今回は状態変化の1つである「融解・凝固」と反応熱の関係について詳しく勉強していこう。

融解点・凝固点といったワードも今までに何度か出てきていますね。覚えているか?

今回は反応熱との関係を見ていこう。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.固体・液体間の状態変化

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物質の状態変化について簡単に復習しておきましょう。状態変化は組成(化学式)が変わらない変化です。見た目や形状が変わっても物質そのものが変わらない変化を物理変化といいます。一方で物質そのものが化合したり分解したりする変化を化学変化といいましたね。

物質は固体・液体・気体の三態によって成り、それぞれ固相・液相・気相とよばれることもあります。そのため、物質の状態(相)が変わることを相転移という言い方をする場合があるので覚えておくといいでしょう。

さて、今回は固体と液体における変化に注目します。固体から液体になるのが融解液体から固体になるのが凝固です。このように状態が何から何になるのかによって名称が異なりましたね。では、これらの変化について詳しく見ていきましょう。

1-1.融点・凝固点

1-1.融点・凝固点

image by Study-Z編集部

融点(融解点)・凝固点のように、○○点というのは化学においてある一定の温度を示す場合が多いでしょう。これらも例外ではありません。

融点・凝固点は、物質が融解する温度、凝固する温度を示しています。わかりやすく言えば、物質が溶ける温度を融点、物質が凍ったり固まったりする温度を凝固点というわけです。これらの温度は物質によって異なるため、純物質においては物質を特定する手がかりにもなるでしょう。

水で考えてみると、氷は0℃で溶けはじめ、水は0℃になると凍りはじめます。グラフからも、ある物質を加熱し続けた場合、ある一定の温度では固体と液体が混在する状態があるのがわかりますね。このときの温度が融点であり、凝固点です。融点と凝固点は厳密な意味は異なるものの同じ温度を指しています。

1-2.固体と液体のもつエネルギー

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それでは固体と液体のもつエネルギーについて考えてみましょう。

水を例にしてみると、氷(固体)は分子同士の運動が活発でなく、静かに整列している状態でしたね。一方で水(液体)はエネルギーをもった分子たちが活発に動き回っている状態です。さらに水蒸気(気体)になると吸気中を飛び回るほどのエネルギーをもっている状態になります。

ここからわかるのは、同じ組成の物質でも状態が変わればもっているエネルギー(熱量)も変わるということです。気体>液体>固体という順番ですね。ではそもそも物質の状態は何によって変わるのでしょうか。

\次のページで「2.固体・液体間の反応熱」を解説!/

そうですね。氷に温度を加えることで固体が液体に変わり、水はエネルギーをもって運動をはじめます。反対に水を冷やしていくことで少しずつ分子の運動量が減っていき、最後は氷の結晶になるでしょう。このように、エネルギーと熱の存在は切っても切れない関係にあります。

では、氷が水になるときに必要なエネルギー、水が氷になるときに必要なエネルギーについて詳しく見ていきましょう。

2.固体・液体間の反応熱

それでは反応熱に考えを広げてみましょう。

固体から液体になることを融解、そのときの温度を融点(融解点)といい、この変化に必要なエネルギーを融解熱といいます。また、液体から固体になることを凝固、そのときの温度を凝固点といい、この変化に必要なエネルギーが凝固熱です。覚えやすいですよね。さらに、融点・凝固点が実質同じ値であったように、融解熱・凝固熱も同じ熱量であることを知っておきましょう。

2-1.融解熱・凝固熱

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氷が水になる融解では、氷に熱を加えることで変化が進みますね。つまりこれは 氷+エネルギー=水 という反応であり、書きかえれば 氷=水ーエネルギー という吸熱反応を意味します。分子の運動の様子からエネルギーは水>氷であることがわかっているので、エネルギーの少ない氷に足すまたは水から引くことでイコールが成り立つのです。

反対に水が氷になる凝固では、温度を下げることで変化が起こります。水ーエネルギー=氷 ということです。水のもっているエネルギーを奪うことで氷ができあがると考えましょう。これを書きかえると 水=氷+エネルギー ですから、発熱反応であることがわかりますね。

このときのエネルギーをそれぞれ融解熱・凝固熱といい、どちらも同じ値をとります。しかし融解熱は吸熱反応、凝固熱は発熱反応であるため、熱化学方程式や計算問題では+-の表記に違いがあるという点に注意したいですね。

ところで、冷蔵庫もある意味発熱反応といえるかもしれません。冷蔵庫は熱を放出することを目的に作られたものですからね。冷蔵庫はまだ温かいものや常温の食品から熱を奪うことによって冷蔵庫内の温度を下げ、品質を保っています。ではそれらの熱がどこに行くかというと、冷蔵庫の周りを触ってみると熱くなっている部分があるでしょう。そこから熱を外に捨てているのです。また冷蔵庫内の温度を下げるための仕組みに電気を利用しているので、電球が熱をもつことで説明したように、発生した熱というのもここで放出されているのですよ。

