身の回りにある物質は大きく3つに分けられる。混合物と化合物、そして単体です。単体というのは1種類の元素だけでできている物質の事を指す。

単体の中にはその結合や結晶構造の違いから同じ原子の単体なのに全く見かけの違う物質になるものもある。そこで今回は単体になる元素について、周期表大好きリケジョのたかはしふみかが説明していきます。

ライター/たかはし ふみか

高校時代の試験対策はノートの見直しを重点的に行い、よく先生に質問に行っていた。しかしその割にテストの点数は残念だった化学部部員。国立大学工学部の化学系の大学院修了後は化学工場に勤める。大学生時代は家庭教師のバイトをしていて、勉強を教える楽しみを実感していた。

物質の分類をおさらい

物質の分類をおさらい

image by Study-Z編集部

単体の元素について学ぶ前に、単体や物質の分類についてのおさらいをしましょう。

身の回りの物は単体化合物という純物質からできています。そして、純物質が混ざって混合物ができているのです。

海水を例に考えてみましょう。海水塩化ナトリウムという化合物が混ざり合った混合物です。化合物は混合物に分離と精製の作業を行うことで比較的簡単に得ることができますが、単体を得るには物質を分解する必要がある場合もあります。海水の場合、煮詰めて蒸気を冷やせば水と塩化ナトリウムを得ることができますね。しかし、化合物である水から構成する水素と酸素を得るには、水を分解する必要があるのです。

また、空気も単体である酸素窒素、化合物である二酸化炭素が混合した混合物になります。ちなみに空気中で一番多いのは意外にも酸素ではなく窒素であることに注意してください。

1種類の元素からできているのが単体2種類以上の元素からできているのが化合物でこの2つを合わせて純物質と呼ぶこと。そして純物質が2つ以上混ざったものを混合物ということをまずはしっかり覚えてくださいね。

単体になる元素の特徴

image by PIXTA / 55704863

単体については理解できましたか?次は単体になる元素の特徴を確認していきましょう。

先ほど単体とは1種類の元素から成り立っている物質であることは説明しましたね。金属元素、非金属元素のどちらでも単体の物質なることができます。金属元素といえばナトリウムやカルシウム、金などのことで非金属元素といえば酸素や窒素などです。そのため単体には金属結合するものも、共有結合するものもあります。しかし、イオン結合によってできる単体はありません。イオン結合は陽イオンと陰イオンの2種類以上の元素がするからですね。

単体としてよく出る元素の紹介

単体としてよく化学の教科書や試験に登場してくる元素をご紹介します。

宇宙で最も多い元素、水素

image by PIXTA / 24972278

元素番号1番の水素は無色・無味・無臭の気体で、常温で最も軽い分子です。水に溶けづらく、水上置換法によって集めることができます。水素は宇宙空間で最も多い元素で、太陽系に存在する元素の存在比を質量ベースで考えると3/4が水素なのです。

水素は水の電気分解や、亜鉛と塩酸や希硫酸を反応させることで得られます。水素はよく燃える物質であり、青白い炎を上げて燃えるのです。また、金属の酸化物や有機化合物を還元させることができます。

いろんな元素と化合、酸素

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酸素は水素と同様に、水の電気分解で得られます。酸素には助燃性があり、物質を燃やすために必要な物質です。そのため、火災の時には空気を遮断することで酸素の供給を止めることも有効な消火方法であり、窒息消火法と呼ばれています。

酸素は単体として空気中にある他、地中などに酸化物として多く存在している元素です。先ほど宇宙で一番多い元素は水素と説明しましたが、地表付近にある元素の割合では酸素が最も多く、45%以上になります。この地殻に存在する元素の質量の割合を示したものがクラーク数です。

1つの原子で分子となれる単原子分子、希ガス

通常、非金属元素は共有結合をして足りない電子を補い合いながら存在しています。しかし、18族に属する希ガスの元素は最外殻の電子殻に電子が入って安定した状態のため、あまり化合物を作りません、そんな希ガスは、原子1つで安定して分子のように存在できる単原子分子なのです。ちなみに単原子分子に対して2つの原子が結合したものを2原子分子、3つ以上の原子が結合したものを多原子分子と呼びます。

