今回は小惑星について解説していきます。

日本の探査機「はやぶさ」や「はやぶさ2」について聞いて事がある人も多いでしょう。この探査機が何を探査しているのかと言えば、それは小惑星と呼ばれる天体です。近年は小惑星の探査が活発に続けられている。その小惑星について基本的なことを見てみよう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

小惑星について

image by iStockphoto

太陽系には数々の天体が存在しますが、その中から惑星、準惑星、衛星を除いたすべての天体をまとめて太陽系小天体と呼びます。太陽系小天体はさらに細かく分類されていて、それらは小惑星、彗星、太陽系外縁天体、惑星間塵です。

今回はこの中から小惑星を取り上げます。日本の探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワを、「はやぶさ2」が小惑星リュウグウを探査していまることを知っている人も多いでしょう。特に「はやぶさ」は数々の苦難を乗り越え、世界初の小惑星サンプルリターンミッションに成功し、日本中で非常に話題になりました。また他国の小惑星探査も活発です。今回はこの近年探査が活発な小惑星について紹介します。

小惑星の基本

Asteroid size comparison.jpg
NASA, ESA, STScI - HubbleSite NewsCenter Largest Asteroid May Be 'Mini Planet' with Water Ice, パブリック・ドメイン, リンクによる

小惑星は主に火星と木星の間に軌道を持つ小さな岩石質の天体です。小惑星が多く集まっているこの領域はメインベルト(小惑星帯)と呼ばれます。1801年に最初に発見された小惑星ケレスをはじめ、現在軌道が確定した小惑星だけでも45万個以上にのぼっているようです。500メートル以下のサイズまで含めると全体で160万個以上の小惑星があると推定されていますが、すべての質量を合計しても月の15パーセント程度しかありません。ちなみに、ケレスは海王星より内側にある唯一の準惑星です。小惑星はその光り方によって分類されることがあり、暗い炭素質の小惑星をC型、赤っぽい岩石質の小惑星をS型、金属質の小惑星をX型などに分類されます。上記の画像は左からガスプラ、エロス、イダ、ベスタ、ケレスの比較画像です。ケレス以外は不規則な形をしています。下にある大きい天体は火星です。

メインベルトについて

メインベルトの起源について

Giantimpact.gif
NASA - NASA/JPL-Caltech (PIA12166: Planetary Demolition Derby), パブリック・ドメイン, リンクによる

なぜメインベルトに小惑星が密集して存在しているのでしょうか。その原因は太陽系の誕生時に存在すると考えられています。太陽系は、星間ガスが自己の重力で収縮し、まず中心に太陽ができ、そのあまった物質が太陽の周りで収縮、合体することにより誕生しました。その過程で小さい岩石質の塊がたくさん存在し、それらが衝突合体していくことにより地球のような岩石惑星が誕生していきます。小惑星帯にもそのような岩石質の塊がたくさん存在し、それらが衝突合体しミニ惑星がいくつもできていたようです。本来はこのミニ惑星がさらに合体し惑星になるはずだったのですが、メインベルトの外側には巨大な木星が存在します。この木星の巨大な重力によって軌道が乱され、衝突による合体よりも互いに破壊される効果が大きくなってしまったため、現在のような状態になったようです。

\次のページで「メインベルトの軌道について」を解説!/

メインベルトの軌道について

Asteroid Belt ja.svg
my own work derived from NASA's image. - Image:Asteroid Belt.jpg, パブリック・ドメイン, リンクによる

一口にメインベルトといってもその軌道には濃淡があります。基本的には黄道面に沿ってほぼ円に近い軌道を回っていますが、上の図をよく見ると木星の軌道の前と後ろにトロヤ群と書かれた塊があるのがわかるでしょう。ここの群れは公転周期が木星の公転周期と、1:1の関係になっていて、ラグランジュ点とよばれる力学的に安定した領域にあります。そのためにこのような場所にも小惑星が存在しているのです。また小惑星帯の中でも、木星の公転周期と1:3などの整数比となる領域では、木星の重力の影響によって小惑星が少ない領域が存在しています。さらに、小惑星帯の外側と内側の端は、木星との周期が1:2と1:4になる場所です。これより外側は木星、内側は火星の重力の影響で軌道が不安定になってしまいます。このように現在の小惑星にも大きな影響を与えているのが木星の重力です。

小惑星について紹介

ここからは小惑星の具体的な姿を見てきましょう。

ケレスについて

ドーンが2015年5月に撮影したケレスの自然色画像[注 1]
Justin Cowart - Ceres - RC3 - Haulani Crater, CC 表示 2.0, リンクによる

まず最大の小惑星ケレスの姿です。直径約1000キロメートル、質量約9.39×10の20乗キログラムで小惑星帯全質量の3分の1程度をしめると考えらています。上記の画像のように球形でクレーターに覆われた衛星のような見た目です。ただ近年の探査によってクレーターが予想よりも大きくなく、地質学的活動が存在するのではないかと考えられています。ケレスの表面は非常に炭素が多く、表面付近の全質量の約20パーセントも存在するようです。ケレスの構造は中心に岩石質の核、その周りに氷状のマントル、そのまわりに地殻というようになっていると考えられています。以上のようなことから、ケレスは惑星まで成長できなかった原始惑星の生き残りだと考えられているようです。

マティルドについて

(253) mathilde.jpg
NASA - http://nssdc.gsfc.nasa.gov/imgcat/html/object_page/nea_19970627_mos.html, パブリック・ドメイン, リンクによる