\次のページで「3.融解熱と融点の関係」を解説!/

3.融解熱と融点の関係

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具体的な数字で融解熱と融点の関係を見てみましょう。

融解熱は大きいほど液体にするためにたくさんのエネルギーが必要になることを意味します。わかりやすいよう物質1kgあたりの融解熱で比較したとき、鉄は271kJ、氷は334kJです。これだけを見ると、あたかも鉄の方が溶けやすいように見えますよね。

しかしここで考えなければならないのが融点です。融点は小さいほど融解しやすいことを示します。鉄の融点は1535℃であるのに対し、氷は0℃ですから、全く逆の見え方になるわけです。

氷は常温では水として存在し、鉄は固形の鉄として存在していることを考えれば、氷の方が溶けやすいと見るのが普通でしょう。融解熱と融点の大小はそれぞれ融解のしやすさを見る1つの基準とは成りますが、数字がこうだからこう!と一概には言えないことを知っておきましょう。

固体と液体の相転移に関わる反応熱!融解熱イコール凝固熱

物質の状態変化(相転移)において、固体から液体への変化を融解、液体から固体への変化を凝固といいます。また、このときの温度をそれぞれ融解点、凝固点といいましたね。この2つは名称こそ書き分けていますが、それぞれが差す温度は同じです。例えば水の場合、0℃で水は凍り、0℃で氷は溶け始めるという言い方をしますよね。0℃は水と氷が入り混じった状態です。このことからも、融解点、凝固点が同じ値を指すのも納得できるでしょう。

反応熱においても、融解熱と凝固熱は同じ値を指します。ある量の熱を吸収して溶解したのであれば、それと同量の熱を放出することで凝縮するというわけです。つまり、溶解熱は吸熱反応、凝固熱は発熱反応であることを覚えておきましょう。

さて、この調子で残りの状態変化と反応熱の関係についても解説していきますよ!

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化学物質の状態・構成・変化理科

物質の状態変化「融解・凝固」と反応熱の関係を元塾講師がわかりやすく解説

今回は状態変化の1つである「融解・凝固」と反応熱の関係について詳しく勉強していこう。

融解点・凝固点といったワードも今までに何度か出てきていますね。覚えているか?

今回は反応熱との関係を見ていこう。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.固体・液体間の状態変化

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物質の状態変化について簡単に復習しておきましょう。状態変化は組成(化学式)が変わらない変化です。見た目や形状が変わっても物質そのものが変わらない変化を物理変化といいます。一方で物質そのものが化合したり分解したりする変化を化学変化といいましたね。

物質は固体・液体・気体の三態によって成り、それぞれ固相・液相・気相とよばれることもあります。そのため、物質の状態(相)が変わることを相転移という言い方をする場合があるので覚えておくといいでしょう。

さて、今回は固体と液体における変化に注目します。固体から液体になるのが融解液体から固体になるのが凝固です。このように状態が何から何になるのかによって名称が異なりましたね。では、これらの変化について詳しく見ていきましょう。

1-1.融点・凝固点

1-1.融点・凝固点

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融点(融解点)・凝固点のように、○○点というのは化学においてある一定の温度を示す場合が多いでしょう。これらも例外ではありません。

融点・凝固点は、物質が融解する温度、凝固する温度を示しています。わかりやすく言えば、物質が溶ける温度を融点、物質が凍ったり固まったりする温度を凝固点というわけです。これらの温度は物質によって異なるため、純物質においては物質を特定する手がかりにもなるでしょう。

水で考えてみると、氷は0℃で溶けはじめ、水は0℃になると凍りはじめます。グラフからも、ある物質を加熱し続けた場合、ある一定の温度では固体と液体が混在する状態があるのがわかりますね。このときの温度が融点であり、凝固点です。融点と凝固点は厳密な意味は異なるものの同じ温度を指しています。

1-2.固体と液体のもつエネルギー

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それでは固体と液体のもつエネルギーについて考えてみましょう。

水を例にしてみると、氷(固体)は分子同士の運動が活発でなく、静かに整列している状態でしたね。一方で水(液体)はエネルギーをもった分子たちが活発に動き回っている状態です。さらに水蒸気(気体)になると吸気中を飛び回るほどのエネルギーをもっている状態になります。

ここからわかるのは、同じ組成の物質でも状態が変わればもっているエネルギー(熱量)も変わるということです。気体>液体>固体という順番ですね。ではそもそも物質の状態は何によって変わるのでしょうか。

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