希ガスにはヘリウムアルゴンなどが分類されていて、無色・無臭の気体です。空気中にわずかに存在する希ガスには、興味深い特徴がたくさんあります。

希ガスの元素について詳しく知りたい方はこちらの記事を読んでくださいね。

\次のページで「単体と合わせて覚える同素体と同位体」を解説!/

単体と合わせて覚える同素体と同位体

1種類の元素からできている単体ですが、性質がすべて同じわけではありません。同じ単体の物質でも同素体同位体といって化学的、物理的性質が異なるものがあるのです。

同じ元素なのに見かけは全く違う?同素体

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同じ元素の単体でありながら全く異なる性質を持つ単体がいくつかあり、このような単体同士を同素体と呼びます。同素体の例としてよく出てくるのが硫黄、炭素、酸素、リン。この4つを元素記号からS(硫黄)C(炭素)O(酸素)P(リン)と暗記すると覚えやすいですね。

硫黄

硫黄には3つの同素体があり、それぞれ斜方硫黄単斜硫黄ゴム状硫黄と呼びます。斜方硫黄と単斜硫黄は同じS8と表される環状分子です。しかし、その構造は異なり斜方硫黄の方が安定していることから、放置すると単斜硫黄は斜方硫黄となります。そしてゴム状硫黄は硫黄原子がいくつも鎖状に連なった弾性のある物質で、Sxと表されるのです。

炭素

輝くダイヤモンドと鉛筆の芯に使われる黒鉛はどちらも炭素の同素体。憧れの宝石と普段何気なく使っている筆記用具が同じ元素と考えると面白いですね。さらに炭素にはフラーレンというサッカーボール状の同素体があり、C60、C70などいくつかの種類があります。

酸素

酸素O2は化学を学んだ人ならだれでも知っているでしょう。酸素の同素体がオゾンO3です。オゾンは酸素中で放電すると生成し、放置すると酸素に戻ります。オゾンといえば地球の周囲に存在して紫外線をカットしてくれるオゾン層がイメージしやすいですね。さらに、教科書にはほとんど出てきませんが酸素にはO4、O8という同素体があります。興味がある人は調べてみてくださいね。


リン

リンには数種類の同素体が存在しています。とくに有名なのがリン赤リン。黄リンは反応性に富み、猛毒の物質です。空気中で自然発火して十酸化四リンになるため、水中で保存します。この黄リンを空気から遮断して250℃で長時間加熱すると赤リンになるのです。同じリンの単体でもその性質は異なり、赤リンは自然発火せず毒性はありません。

重さが異なる同位体

原子は原子核電子からできています。そして原子核は正の電気を帯びた陽子と電気的に中性な中性子からできているのです。陽子と中性子の重さがほぼ同じなのに対して電子はほとんど無視できるほど軽いことから、原子の質量(質量数)は陽子と中性子の和となります。

陽子の数は元素ごとに決まっていますが、同じ元素でも中性子の数は異なることがあるのです。この中性子の数が異なり、重さが違う同じ種類の元素同士を同素体(アイソトープ)と呼びます。重さが異なるだけなので、同位体の化学的性質はほとんど変わりません。

例えば水素は質量数1のものが99.99%、質量数2のものが0.01%とわずかですが同位体が存在しています。

1種類の元素からできる単体

単体は化学を学ぶ時に基礎となる物質の分類から化学反応といろいろな場面で登場します。同じ単体でもその性質は様々なので自分で資料集などで確認してみてください。

また、同素体と同位体は結構紛らわしい内容です。用語の意味は正確に覚え、しっかりと練習問題を解いて理解を深めてくださいね。

" /> 3分で簡単「単体」!「単体」になるのはどんな元素?元家庭教師が説明! – Study-Z
化学

3分で簡単「単体」!「単体」になるのはどんな元素?元家庭教師が説明!