次はニアーシューメーカー探査機が調査した小惑星マティルドです。マティルドは直径が約5800キロメートル、質量が1.0×10の17乗キログラムであり、探査機が接近した始めてのC型小惑星、つまり黒っぽい炭素質の小惑星になります。C型小惑星であるため地球に落下してくる炭素質の隕石(炭素質コンドライト)と同様の存在だろうと思われていたのですが、探査の結果、密度が1立方センチメートルあたり1.3グラムしかありませんでした。この値は隕石の半分しかありません。この小さな密度の理由は、マティルドがさらに小さな微惑星や破片が再集積してできた小惑星であるため、中身がすかすかの状態でであることが理由だと考えられています。このような小惑星の構造はラブルパイルと呼ばれていて、以前より研究者によってその存在が予想されていました。

イトカワについて

相模原市立博物館に展示された模型
江戸村のとくぞう - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

最後は日本の探査機はやぶさが探査したイトカワについてです。イトカワはメインベルトから弾き出され、地球に近い軌道にある地球近傍小惑星に分類されています。S型の小惑星で直径が約330メートルしかなく、探査機が探査をした最も小さな天体です。イトカワの持ち帰ったサンプルによって、地球に落ちてくる隕石の8割をしめる岩石質隕石(普通コンドライト)がS型小惑星由来であることが確かめられました。宇宙風化していることや約800度で過熱された痕跡の粒子も確認されています。研究の結果によると、イトカワは直径20キロメートル以上の母天体として生まれ、衝突によってばらばらになった破片の一部が自己重力によって再び集まってできた小惑星のようです。つまりイトカワもラブルパイルということになります。上記の写真はイトカワの模型です。

\次のページで「太陽系の誕生に迫る小惑星」を解説!/

太陽系の誕生に迫る小惑星

太陽系の誕生に迫る小惑星

image by Study-Z編集部

近年、小惑星探査が活発な理由の一つは、小惑星が太陽系誕生時の情報を保存していると考えられるからです。先ほど説明したように、小惑星は太陽系の誕生過程で惑星にまでなれなかった岩石の集合体だと考えられています。そのため惑星の原材料になった岩石が、太陽系の誕生時に近い形でそのまま残っていると考えられるのが小惑星です。有機物をはじめ我々の生命の起源についても、小惑星を調べることで何かわかるかもしれません。日本も「はやぶさ」や「はやぶさ2」で小惑星探査に大きく貢献しています。これからも小惑星の探査が進むにつれ、小惑星と太陽系の起源についてさらに明らかになっていくことでしょう。

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地学宇宙理科

「小惑星」と「メインベルト」について理系ライターが丁寧にわかりやすく解説

今回は小惑星について解説していきます。

日本の探査機「はやぶさ」や「はやぶさ2」について聞いて事がある人も多いでしょう。この探査機が何を探査しているのかと言えば、それは小惑星と呼ばれる天体です。近年は小惑星の探査が活発に続けられている。その小惑星について基本的なことを見てみよう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

小惑星について

image by iStockphoto

太陽系には数々の天体が存在しますが、その中から惑星、準惑星、衛星を除いたすべての天体をまとめて太陽系小天体と呼びます。太陽系小天体はさらに細かく分類されていて、それらは小惑星、彗星、太陽系外縁天体、惑星間塵です。

今回はこの中から小惑星を取り上げます。日本の探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワを、「はやぶさ2」が小惑星リュウグウを探査していまることを知っている人も多いでしょう。特に「はやぶさ」は数々の苦難を乗り越え、世界初の小惑星サンプルリターンミッションに成功し、日本中で非常に話題になりました。また他国の小惑星探査も活発です。今回はこの近年探査が活発な小惑星について紹介します。

小惑星の基本

Asteroid size comparison.jpg
NASA, ESA, STScI – HubbleSite NewsCenter Largest Asteroid May Be ‘Mini Planet’ with Water Ice, パブリック・ドメイン, リンクによる

小惑星は主に火星と木星の間に軌道を持つ小さな岩石質の天体です。小惑星が多く集まっているこの領域はメインベルト(小惑星帯)と呼ばれます。1801年に最初に発見された小惑星ケレスをはじめ、現在軌道が確定した小惑星だけでも45万個以上にのぼっているようです。500メートル以下のサイズまで含めると全体で160万個以上の小惑星があると推定されていますが、すべての質量を合計しても月の15パーセント程度しかありません。ちなみに、ケレスは海王星より内側にある唯一の準惑星です。小惑星はその光り方によって分類されることがあり、暗い炭素質の小惑星をC型、赤っぽい岩石質の小惑星をS型、金属質の小惑星をX型などに分類されます。上記の画像は左からガスプラ、エロス、イダ、ベスタ、ケレスの比較画像です。ケレス以外は不規則な形をしています。下にある大きい天体は火星です。

メインベルトについて

メインベルトの起源について

Giantimpact.gif
NASA – NASA/JPL-Caltech (PIA12166: Planetary Demolition Derby), パブリック・ドメイン, リンクによる

なぜメインベルトに小惑星が密集して存在しているのでしょうか。その原因は太陽系の誕生時に存在すると考えられています。太陽系は、星間ガスが自己の重力で収縮し、まず中心に太陽ができ、そのあまった物質が太陽の周りで収縮、合体することにより誕生しました。その過程で小さい岩石質の塊がたくさん存在し、それらが衝突合体していくことにより地球のような岩石惑星が誕生していきます。小惑星帯にもそのような岩石質の塊がたくさん存在し、それらが衝突合体しミニ惑星がいくつもできていたようです。本来はこのミニ惑星がさらに合体し惑星になるはずだったのですが、メインベルトの外側には巨大な木星が存在します。この木星の巨大な重力によって軌道が乱され、衝突による合体よりも互いに破壊される効果が大きくなってしまったため、現在のような状態になったようです。

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