今回は、先人たちがどのようにして、音速および光速を測定していたかを解説します。

音速と光速は、人間のスケール感で考えると、どちらも非常に速い。そのため、これらを測定することは簡単にはできない。先人たちの、音速や光速を測定するための、様々な工夫や発想には非常に驚かさせる。ぜひ、この記事を読んで、音速および光速の測定法を理解してくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

まずは音と光について学ぼう!

まず、音と光はそれぞれ、どのようなものであるかを考えてみましょう。音と光は、両方とも波動現象として捉えることができます。ゆえに、どちらとも波特有の現象である干渉、回折、屈折を観測することができますよ

音とは

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音は、空気や水、金属などを媒質して伝わる縦波です。真空中では、音は伝わりません縦波とは、媒質の振動方向と波の進行方向が平行である波のことを指します。スピーカーは膜を電気で動かし、空気を振動させることで音を発生させていますね。

そして、音の強弱は、波の振幅の大きさで決まります高い音か、低い音かは波の振動数で決まりますね音色は、基本波にどのような高調波が付け加えられるかで決まりますよ。また、音の伝わる速度を、音速といいます。音速の大きさは、乾燥空気、0℃、1気圧の条件下で秒速331.5mとなりますよ。ただし、気温(媒質の温度)が変化すると、音速は異なった値となります。また、媒質を構成する物質の組成が異なる場合も、音速の値は変わりますよ

光とは

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光の媒質は空間そのものだと考えられています。そして、光の正体は電磁波です。電磁波は、空間内の電場と磁場の変化によって伝わる横波ですね。横波とは、媒質の振動方向と波の進行方向が垂直である波のことを指します。

そして、光の強弱を決定づけるのは、波の振幅の大きさです。光の色は、波の振動数の大小で決まります。また、光の伝わる速度は、光速と呼ばれ、真空中でその大きさは秒速299792458です。光が1秒間で進む距離は、およそ地球7週半に相当します。また、太陽から地球までの距離を光の速さで進むと8分20秒ほどかかりますよ。

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先人たちの音速、光速の測定法

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それでは、音速、光速がどれくらいの値であるかを測定する方法を紹介します。ここで、先人たちが行ってきた音速、光速測定のための古典的な実験、研究に注目して説明しますね。

音速の測定法

音速を初めて測定した人物は、ピエール・ガッサンディまたはマラン・メルセンヌだと言われています。二人ともフランスの物理学者です。両者とも大砲の音を利用して実験を行い、ピエール・ガッサンディは毎秒478m、マラン・メルセンヌは毎秒448mが音速だと主張しました。これらの実験は、ある地点で大砲の音を鳴らした後、離れた地点で大砲の音を聞くまでの時間を測定し、音速を求めるという単純な方法です。

光速の測定法

光速の測定に、はじめて成功した人物は、デンマークの天文学者であるオーレ・クリステンセン・レーマーです。レーマーは、惑星の1つである木星の衛星による食の周期のずれから、光速を求めました。後に、ジェームス・ブラッドレーも、恒星の位置の変化から光速を求めることに成功しています。

これらは、いずれも宇宙空間を利用した光速測定法です。一方、フランスの物理学者であるアルマン・フィゾーは、地球上の実験装置で、光速を求めました。フィゾーの実験は、歯車を高速で回転させて、そこに光を通したときの明暗の変化から光速を求めるというものです。その後、鏡を用いた干渉計レーザーによる測定法も提唱されました。

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音速、光速の理論値

ここまで、音速、光速を実測によって求める方法をいくつか説明してきました。ここでは、物理法則に基づき、計算式によって音速および光速を求める方法を紹介します。

音速の理論値

音速の理論値

image by Study-Z編集部

ニュートンは、音が伝わる様子を古典力学を用いてモデル化し、計算式によって音速を求める方法を提案しました。その計算式は、(音速)=√p/ρ(pは圧力、ρは密度)というものです。ただし、ニュートンが考案した計算式は、等温条件でのみ成立するものでした。

これでは少々不便ですよね。そこで、ラプラスは、比熱比を用いてニュートンの式を補正しました。比熱比とは、定圧モル比熱を定積モル比熱で割った値のことです。ラプラスの式は、(音速)=√γp/ρ(pは圧力、ρは密度、γは比熱比)となります。

光速の理論値

光速の理論値

image by Study-Z編集部

真空中の電磁波の速度は、マクスウェル方程式から導かれた式1/√ε0μ0(ε0は真空中の誘電率、μ0は真空中の透磁率)で求めることができます。光は、電磁波の一種です。ゆえに、真空中の光の速度も、まったく同じ式で求めることができます。また、電波や放射線、X線なども電磁波に分類されるのです。ですから、これらの真空中での速度も同様の式で与えられますね。

光速測定で使われた技術は今でも活躍している?

かつて光速測定で用いられていた技術が、今の最先端研究に用いられていることをご存知でしょうか?実は、重力波の観測に用いるレーザー干渉計の仕組みは、昔に光速測定で使われた干渉計と同じような構造をしているのです。重力波を観測することは、宇宙の歴史を知ることができるなど、多くの意義があります。光速測定などで、培われた技術が、今なお利用されていると考えると感慨深いですよね。

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光速および音速の測定法は多種多様

光速および音速を測定する方法は、あまりにも多いので、この記事の内容だけでは扱いきれていません。光速の測定法を思いつくのは少し難しいですが、音速の測定法であれば、あなたも思いつくことができるかもしれません。小中学生の方であれば、丁度よい夏休みの自由研究のテーマになるでしょう。

この記事を読んで、光速および音速の測定法に興味を持った方がいれば、ぜひ詳細を調べてみてください。きっと、先人たちの工夫や発想に驚きますよ!

" /> 先人たちの音速、光速測定法を理系学生ライターが5分でわかりやすく解説! – ページ 3 – Study-Z
物理理科電磁気学・光学・天文学

先人たちの音速、光速測定法を理系学生ライターが5分でわかりやすく解説!

音速、光速の理論値

ここまで、音速、光速を実測によって求める方法をいくつか説明してきました。ここでは、物理法則に基づき、計算式によって音速および光速を求める方法を紹介します。

音速の理論値

音速の理論値

image by Study-Z編集部

ニュートンは、音が伝わる様子を古典力学を用いてモデル化し、計算式によって音速を求める方法を提案しました。その計算式は、(音速)=√p/ρ(pは圧力、ρは密度)というものです。ただし、ニュートンが考案した計算式は、等温条件でのみ成立するものでした。

これでは少々不便ですよね。そこで、ラプラスは、比熱比を用いてニュートンの式を補正しました。比熱比とは、定圧モル比熱を定積モル比熱で割った値のことです。ラプラスの式は、(音速)=√γp/ρ(pは圧力、ρは密度、γは比熱比)となります。

光速の理論値

光速の理論値

image by Study-Z編集部

真空中の電磁波の速度は、マクスウェル方程式から導かれた式1/√ε0μ0(ε0は真空中の誘電率、μ0は真空中の透磁率)で求めることができます。光は、電磁波の一種です。ゆえに、真空中の光の速度も、まったく同じ式で求めることができます。また、電波や放射線、X線なども電磁波に分類されるのです。ですから、これらの真空中での速度も同様の式で与えられますね。

光速測定で使われた技術は今でも活躍している?

かつて光速測定で用いられていた技術が、今の最先端研究に用いられていることをご存知でしょうか?実は、重力波の観測に用いるレーザー干渉計の仕組みは、昔に光速測定で使われた干渉計と同じような構造をしているのです。重力波を観測することは、宇宙の歴史を知ることができるなど、多くの意義があります。光速測定などで、培われた技術が、今なお利用されていると考えると感慨深いですよね。

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