
李克用との対立して恨みを買う

数ある節度使のうち、最大の勢力を誇ったのは黄巣の乱鎮圧の最大功労者であった李克用です。李克用はその功績により河北の太原を拠点として河東節度使となっていましたが、河南を挟んで隣接することにも加え、ある一件により朱全忠との関係は非常に険悪でした。先の黄巣の乱において李克用に助けられたことのある朱全忠が、答礼のために招いた宴会において、李克用が殺されかけたからです。
性格がまっすぐな武人タイプであり曲がったことが許せない李克用。裏切り行為を行って唐の節度使(李克用と同僚)となった朱全忠の存在は気に食わず、招かれた宴席で朱全忠に対し、
朝廷のために賊(黄巣)を討っただけで、礼を言われる筋合いはない。
しかも黄巣は貴殿の元の君主。さぞや戦いにくいでしょうな。

と皮肉を交えてなじります。
青筋押さえつつ表面上はにこやかに手厚く李克用をもてなした朱全忠は、李克用らが酒で寝静まったのを見計らって襲撃。部下に叩き起こされた李克用は、命からがら逃げ延びたのでした。以降、両者は互いを不俱戴天の仇として終生対立していくことになります。
李茂貞を倒して唐の皇帝を手に入れる
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朱全忠のもう一人のライバルは、唐の皇帝直属の親衛隊・神策軍の出身であった李茂貞です。
李茂貞は、黄巣の乱の鎮圧の功により長安近郊の鳳翔節度使に任じられていましたが、長安の南にある漢中地方を唐の朝廷に無断で自領として接収。唐の朝廷の任命した官僚の赴任を阻みます。西暦894年、これに激怒した唐の昭宗の討伐を受けるのですが、それを返り討ち。西暦901年には、昭宗に有無を言わさずに自身の本拠地である鳳翔に遷都させ、李茂貞自身は岐王に奉じられます。
この時、李茂貞の勢力は長安から漢中までの広大な領域に広がって最大勢力となりましたが、その勢力拡大を疎ましく思う朱全忠ら他の節度使勢力は、結託して李茂貞を攻撃。敗れた李茂貞は西暦903年、昭帝を朱全忠に引き渡して領土を縮小した上で、和議を結びます。結果、朱全忠は長安周辺にまで勢力下に加えた上で、唐の皇帝を手中に入れることとなりました。
唐の朝廷の破壊者・朱全忠
各地では、李克用ら有力な節度使が健在ではあるものの、皇帝を挟んで天下に号令する立場となった朱全忠は、節度使から更に上の位への昇格・自らの野望達成のため、それまで唐の朝廷の権力機構を順次破壊していきます。
唐の皇帝を無力化する
まずは宮中に兵を率いて乱入。宮廷内で皇帝を凌ぐ権力者となっていた宦官らをほぼ一掃した上で、昭宗に迫って西暦904年に自身の拠点であった開封に遷都を強行。唐の朝廷内の邪魔者を消した上で、建国から数百年、長安を本拠としてきた唐の皇帝や中央官僚たちをアウェーな土地に連れて行き、無力化したのです。
皇帝をコントロール出来る立場となった朱全忠は、以下のような悪辣な謀略を実行に移します。
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