節足動物について考えてみたい。

自然界に存在する生物のうちの大部分を占めているのが、昆虫をはじめとする節足動物です。非常に種類が多く、類縁関係もつかみにくいところが多い生物群ですが、重要な特徴や大まかな分類を知っておくと普段よく見る生物が身近に思えてくるぞ。

今回も、大学で分類学を中心に勉強していた現役講師のオノヅカユウを招いた。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

節足動物とは?

節足動物とは、生物の大きな分類群のひとつである節足動物門に分類されている生き物のことを指すことばです。

昆虫などが含まれる節足動物は、すべての動物の中でも群を抜いて生物種が多いことが知られています。なんと、地球上の生物種の4分の3以上、文献によっては85%以上が節足動物だといわれるほど!未発見の種もたくさんいると考えられているので、この数字はまだ大きくなるかもしれません。

節足動物の特徴

節足動物には以下のような特徴があります。

外骨格でおおわれている

・関節のある脚(関節肢)をもつ

・頭部、胸部、腹部の3部、もしくは頭胸部、腹部の2部からなる体

・体節がはっきりしている

・神経系がはしご形神経系

節足動物の外骨格

私たち人間を含む哺乳類や鳥類、両生類などの脊椎動物は、体内にはっきりとしたがあり、その周りを筋肉が取り囲んでいます。骨は体を支え、筋肉が接続することで力強い運動を可能にする大切な存在です。

一方、無脊椎動物である節足動物には我々のような骨がありません。ではどうやって体を支えているのかというと、内臓や筋肉を覆う殻=外骨格によってその体を維持しています。節足動物の外骨格はクチクラという固い成分でできているので、体を支えたり、筋肉が付着するだけでなく、外敵から身を守るためにも有効です。

節足動物の関節肢

みなさんは虫の脚を観察してみたことがありますか?カクっと曲がる、はっきりとした関節を持っていますよね。このような脚が関節肢です。関節肢は基本的に各体節、一対ずつ左右対称についています。

さて、ここで少しイメージしていただきたいのですが…昆虫の触覚やカニ類のはさみなど、節足動物の体には、左右に対象についているパーツがよく見られますよね。肉眼では見えにくいことが多いですが、節足動物の顎も左右にわかれたパーツによって形成されています。

これらの触覚、はさみ、顎などは、いずれも関節肢の仲間とみなすことができ、元をたどれば同じものから変化してきたのではないかと考えられているのです。

\次のページで「六脚亜門」を解説!/

image by Study-Z編集部

六脚亜門

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節足動物といわれてまず思い浮かぶのは虫。カブトムシやチョウなどの身近な昆虫類がふくまれるのが、六脚亜門というグループです。名前からもわかる通り、「三対六本の脚をもった節足動物=六脚類」が分類されています。

属する種の多い六脚亜門は、今でも分類体系が議論され続けているグループ。近年の研究者たちの意見としては、六脚亜門を昆虫綱内顎綱に分ける分類方法がスタンダードになりつつあります。

昆虫綱

一般的な昆虫の仲間がふくまれます。前述のカブトムシやチョウに加え、ハチ、ハエ、トンボなど、身近な生き物ばかりです。昆虫綱よりも細かな分類(下位分類)は研究者によって意見が異なる場合がありますが、数多くの目に分けられています。

内顎綱

カマアシムシコムシトビムシなどの仲間が分類されるのが内顎綱というグループです。聞きなれない名前の生き物たちかもしれません。これらの仲間は一般的な昆虫同様六脚ですが、口(口器)に昆虫綱の生き物とは異なる特徴があり、別のグループをつくると考えられています。

鋏角亜門

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鋏角亜門にふくまれるのは、サソリやクモなどの生物です。この仲間は、体が頭胸部(前体)、腹部(後体)の2部からなっています。また、頭には鋏角という、エサなどをつかむための特別な関節肢が存在するのも大切な特徴です。

クモガタ綱

クモやそれに似た体を持つ生物が分類されるクモガタ綱。クモの仲間以外には、サソリダニの仲間ヒヨケムシザトウムシなどがふくまれます。

節口綱

「生きた化石」としておなじみのカブトガニの仲間が分類されるのが節口綱です。カブトガニ以外にも、すでに絶滅してしまった生き物であるウミサソリの仲間などもふくまれます。

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ウミグモ綱

ウミグモは海の中に住むクモのような生き物です。細い体に長い脚をもっています。小さなものから大きなものまでとても多様です。

多足亜門

名前の通り、足がたくさんある生物が分類されているのが多足亜門。この分類群の生物をまとめて多足類とよぶこともあります。もっともイメージしやすいのは、ムカデの仲間ではないでしょうか?

