今回は前回解説した「発熱反応」の逆の「吸熱反応」について詳しく勉強していこう。

吸熱反応はその名の通り熱を吸収する反応で、具体例は多くない。だからこそ、これを押さえておけば発熱反応の暗記にも役立つでしょう。

さあ、実生活における具体例を見ていこう。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.吸熱反応とは

1.吸熱反応とは

image by Study-Z編集部

吸熱反応では融解熱や蒸発熱を例にして解説しましたね。発熱反応は反応に伴って熱や電気、光が発生するのに対し、吸熱反応は反応を進めるために光や電気、熱が必要になる反応です。

熱化学方程式では 反応物=生成物ーエネルギー のカタチで表されるために、このマイナスがネックになってしまう人もいるでしょう。確かにこれだけを見れば、エネルギーが吸収されていることは感覚的に理解できるでしょう。しかし、これによって「反応することで温度が下がる」と考えてしまうのは誤りです。

数学的な考えとして、反応物=生成物ーエネルギー は 反応物+エネルギー=生成物 と同義であるのは理解できますね。(エネルギーを右辺に書いているのは形式的なルールにそってそうしているだけで、意味合いを考えれば左辺に置く方が理解しやすいでしょう。)つまり、反応することで温度が下がるのではなく、反応するためにエネルギーが必要と考えることが大切です。これを頭に置いたうえで、この先を読み進めていってくださいね。

2.身の周りにある吸熱反応

発熱反応よりもある意味マイナーで反応熱として考えたときはそれほど種類は多くないでしょう。しかし、どれも単体でみれば化学において重要な単元が絡んでいることに変わりはありません。具体例を見ていくとともに、吸熱反応への理解を深めましょう。

2-1.汗やアルコールの蒸発

image by iStockphoto

これらは蒸発熱に分類される物理変化です。物理変化というのは物質は形状や状態のみの変化を意味します。一方で化学変化というのは、複数の物質が化合したり、逆に1つの物質が複数に分解されるような反応のことです。物理変化と化学変化は、どちらも理科の授業でよく出てくるキーワードなので注意したいですね。化学反応式が書けるのが化学変化、書けないのが物理変化と覚えてもいいでしょう。

さて、この蒸発熱は誰しもが体験したことがあるでしょう。汗をかいた後に体が冷えるのを感じたり、注射のときのアルコール消毒で感じたことがありますよね。水分子が液体から気体に状態変化する場合に体の熱を奪っていくのです。これは自然界において、水が蒸発する際にどこででも起こっている吸熱反応ですね。

これの現象は意図的に起こすこともできます。それは、やかんに入れた水を加熱することで水蒸気に変えるという方法です。加熱する(エネルギーを加える)ことによって反応が進みますね。

汗やアルコールの例の場合、反応後の身体に焦点を当てて考えると 熱が奪われたので ーエネルギー(右辺) となります。やかんの場合、反応前に焦点を当てることで +エネルギー(左辺) と考えられますね。移項すれば ーエネルギー(右辺) です。つまり、反応のどの過程にポイントを置くかで味方は変わってきます。しかしいずれも吸熱反応であることには変わりないのです。

\次のページで「2-2.還元実験」を解説!/

2-2.還元実験

image by iStockphoto

酸化反応である燃焼が発熱反応ですから、還元はその逆の吸熱反応であると気づいた人もいるかもしれませんね。還元反応についても、反応前に焦点を当てて考えてみましょう。

実験の操作手順を思い出してみると、酸化物に炭素などの物質を合わせることで酸素を取り除くという反応でしたね。このとき、加熱が必要になりました。多くの実験において加熱操作は実験に欠かせないものであり、反応を進めるためのエネルギーの供給源になってくれているわけです。つまり実験操作に加熱操作が必要な実験は吸熱反応であると考えてもいいでしょう。こう考えると吸熱反応と発熱反応の見分け方が簡単になりそうですね。

3.電気や光を吸収する反応

発熱反応とは言いながら発電・発光する反応があったように、吸熱反応にも電気や光を吸収する反応があります。ただ、吸収というと少しわかりにくく想像がつかないかもしれませんね。そこで「電気によって反応が進む」「光をエネルギーとして反応が起こる」と考えてみてはどうでしょう。視野が広がりそうな気がしませんか?

3-1.電気分解

Voltage source with electrolytic solution.svg
User:ARTE - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

電気を吸収すると考えるとややこしいので、反応前に焦点を当てて電気を流すことで反応が進むと考えてみましょう。このとき、最も考えやすい実験が電気分解です。

水の電気分解を思い出してみましょう。水を電気分解すると、水素と酸素が2対1で発生するというものでしたね。これは電気の正体である電子の動きがその原理に関係していました。化学反応式を覚えていますか?

