今回は発熱吸熱反応を理解するうえで欠かせない「ヘスの法則」について詳しく勉強していこう。

これは化学反応式と反応熱の基礎知識、両方があって初めて理解できるものです。高校で習う分野ですが、まずは簡単な例から見ていこう。

法則と聞いただけで難しく考えてしまうやつもいるが、言っている内容自体は難しくない。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.一酸化炭素と二酸化炭素

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考えてみてください。家庭でガスコンロや石油ヒーター、給湯器などを使うときには換気をするようによく言われますよね。それはなぜでしょう。

一番に思いつくのは酸欠や臭いのことかもしれませんね。煙の臭いやいわゆるガスの臭いを取り除くために換気をするのが大切だと思う人も多いでしょう。しかし換気をしないことで起こる最悪のケースは一酸化炭素中毒です。

食品や燃料等は有機物に分類され、有機物は炭素を含んでいます。そのために有機物は燃えると黒い炭になるというわけですね。さらに反応を進めることで炭素は二酸化炭素として空気中に放出され、最後には燃えカスである灰が残ります。しかしこのとき、燃えるのに十分な酸素がなかったらどうなるでしょうか。炭素は二酸化炭素ではなく、一酸化炭素として空気中に放出されます。一酸化炭素は吸い込むことで、酸素を運ぶ血液中のヘモグロビンと結合してしまい、身体への酸素運搬機能が低下するために様々な問題を引き起こすことを知っておきましょう。

換気をしないことによる単なる酸欠よりももっと危険な状況につながる危険があるということです。では、この話が今回の法則にどんな関係があるのか見ていきましょう。

2.ヘスの法則

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炭素が酸化されて二酸化炭素になる過程を式にしてみましょう。

C + O2 → CO2

これは基本中の基本でしたね。では、空気中の酸素が不足しているなどして、酸化が十分に行われなかった場合を見てみましょう。

2C + O22CO

炭素と酸素は1対1で反応するはずですが、酸素が不足していることで一酸化炭素が生じます。ここに酸素を追加してみましょう。

2CO + O2 → 2CO2

ここでようやく二酸化炭素となりました。これらの反応において、一酸化炭素は中間生成物(反応過程)であることがいえますね。つまり、反応前は炭素と酸素、中間生成物(反応過程)である一酸化炭素を経て、反応後が二酸化炭素というわけです。今回考えるヘスの法則は、反応前後と中間生成物(反応過程)の存在が非常に重要になります。

\次のページで「3.ヘスの法則による応用」を解説!/

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まず反応前をA、中間生成物をB、反応後をCとします。このとき、Aでは 炭素と酸素がそれぞれ存在している状態です。Bでは酸素が十分に反応せず、一酸化炭素と酸素が混在しています。Cでは酸化が進み、二酸化炭素のみ存在している様子です。

また、これらの酸化反応(燃焼)は発熱反応でした。そこで、それぞれの過程と燃焼熱を熱化学方程式で表したものが図の式です。熱化学方程式を書くときのルールとして、式は矢印ではなくイコールで結び、物質の状態を明記すること。物質1molが完全燃焼するときに発生する熱量を記載するために、通常 2C + O2 → 2CO となるところを (1)C(黒鉛) + 1/2O2(気) のようにしています。このときに必要なエネルギー量については必要に応じて覚えましょう。

A→Bにおける熱量(1)とB→Cにおける熱量(2)の合計が、反応が一度にA→Cのように進んだ場合の熱量(3)と等しいのがわかるでしょうか。化学変化に伴う反応熱は反応前後の物質の状態によって決まり、反応経路によって変化しない。これがヘスの法則です。

反応過程がどうであれ、最初の反応物と最終的な生成物が決まっていれば、反応に必要な熱量も決められた値が存在しています。そのために、複数の段階を経て反応させた場合にはそれぞれの段階の熱量の和が一段階で反応させた場合の熱量に等しくなるというわけです。このような図の書き方を覚えておくといいですね。

3.ヘスの法則による応用

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ヘスの法則が実際どんな問題に使われるかが気になりますね。では、こう考えてみましょう。

Aさんは学校が終わって家に帰っている途中です。文房具屋さんで100円のノートを3冊買い、郵便局で500円分の支払いをしました。家についたとき、財布の中には200円残っています。財布にはいくら入っていたといえるでしょうか。

とても簡単な問題ですよね。途中どこに寄り道をしたとしても、全ての過程を足せば合計がわかります。さらに、

Aさんは朝1000円を持って家を出て、学校が終わって家に帰っている途中です。文房具屋さんで100円のノートを3冊買い、郵便局で500円分の支払いをしました。家についたとき、財布の中にはいくら入っているでしょうか。

こう考えても答えは明らかでしょう。かなり簡単な例を出しましたが、ヘスの法則も考え方は全く同じです。反応熱の総和は反応の経路に関係なく、反応の最初と最後の状態だけで決まるということなのですね。

3-1.溶解熱・中和熱で解説

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最後に、水酸化ナトリウムの溶解熱水酸化ナトリウムと塩酸の中和熱について見ていきましょう。この場合、(1)固体の水酸化ナトリウムを水に溶解して水酸化ナトリウム水溶液をつくる、(2)水酸化ナトリウム水溶液と塩酸水溶液の中和、2つの反応過程があるのがわかりますか?