身の回りにある物質は大きく3つに分けられる。混合物と化合物、そして単体です。単体というのは1種類の元素だけでできている物質の事を指す。

単体の中にはその結合や結晶構造の違いから同じ原子の単体なのに全く見かけの違う物質になるものもある。そこで今回は単体になる元素について、周期表大好きリケジョのたかはしふみかが説明していきます。

ライター/たかはし ふみか

高校時代の試験対策はノートの見直しを重点的に行い、よく先生に質問に行っていた。しかしその割にテストの点数は残念だった化学部部員。国立大学工学部の化学系の大学院修了後は化学工場に勤める。大学生時代は家庭教師のバイトをしていて、勉強を教える楽しみを実感していた。

物質の分類をおさらい

物質の分類をおさらい

image by Study-Z編集部

単体の元素について学ぶ前に、単体や物質の分類についてのおさらいをしましょう。

身の回りの物は単体化合物という純物質からできています。そして、純物質が混ざって混合物ができているのです。

海水を例に考えてみましょう。海水塩化ナトリウムという化合物が混ざり合った混合物です。化合物は混合物に分離と精製の作業を行うことで比較的簡単に得ることができますが、単体を得るには物質を分解する必要がある場合もあります。海水の場合、煮詰めて蒸気を冷やせば水と塩化ナトリウムを得ることができますね。しかし、化合物である水から構成する水素と酸素を得るには、水を分解する必要があるのです。

また、空気も単体である酸素窒素、化合物である二酸化炭素が混合した混合物になります。ちなみに空気中で一番多いのは意外にも酸素ではなく窒素であることに注意してください。

1種類の元素からできているのが単体2種類以上の元素からできているのが化合物でこの2つを合わせて純物質と呼ぶこと。そして純物質が2つ以上混ざったものを混合物ということをまずはしっかり覚えてくださいね。

単体になる元素の特徴

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単体については理解できましたか?次は単体になる元素の特徴を確認していきましょう。

先ほど単体とは1種類の元素から成り立っている物質であることは説明しましたね。金属元素、非金属元素のどちらでも単体の物質なることができます。金属元素といえばナトリウムやカルシウム、金などのことで非金属元素といえば酸素や窒素などです。そのため単体には金属結合するものも、共有結合するものもあります。しかし、イオン結合によってできる単体はありません。イオン結合は陽イオンと陰イオンの2種類以上の元素がするからですね。

単体としてよく出る元素の紹介

単体としてよく化学の教科書や試験に登場してくる元素をご紹介します。

宇宙で最も多い元素、水素

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元素番号1番の水素は無色・無味・無臭の気体で、常温で最も軽い分子です。水に溶けづらく、水上置換法によって集めることができます。水素は宇宙空間で最も多い元素で、太陽系に存在する元素の存在比を質量ベースで考えると3/4が水素なのです。

水素は水の電気分解や、亜鉛と塩酸や希硫酸を反応させることで得られます。水素はよく燃える物質であり、青白い炎を上げて燃えるのです。また、金属の酸化物や有機化合物を還元させることができます。

いろんな元素と化合、酸素

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酸素は水素と同様に、水の電気分解で得られます。酸素には助燃性があり、物質を燃やすために必要な物質です。そのため、火災の時には空気を遮断することで酸素の供給を止めることも有効な消火方法であり、窒息消火法と呼ばれています。

酸素は単体として空気中にある他、地中などに酸化物として多く存在している元素です。先ほど宇宙で一番多い元素は水素と説明しましたが、地表付近にある元素の割合では酸素が最も多く、45%以上になります。この地殻に存在する元素の質量の割合を示したものがクラーク数です。

1つの原子で分子となれる単原子分子、希ガス

通常、非金属元素は共有結合をして足りない電子を補い合いながら存在しています。しかし、18族に属する希ガスの元素は最外殻の電子殻に電子が入って安定した状態のため、あまり化合物を作りません、そんな希ガスは、原子1つで安定して分子のように存在できる単原子分子なのです。ちなみに単原子分子に対して2つの原子が結合したものを2原子分子、3つ以上の原子が結合したものを多原子分子と呼びます。

希ガスにはヘリウムアルゴンなどが分類されていて、無色・無臭の気体です。空気中にわずかに存在する希ガスには、興味深い特徴がたくさんあります。

希ガスの元素について詳しく知りたい方はこちらの記事を読んでくださいね。

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