地球上にいる限り、当たり前のように存在する「空気」。目には見えず触ることも出来ないが、「空気」に重さの概念はあるのでしょうか?

空気の構成要素は、窒素が約8割、酸素が約2割、あとは二酸化炭素等が微量といった割合。窒素や酸素も質量があるのだから、それらで構成される「空気」も当然質量を持つ。

「空気の質量」は、いくつかの「気体の法則」を使って求めることができる。理系ライターのR175と一緒に解説していこう。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.空気の存在

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空気。目には見えず、触ることも出来ないが確かに「物質」として存在。「何もない」状態とは異なります。

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本当に何もない状態と空気がある状態

本当に何もない=完全真空状態です。宇宙中探し回れば、ひょっとしたら存在するかもしれません。

一方、空気がある状態=目に見えない「粒子」が無数に存在。動こうとしても然して邪魔されることもないため気になりませんが、実は常に無数の窒素や酸素に触れ続けています。

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目をつぶって水に潜ってみよう

空気があるところに居る=「何も見えないけれど、多数の粒子に囲まれている」そうは言われてもイメージしづらいもの。

実は、この「無数の粒子に囲まれている」状態は水中に居るのと同じ状態。空気に触れ居ている状態≒目をつぶって水中に居る状態。目をつぶっていれば水は見えません。持つことも出来ません。しかし、周りに何かが存在するのは確か

空気も同じで、持つことも触ることも出来せんが、確かに存在しているのです。

何かが存在している限り質量が存在するもの。

水が質量を持っているのと同じで空気も質量を持っています。

2.空気の構成

空気の成分は約8割が窒素、約2割が酸素。

ここでは空気を窒素:酸素=8:2の気体とみなしましょう。二酸化炭素等、他の気体も微量に含まれますが、質量計算への影響は少ないので無視しましょう。

仮に空気が1Lあったとしたら、0.8Lが窒素で、0.2Lが酸素。0.8Lの窒素と、0.2Lの酸素の質量を求めればそれらを合算して空気1Lの質量が求められます。

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3.気体の質量を求める方法

気体の体積が分かれば、質量を求めることができます。ただし、気体は同じ体積でも温度や圧力によって質量が変わってしまうもの。

同じ体積でも、ぎゅうぎゅうに圧縮した気体と、ほとんど圧縮していない気体では重さが異なるもの。

また、体積が同じでも温度が高いほど気体の密度が下がりますから質量が変わってきます。

そのあたりも考慮して計算していきましょう。

3-1.物質量

気体の「量」の定義

気体の質量を求めるのに用いる「物質量」についてここで簡単に解説しましょう。物質量は気体粒子の数の指標であり質量とは異なります。

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物質量を使う意義

気体粒子を質量だけで比較するのは不公平。例えば、ヘリウム1gとアルゴン1g。同じ1gでも元々軽いヘリウム1gの方が「気体の粒子数が多い」です。気体の量を比較するためには、「質量」ではなく「粒の数」で比較するのが適切。

*因みに、「原子」と「分子」どちらも指せるよう「粒」や「粒子」という言葉を使っています。

「粒の数」で扱いたいもの、原子や分子1つはあまりにも小さく扱いづらいもの。

例えば、

ヘリウム原子1粒→半径:0.14nm(ナノメータ(注1)、質量:6.65x10^(-24)g
アルゴン原子1粒→半径:0.188nm(ナノメータ(注1)、質量:6.63x10^(-23)g

注1):原子、分子の半径はファンデルワールス半径。小麦粉1粒の半径が10~40μm(マイクロメートル=1/1000m)程度と言われていますから、原子や分子1粒はその10万分の1以下の大きさとなります。

また、質量で出てくる10^(-24)。10^12が1兆なので10^(-12)は1兆分の1。10^(-24)は1兆分の1のさらに1兆分の1。もはや身近な単位ではありませんね。

1粒あたりだとあまりにも小さすぎて扱いずらい。そこで、物質量[mol]という指標を使うわけです。物質量1molは原子や分子の粒数6x 10^23個にあたります。

そして、1mol集めた時の質量が分子量。

分子量とは各原で決まっている数です。例えば、

ヘリウム:4.003、アルゴン:39.948

ヘリウムを1mol(6.02x10^23個)集めると4.003g、アルゴンを1mol(6.02x10^23個)集めると39.948gといった具合。扱いやすい単位になりましたね。