水酸化ナトリウム(固体)を溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を作る反応式から考えてみましょう。水酸化ナトリウムの溶解熱は44.5kJなので、

(1) NaOH(固)+ aq = NaOHaq + 44.5kJ

と表すことができます。水溶液、または溶媒を表すときによくaqという表現を使いますので覚えておきましょう。

続いて、水酸化ナトリウム水溶液と塩酸水溶液の中和についてです。この中和熱は56.5kJなので、

(2) NaOHaq + HClaq = NaClaq + H2O(液)  + 56.5kJ

このときの生成物は、中和による塩化ナトリウムと水 H2O、そしてもともと溶媒として存在していた水 aq(物質量は不問)と考えます。これは塩化ナトリウム水溶液ができたのと同じ状態ではありますが、中和によってできた水と区別するために NaClaq + H2O のように分けて書く必要がありますよ。

では水酸化ナトリウム水溶液を作るという工程を省き、固形の水酸化ナトリウムを直接塩酸に溶解したときの反応熱はどうなるでしょうか。

\次のページで「化学変化に伴う反応熱は反応前後の状態で決まる」を解説!/

この場合、反応前の物質は水酸化ナトリウム(固形)と塩酸水溶液です。そして最終的な生成物は塩化ナトリウム水溶液と中和によって出来た水ですね。つまりこれは上記の(1)(2)を合わせた反応ということがわかるでしょうか。

(3) NaOH(固) + HClaq = NaClaq + H2O  + 101kJ …(44.5+56.5)

このように、それぞれの段階の熱量の和を求めることで、一段階で反応させた場合の熱量を求めることができます。

中学生で学んだ化学方程式の知識+αの内容なので、苦手意識のある人はそこから見直ししてみましょう。

化学変化に伴う反応熱は反応前後の状態で決まる

ヘスの法則は「化学変化に伴う反応熱は反応前後の物質の状態によって決まり、反応経路によって変化しない」というものです。簡単に言い換えれば何が何になったかが大事ということですよね。

炭素が酸化されて一酸化炭素になり、さらに酸化が進んで二酸化炭素になったとき、これは2段階の反応過程を経ていることになります。しかし反応前後の物質だけを見るのであれば、こう言い換えることができるでしょう。炭素が酸化されて二酸化炭素になった、と。これを反応熱について説いたのがヘスの方式です。

それぞれの反応過程と熱量の関係は、図にしてみることで理解が明確になります。反応前と反応後、そして反応の中間物質の関係を図にいれて整理しながら考えていきましょう。

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化学

熱化学方程式を読み解く!「ヘスの法則」について元塾講師がわかりやすく解説

今回は発熱吸熱反応を理解するうえで欠かせない「ヘスの法則」について詳しく勉強していこう。

これは化学反応式と反応熱の基礎知識、両方があって初めて理解できるものです。高校で習う分野ですが、まずは簡単な例から見ていこう。

法則と聞いただけで難しく考えてしまうやつもいるが、言っている内容自体は難しくない。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.一酸化炭素と二酸化炭素

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考えてみてください。家庭でガスコンロや石油ヒーター、給湯器などを使うときには換気をするようによく言われますよね。それはなぜでしょう。

一番に思いつくのは酸欠や臭いのことかもしれませんね。煙の臭いやいわゆるガスの臭いを取り除くために換気をするのが大切だと思う人も多いでしょう。しかし換気をしないことで起こる最悪のケースは一酸化炭素中毒です。

食品や燃料等は有機物に分類され、有機物は炭素を含んでいます。そのために有機物は燃えると黒い炭になるというわけですね。さらに反応を進めることで炭素は二酸化炭素として空気中に放出され、最後には燃えカスである灰が残ります。しかしこのとき、燃えるのに十分な酸素がなかったらどうなるでしょうか。炭素は二酸化炭素ではなく、一酸化炭素として空気中に放出されます。一酸化炭素は吸い込むことで、酸素を運ぶ血液中のヘモグロビンと結合してしまい、身体への酸素運搬機能が低下するために様々な問題を引き起こすことを知っておきましょう。

換気をしないことによる単なる酸欠よりももっと危険な状況につながる危険があるということです。では、この話が今回の法則にどんな関係があるのか見ていきましょう。

2.ヘスの法則

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炭素が酸化されて二酸化炭素になる過程を式にしてみましょう。

C + O2 → CO2

これは基本中の基本でしたね。では、空気中の酸素が不足しているなどして、酸化が十分に行われなかった場合を見てみましょう。

2C + O22CO

炭素と酸素は1対1で反応するはずですが、酸素が不足していることで一酸化炭素が生じます。ここに酸素を追加してみましょう。

2CO + O2 → 2CO2

ここでようやく二酸化炭素となりました。これらの反応において、一酸化炭素は中間生成物(反応過程)であることがいえますね。つまり、反応前は炭素と酸素、中間生成物(反応過程)である一酸化炭素を経て、反応後が二酸化炭素というわけです。今回考えるヘスの法則は、反応前後と中間生成物(反応過程)の存在が非常に重要になります。

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