水の電気分解は 2H2O → 2H2 + O2 で表されます。化学反応式では左辺と右辺を矢印でつなぎますが、エネルギーの関係を式に含めた熱化学方程式ではイコールが使われるとお話ししましたね。

つまり 2H2O(液) + 電気エネルギー = 2H2(気) + O2(気) となるのがわかるでしょうか。しかし、熱化学方程式のルールに乗っ取って記載すると H2O(液) = H2(気) + 1/2O2(気) ー 電気エネルギー と書き換えることができます。中学ではまだ習わない内容なので、参考までに見ておきましょう。

\次のページで「3-2.植物の光合成」を解説!/

3-2.植物の光合成

image by iStockphoto

最後に生物の内容でもある光合成について見ていきましょう。光合成の実験で、光を当てた部分と当てていない部分で反応に差があったのを覚えていますか?ここで光合成を熱化学方程式のように表してみましょう。

水+二酸化炭素+日光=デンプン+酸素 つまり 水+二酸化炭素=デンプン+酸素ー光エネルギー ですよね。水を根から、酸素を気孔から吸収し、光を浴びることでデンプンを作り出すとともに酸素を放出しています。光合成には光が必要不可欠ですから、これも吸熱反応の1つなのです。

吸熱反応:反応物+熱や光=生成物

発熱反応では反応後に熱や光、電気といったエネルギーが発生したように、吸熱反応で吸収するのは熱だけではありません。光や電気によって反応が進む反応もあり、熱そのもので考えるのではなく、エネルギーが吸収されることで反応が進むと考えることが大切です。

反応熱の種類では○○熱といった名称で解説しましたね。反応熱の中では吸熱反応は例が少なく、これを覚えることで反応熱の分類は容易になるでしょう。しかし化学変化や物理変化など、あらゆる現象を含めれば吸熱反応自体が稀な反応というわけではありません。電気分解や酸化還元、生物の内容にまで関わる反応もあるので、1つ1つ整理して覚えていきましょう。

" /> 反応熱では少数派!「吸熱反応」を元塾講師がわかりやすく解説 – ページ 2 – Study-Z
化学物質の状態・構成・変化理科

反応熱では少数派!「吸熱反応」を元塾講師がわかりやすく解説

2-2.還元実験

image by iStockphoto

酸化反応である燃焼が発熱反応ですから、還元はその逆の吸熱反応であると気づいた人もいるかもしれませんね。還元反応についても、反応前に焦点を当てて考えてみましょう。

実験の操作手順を思い出してみると、酸化物に炭素などの物質を合わせることで酸素を取り除くという反応でしたね。このとき、加熱が必要になりました。多くの実験において加熱操作は実験に欠かせないものであり、反応を進めるためのエネルギーの供給源になってくれているわけです。つまり実験操作に加熱操作が必要な実験は吸熱反応であると考えてもいいでしょう。こう考えると吸熱反応と発熱反応の見分け方が簡単になりそうですね。

3.電気や光を吸収する反応

発熱反応とは言いながら発電・発光する反応があったように、吸熱反応にも電気や光を吸収する反応があります。ただ、吸収というと少しわかりにくく想像がつかないかもしれませんね。そこで「電気によって反応が進む」「光をエネルギーとして反応が起こる」と考えてみてはどうでしょう。視野が広がりそうな気がしませんか?

3-1.電気分解

Voltage source with electrolytic solution.svg
User:ARTE投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

電気を吸収すると考えるとややこしいので、反応前に焦点を当てて電気を流すことで反応が進むと考えてみましょう。このとき、最も考えやすい実験が電気分解です。

水の電気分解を思い出してみましょう。水を電気分解すると、水素と酸素が2対1で発生するというものでしたね。これは電気の正体である電子の動きがその原理に関係していました。化学反応式を覚えていますか?

水の電気分解は 2H2O → 2H2 + O2 で表されます。化学反応式では左辺と右辺を矢印でつなぎますが、エネルギーの関係を式に含めた熱化学方程式ではイコールが使われるとお話ししましたね。

つまり 2H2O(液) + 電気エネルギー = 2H2(気) + O2(気) となるのがわかるでしょうか。しかし、熱化学方程式のルールに乗っ取って記載すると H2O(液) = H2(気) + 1/2O2(気) ー 電気エネルギー と書き換えることができます。中学ではまだ習わない内容なので、参考までに見ておきましょう。

\次のページで「3-2.植物の光合成」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: