今回は反応熱の中でも「発熱反応」について詳しく勉強していこう。

前回大まかな説明はしたが覚えているか?今回は具体例を主に挙げていきます。

発熱反応の理解は中学・高校へと理解を深めるためには必要不可欠です。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.発熱反応とは

発熱反応における反応熱は燃焼熱、中和熱、溶解熱などが挙げられましたね。

水酸化ナトリウムと塩酸の中和は実験でもおなじみですが、実はこの反応中には熱が発生しているのです。また、塩酸は塩化水素の水溶液でしたね。工場でこれを生成する際には多量の溶解熱が発生するため、多量の冷却水が必要になります。

燃やすだけではなく、様々な化学変化や工程を経て、発熱反応が起こっていることを覚えておきましょう。ただ丸暗記するのではなく、皆さんの周りにある事例を一緒に理解したいですね。

2.身近な発熱反応

image by iStockphoto

それでは実際に身の周りにある発熱反応の例を解説します。中学レベルでは前回解説したような種類よりも具体例で覚えておくのがいいでしょう。吸熱反応よりもテストに出やすいので要チェックですよ。

2-1.燃焼

2-1.燃焼

image by Study-Z編集部

燃焼は中学理科で最初に習う化学反応ですね。ご存知の通り、物質が酸素と結び付くことで燃えるという反応です。

炭素を含む有機物を燃やす場合、その構成元素は水や二酸化炭素となって空気中に放出されます。金属の燃焼では酸化鉄や酸化銅などの酸化物ができることを学びましたね。その際に燃えるという現象が起こるわけです。燃えるということは火が生じますから、当然発熱反応であることがはっきりするでしょう。

image by Study-Z編集部

確かに呼吸、つまり人体においての消化の過程も発熱反応といえるでしょう。人がご飯を食べてエネルギーを得るからこそ、身体を動かすことに繋がります。燃焼は反応前の物質が熱や光といったエネルギーとともに反応物へと変わっていくものですが、呼吸は酵素のはたらきを用いることで体温という比較的低い温度で効率良く反応を進め、有機物を効率良く分解することでエネルギーを得るものです。高校では生物と化学が教科として分かれますが、共通点と相違点を覚えておくとそれぞれの理解に役立ちそうですね。

2-2.かいろ

Handwaermer11.jpg
Suricata - 自ら撮影, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

燃焼というのは酸化反応の中の1つでしたね。そして忘れてはいけないのは、酸化には激しい酸化・いわゆる燃焼と穏やかな酸化・さびの2種類があるということです。

かいろは鉄が酸化鉄になる過程で発生する熱を利用したものでしたね。長時間丁度いい温度が保たれるような調整がされているのです。

かいろやさびのような反応がゆっくりなもの、ごくわずかな発熱量の発熱反応は発熱していること自体がわかりにくいものが多々あります。いろいろ調べてみると面白そうですね。

3.発熱反応なのに発電・発光?

「発熱」反応というからには、基本的には熱が発生する反応であることをまずは理解しておきたいですね。しかし、放出されるエネルギーの主たるものが常に熱であるとは言い切れません。エネルギーを電気や光として効率良く取り出すことのできるものが、身近にたくさんあるのに気付いていますか?

3-1.電池

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電池の中では複雑な化学反応が起こっています。難しい説明は別の記事を見ていただくとして、今回考えてみてほしいのはその反応過程です。

反応物(電池の中身)は生成物になる(消費されていく)過程において、電気エネルギーを放出します。電池というのは、化学反応によって電気エネルギーが取り出せることに着目して製造された商品です。

普段使っているスマートフォンやゲーム機など、電池やバッテリーから電力を得ているものはたくさんありますね。これらを長く使用すると、それらの機器本体にどんな変化が起こるでしょうか?

 

\次のページで「3-2.化学発光」を解説!/

長時間動画を見たり、充電を続けたりすると、本体が熱くなっているのを感じたことはありませんか?これは電気エネルギーが生成すると同時に熱エネルギーも生じていることの証明でもありますね。通常はこの熱への対策を製品ごとにしているものの、取り扱い方法や使用期間等さまざまな原因で、発熱が顕著に表れてしまったと考えられるでしょう。

3-2.化学発光

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化学反応による発光には面白い反応がたくさんあります。

ホタルの体内で化学反応が起こることによる発光反応、サスペンスドラマなどでもよく耳にするルミノール反応は有名でしょう。ある物質が血液に反応して光るという性質を利用したものですね。これらは酵素であったり発光物質であったり、物質同士がかけ合わさることで生じる発光です。また、サイリウムやケミカルライトとよばれるものは、折ることで中の化学物質が反応して発光します。

しかしこれらの発光と発熱を関連付けるのは少し難しいかもしれませんね。そこで照明器具を例にして考えてみましょう。これは化学反応ではなく電気エネルギーを光エネルギーに変えるものです。しかし照明器具は光を放つと同時に熱も放出します。電池やバッテリー同様、元ある100のエネルギーを何かしらに変換しようとしたとき、100%目的のエネルギーに変えるのは難しいということを覚えておくといいですね。

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ここで電球を使ったクイズに挑戦してみてください。

玄関に3つのスイッチがあり、それらはそれぞれ異なる部屋の照明(電球)につながっています。それぞれの部屋から別の2部屋の様子を見ることはできません。玄関スイッチを操作後、3部屋には1度ずつ入ることができます。

では、どのスイッチがどの部屋につながっているか、どのようにすればわかるでしょうか?

それでは正解を解説します。

 

スイッチをそれぞれABCとしましょう。AとBのスイッチをオンにし、10分経ってからBをオフにし、Aはオンのままでそれぞれの部屋へ向かいましょう。このとき、電気がついていない部屋が2部屋、ついている部屋が1部屋あるはずですね。つまり、電気のついている部屋とAがペアということです。さらに残った2つの部屋の電球を触ってみると、温かくなっているものとそうでないものがあるはずですね。電球が温かくなっている部屋がB、冷たいままの部屋がCのスイッチとつながっていることがわかります。

 

正解できましたか?解説を聞けば「なんだ、そんなことか」と思ったかもしれませんね。

\次のページで「発熱反応:反応物=生成物+熱や光」を解説!/

発熱反応:反応物=生成物+熱や光

発熱反応を簡単に理解するにはこう考えてみましょう。物質が化学反応を起こしたり状態変化を起こす過程において、熱や光、電気といったエネルギーが発生する反応のことを総称し、発熱反応といいます。

燃焼に代表されるように、炎つまり熱としてエネルギーが生じる場合が多い反応です。しかし実際は熱だけでなく、光や電気のカタチで放出される場合もあることを覚えておきましょう。これらの例としては、身近なものの中からバッテリーや電球で考えてみましたね。100のエネルギーを用いたからといって100の電気エネルギーに変わるわけではありません。そのうちのいくらかは熱エネルギーとして放出され、ロスが生じています。化学技術の応用次第ではこのロスを減らすことができるかもしれませんよね。そう考えると化学が少し面白く感じませんか?

" /> 反応熱を理解する鍵!「発熱反応」について元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学物質の状態・構成・変化理科

反応熱を理解する鍵!「発熱反応」について元塾講師がわかりやすく解説

今回は反応熱の中でも「発熱反応」について詳しく勉強していこう。

前回大まかな説明はしたが覚えているか?今回は具体例を主に挙げていきます。

発熱反応の理解は中学・高校へと理解を深めるためには必要不可欠です。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.発熱反応とは

発熱反応における反応熱は燃焼熱、中和熱、溶解熱などが挙げられましたね。

水酸化ナトリウムと塩酸の中和は実験でもおなじみですが、実はこの反応中には熱が発生しているのです。また、塩酸は塩化水素の水溶液でしたね。工場でこれを生成する際には多量の溶解熱が発生するため、多量の冷却水が必要になります。

燃やすだけではなく、様々な化学変化や工程を経て、発熱反応が起こっていることを覚えておきましょう。ただ丸暗記するのではなく、皆さんの周りにある事例を一緒に理解したいですね。

2.身近な発熱反応

image by iStockphoto

それでは実際に身の周りにある発熱反応の例を解説します。中学レベルでは前回解説したような種類よりも具体例で覚えておくのがいいでしょう。吸熱反応よりもテストに出やすいので要チェックですよ。

2-1.燃焼

2-1.燃焼

image by Study-Z編集部

燃焼は中学理科で最初に習う化学反応ですね。ご存知の通り、物質が酸素と結び付くことで燃えるという反応です。

炭素を含む有機物を燃やす場合、その構成元素は水や二酸化炭素となって空気中に放出されます。金属の燃焼では酸化鉄や酸化銅などの酸化物ができることを学びましたね。その際に燃えるという現象が起こるわけです。燃えるということは火が生じますから、当然発熱反応であることがはっきりするでしょう。

image by Study-Z編集部

確かに呼吸、つまり人体においての消化の過程も発熱反応といえるでしょう。人がご飯を食べてエネルギーを得るからこそ、身体を動かすことに繋がります。燃焼は反応前の物質が熱や光といったエネルギーとともに反応物へと変わっていくものですが、呼吸は酵素のはたらきを用いることで体温という比較的低い温度で効率良く反応を進め、有機物を効率良く分解することでエネルギーを得るものです。高校では生物と化学が教科として分かれますが、共通点と相違点を覚えておくとそれぞれの理解に役立ちそうですね。

2-2.かいろ

Handwaermer11.jpg
Suricata自ら撮影, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

燃焼というのは酸化反応の中の1つでしたね。そして忘れてはいけないのは、酸化には激しい酸化・いわゆる燃焼と穏やかな酸化・さびの2種類があるということです。

かいろは鉄が酸化鉄になる過程で発生する熱を利用したものでしたね。長時間丁度いい温度が保たれるような調整がされているのです。

かいろやさびのような反応がゆっくりなもの、ごくわずかな発熱量の発熱反応は発熱していること自体がわかりにくいものが多々あります。いろいろ調べてみると面白そうですね。

3.発熱反応なのに発電・発光?

「発熱」反応というからには、基本的には熱が発生する反応であることをまずは理解しておきたいですね。しかし、放出されるエネルギーの主たるものが常に熱であるとは言い切れません。エネルギーを電気や光として効率良く取り出すことのできるものが、身近にたくさんあるのに気付いていますか?

3-1.電池

image by iStockphoto

電池の中では複雑な化学反応が起こっています。難しい説明は別の記事を見ていただくとして、今回考えてみてほしいのはその反応過程です。

反応物(電池の中身)は生成物になる(消費されていく)過程において、電気エネルギーを放出します。電池というのは、化学反応によって電気エネルギーが取り出せることに着目して製造された商品です。

普段使っているスマートフォンやゲーム機など、電池やバッテリーから電力を得ているものはたくさんありますね。これらを長く使用すると、それらの機器本体にどんな変化が起こるでしょうか?

 

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