておきましょう。

液体から気体への変化を蒸発、気体から液体への変化を凝縮といいましたね。蒸発を気化をいう場合もあるので覚えておきましょう。

1-1.沸点

1-1.沸点

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水を例にして考えたとき、100℃で沸騰を始めます。このように液体が気体になる温度が沸点です。また、気体が液体になる温度を凝縮点といいますが、これは沸点と同じ温度をとるためにただ「沸点」と表記される場合が多いでしょう。

液体をある一定の条件で加熱を続けた場合、時間に伴う温度変化は上グラフのようになります。固体・液体間での状態変化に比べ、液体・個体間では相転移に時間がかかっているのがわかりますね。これは固体が液体になるときよりも液体が気体になるときの方がより多くのエネルギーを必要とすることから、加熱時間もそれに伴って長くなることを表しています。

1-2.液体と気体のもつエネルギー

「固体が液体になるときよりも液体が気体になるときの方がより多くのエネルギーを必要とする」というのは、それぞれの状態の物質がもつエネルギーに由来しています。

通常物質の体積は 固体<液体<<<気体 となるのを覚えているでしょうか。ただし、水は特別な分子構造をもつために固体と液体の順番が入れ替わっていると説明しましたね。また、物質は固体の状態で分子が規則正しく並び、液体で自由に運動をし、気体になると空間を自由に飛び回っている状態だと解説しました。

このことからも気体がもつエネルギーが大きいかことが理解できるでしょう。実際に氷を加熱して溶かし、沸騰して蒸発するまでを測ってみてもいいですね。状態変化の様子が身をもって理解できるはずですよ。

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