3-2.気体の状態方程式

3-2.気体の状態方程式

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気体の体積と圧力、温度と物質量の関係は分かっています。その関係式が気体の状態方程式。

PV=nRT

P:圧力、V:体積、n:物質量、R:気体定数、T:絶対温度

Rは定数ですから、気体の圧力、温度、体積が分かれば物質量nが求められます。ここで出てくるのは飽くまで「物質量」。質量を求めたい場合は、物質量から質量に変換します。

4.状態方程式から空気の質量を計算

気体の質量を計算するには、

手順1:状態方程式から物質量[mol]を算出。
手順2:物質量から質量を求める。

といった手順。

それでは、手順に従って空気1Lの質量を求めてみましょう。

空気1L=窒素0.8Lの質量+酸素0.2Lの質量と考えます。
手順1:まずは窒素、酸素の物質量(それぞれ、nN、nOとする)を求めましょう。


圧力Pは大気圧1.0x10^5[Pa]、絶対温度は300K(摂氏27℃)とします。
窒素に関する状態方程式は1.0x10^5[Pa]x0.0008x[m^3]=nNx8.3x300から、nN=0.032[mol]
手順2:出て来た物質量[mol]を質量[g]に換算。
28(窒素分子の原子量)x0.032=0.896g


酸素も同様に、1.0x10^5[Pa]x0.0002x[m^3]=nNx8.3x300から、nO=0.008[mol]
これを質量に換算すると、32(窒素分子の原子量)x0.008=0.256g
合計して、1Lの質量は窒素と酸素の質量を足して、0.896+0.256=1.152gと求めることが出来ますね。"

気体と言えばまず状態方程式

まずは、空気中=何もないではなく空気中≒水中とイメージしましょう。何かしらの粒子が存在するもの。

気体の質量を求めるためには、

まず状態方程式から物質量mol(気体粒子6.02x10^23個分が1mol)を算出。算出した物質量molから、質量を求めます。

空気は窒素が約8割、酸素が約2割。窒素と酸素の質量をそれぞれ求め、合算すれば空気の質量を求めることが可能。

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物理

気体の法則を使って計算しよう!「空気の質量」について理系ライターがわかりやすく解説

地球上にいる限り、当たり前のように存在する「空気」。目には見えず触ることも出来ないが、「空気」に重さの概念はあるのでしょうか?

空気の構成要素は、窒素が約8割、酸素が約2割、あとは二酸化炭素等が微量といった割合。窒素や酸素も質量があるのだから、それらで構成される「空気」も当然質量を持つ。

「空気の質量」は、いくつかの「気体の法則」を使って求めることができる。理系ライターのR175と一緒に解説していこう。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.空気の存在

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空気。目には見えず、触ることも出来ないが確かに「物質」として存在。「何もない」状態とは異なります。

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本当に何もない状態と空気がある状態

本当に何もない=完全真空状態です。宇宙中探し回れば、ひょっとしたら存在するかもしれません。

一方、空気がある状態=目に見えない「粒子」が無数に存在。動こうとしても然して邪魔されることもないため気になりませんが、実は常に無数の窒素や酸素に触れ続けています。

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目をつぶって水に潜ってみよう

空気があるところに居る=「何も見えないけれど、多数の粒子に囲まれている」そうは言われてもイメージしづらいもの。

実は、この「無数の粒子に囲まれている」状態は水中に居るのと同じ状態。空気に触れ居ている状態≒目をつぶって水中に居る状態。目をつぶっていれば水は見えません。持つことも出来ません。しかし、周りに何かが存在するのは確か

空気も同じで、持つことも触ることも出来せんが、確かに存在しているのです。

何かが存在している限り質量が存在するもの。

水が質量を持っているのと同じで空気も質量を持っています。

2.空気の構成

空気の成分は約8割が窒素、約2割が酸素。

ここでは空気を窒素:酸素=8:2の気体とみなしましょう。二酸化炭素等、他の気体も微量に含まれますが、質量計算への影響は少ないので無視しましょう。

仮に空気が1Lあったとしたら、0.8Lが窒素で、0.2Lが酸素。0.8Lの窒素と、0.2Lの酸素の質量を求めればそれらを合算して空気1Lの質量が求められます。

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