ムカデ綱

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ムカデの仲間といってもその種類は多様です。ムカデ綱ではもっとも種数の多いジムカデ類や、体長が30㎝ほどにもなるオオムカデの仲間、民家にもあらわれることのあるゲジの仲間などがいます。

ヤスデ綱

ヤスデはムカデとよく似た生物ですが、体のつくりにムカデとは異なる特徴があり、別の綱に分類されています。ムカデは肉食性ですが、ヤスデの仲間は落ち葉や菌類などを食べるなど、生態にも異なる部分があるのです。

コムカデ綱

紛らわしい名前をしていますが、コムカデの仲間も「ムカデに似ていてムカデじゃない」というような生き物です。庭や森などでもふつうにみられる生き物ですが、世界中でも200種類ほどしか知られていません。これからの研究が期待される分類群です。

エダヒゲムシ綱

土の中に暮らすエダヒゲムシという虫の仲間がふくまれています。

甲殻亜門

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いわゆる甲殻類が分類されているグループです。カニやエビなどの仲間がふくまれています。甲殻亜門もいくつかの綱に分けられますが、本記事では代表的な綱だけご紹介しましょう。

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貝形虫綱

カイミジンコや、ウミホタルなどの生物が分類される綱です。カイミジンコは、一般的によく知られているミジンコとは異なる生き物。2枚の貝をもち、その隙間から手を出しているような姿です。

軟甲綱

エビカニなどの仲間が分類されるのが、この軟甲綱です。意外なことに、お庭で見られるダンゴムシワラジムシの仲間もここにふくまれます。

六齢ノープリウス綱

ケンミジンコキンチャクムシフクロムシなどの生物がふくまれています。身近なところでいえば、フジツボカメノテといった海辺で見られる生物も、この六齢ノープリウス綱の仲間です。

鰓脚綱

小学校の教科書に載っているような、「よくみるミジンコ」は、この鰓脚綱です。この綱にはカブトガニや、アクアリウムを趣味とする人にはおなじみのアルテミアなどもふくまれています。

節足動物の深すぎる世界

はじめにもお伝えした通り、節足動物の仲間はとにかく種類が多いです。その姿かたちも多岐にわたり、「生物の多様性」というものをはっきりと認識することができます。

また、節足動物は生態系においても重要な役割を果たしていることを忘れてはいけません。小さな虫たちは小動物のエサとなり、植物の受粉を助け、大地を肥やす役割を果たしているのです。ぜひ親しみを持って接していただきたいと思います。

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理科生物生物の分類・進化

【生物】「節足動物」ってなんだ?現役講師がさくっとわかりやすく解説!

節足動物について考えてみたい。

自然界に存在する生物のうちの大部分を占めているのが、昆虫をはじめとする節足動物です。非常に種類が多く、類縁関係もつかみにくいところが多い生物群ですが、重要な特徴や大まかな分類を知っておくと普段よく見る生物が身近に思えてくるぞ。

今回も、大学で分類学を中心に勉強していた現役講師のオノヅカユウを招いた。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

節足動物とは?

節足動物とは、生物の大きな分類群のひとつである節足動物門に分類されている生き物のことを指すことばです。

昆虫などが含まれる節足動物は、すべての動物の中でも群を抜いて生物種が多いことが知られています。なんと、地球上の生物種の4分の3以上、文献によっては85%以上が節足動物だといわれるほど!未発見の種もたくさんいると考えられているので、この数字はまだ大きくなるかもしれません。

節足動物の特徴

節足動物には以下のような特徴があります。

外骨格でおおわれている

・関節のある脚(関節肢)をもつ

・頭部、胸部、腹部の3部、もしくは頭胸部、腹部の2部からなる体

・体節がはっきりしている

・神経系がはしご形神経系

節足動物の外骨格

私たち人間を含む哺乳類や鳥類、両生類などの脊椎動物は、体内にはっきりとしたがあり、その周りを筋肉が取り囲んでいます。骨は体を支え、筋肉が接続することで力強い運動を可能にする大切な存在です。

一方、無脊椎動物である節足動物には我々のような骨がありません。ではどうやって体を支えているのかというと、内臓や筋肉を覆う殻=外骨格によってその体を維持しています。節足動物の外骨格はクチクラという固い成分でできているので、体を支えたり、筋肉が付着するだけでなく、外敵から身を守るためにも有効です。

節足動物の関節肢

みなさんは虫の脚を観察してみたことがありますか?カクっと曲がる、はっきりとした関節を持っていますよね。このような脚が関節肢です。関節肢は基本的に各体節、一対ずつ左右対称についています。

さて、ここで少しイメージしていただきたいのですが…昆虫の触覚やカニ類のはさみなど、節足動物の体には、左右に対象についているパーツがよく見られますよね。肉眼では見えにくいことが多いですが、節足動物の顎も左右にわかれたパーツによって形成されています。

これらの触覚、はさみ、顎などは、いずれも関節肢の仲間とみなすことができ、元をたどれば同じものから変化してきたのではないかと考えられているのです。

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