「彼はエネルギッシュだ」、「省エネモード」、「エナジードリンク」。「エネルギー」という言葉についてあなたはどんなイメージを持っているでしょうか?

「力」が近いニュアンス?「エネルギッシュ→力がみなぎる」「省エネ→あまり力を使っていない」「エナジードリンク→力が湧いてくる」

いい線をついているが、エネルギ=力ではない。この記事では、「単位」に注目して、「エネルギー」と「力」の違いを理系ライターのR175が解説する。

ライター/R175

理科教員を目指す20代。エンジニアの経験もあり、理科の内容を身近な現象に結び付けて人に説明するのが好き。

1.エネルギーの概念

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「エネルギーが切れた」と「力尽きた」

「みなぎるエネルギー」と「みなぎる力」

「エネルギッシュ」と「パワフル」

上記は大体同じ意味で使いますよね。理科に関して深入りしない限り、「エネルギー」と「力」の違いはさほど気にしなくてよさそうです。両者はどこがどう違うのでしょうか?

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100m走とマラソン

100m走とマラソンどっちがエネルギーが必要でしょうか?マラソンは100mより速度が遅いため、一瞬一瞬それほど力は要りません。マラソンがスピード化の時代となった現在でも、さずがに100m走ほどの力は要りません。しかし、その運動を何時間も繰り返し。それは疲れますね(エネルギーが必要)。

一方、100m走ではマラソンより速く走るため、「大きな力」が要りますね。ただ、力が必要なのは短時間

以上の理屈から考えると、「力」と「エネルギー」は別物

「力」は一瞬一瞬の力を指しますが、エネルギーは「どれだけの時間」or「どれだけの距離」だけ作用したかというあたりの概念が入ってきますね。

2.力の物理的な意味

前項で「力は一瞬、エネルギーは積算」と言葉で説明しました。力とエネルギーの違いを理解するために、ここではまず物理的な定義を見ていきます。

\次のページで「力の単位「N(ニュートン)」を解説!/

力の単位「N(ニュートン)

まず最初に力の単位から。力の単位「N(ニュートン)」の中身は何でしょうか?

N(ニュートン)という単位は、実は他の単位の組み合わせ。別の表記があるのです。

力を求める時は運動方程式を使いますね。F=Ma(力=質量x加速度)。力は「量物mの物体にaだけ加速度を与えられる」という定義。

上記の式から力の単位[N、ニュートン]は質量[kg)]x加速度[m/s^2]の単位に等しいので、N=kgm/s^2ということが分かります。

3.エネルギーの物理的意味

続いて、エネルギーの単位はを見ていきましょう。

エネルギーの単位と言えば、「J(ジュール)」とか「Cal(カロリー)」。これらは熱量や電力量を表す単位としても使用されるもの。

1Cal(カロリー)はおよそ4.2J(ジュール)。このJ(ジュール)やCal(カロリー)の正体は何でしょうか。

エネルギーの単位「J(ジュール)」「Cal(カロリー)」

力のN(ニュートン)の正体はkg・m/s^2でした。

同様に、J(ジュール)もkg(キログラム)やm(メーター)、s(秒)の組み合わせなのです。

エネルギーは「仕事」という名前も持っています。「労働のこと?」「違います」

物理で言う「仕事」はどれだけの力でどれくらいの距離を移動させたかの指標。

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荷運び労働

さて、「仕事(=エネルギー)」が分かりやすい例を紹介しましょう。

Aさん質量5kgの荷物を1階から4階まで運搬(高低差9m)。

Bさん質量10kgの荷物を1階から2階まで運搬(高低差3m)

この時、AさんとBさんどちらが大きな「仕事」をしていますか?計算してみましょう。

物理で言う仕事

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先ほどの例で見ると、荷運びのしんどさは「荷物の重さ」と「高低差」どちらも効いてきそうですね。

そんな場合は、「重さ」x「高低差」を「仕事」と定義してやればよさそうですね。重さが2倍なら2倍しんどいし、高低差2倍でも2倍しんどい。うなずけますね。

ここで、

重さは=荷物にかかる重力→力
高低差は→力の方向に移動させた距離

と言い換えましょう。

すると、仕事=重さx高低差→力x力をかけて移動させた距離

荷物を上階に持ち上げる場合以外にも、一般に力をかけて移動させた場合にも当てはめられますね。

エネルギー=仕事=力x力をかけた距離から
エネルギーの単位J[ジュール]=N(ニュートン)x m(メーター)。

Aさんは、5kgの荷物の重量分の力49Nを9mかけたので仕事は49x9=441Nm=441J=105Cal=0.105kCal(キロカロリー)。

Bさんは、10kg=98Nで3m移動させたので、294J=70Cal=0.07kCal(キロカロリー)。

このkCal(キロカロリー)は、食事の摂取カロリーや、運動での消費カロリーで最近おなじみの単位。

驚いたことに、荷運びをしても、1kCal未満のエネルギーしか出力していません。

人間の筋肉の熱効率(消費カロリーから力学エネルギーになる率)は20~30%ですから、出力エネルギーの3~5倍のエネルギーを消費していますが、それでも1kCalにも満たない計算。

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4.「仕事」と「熱量」、「電力量」のジュール

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結論から言うと、仕事、熱量、電力量はすべて同じ。電力量や熱量が「仕事量」と一致するよう定義されています。

仕事=力x移動させた距離。1Nの力で1m移動させたら1[J]。ここの定義がちがち。

熱量や電力量はこの「仕事」と一致するよう、つじつまが合わせれています

1Jの熱エネルギーは、仮にその熱をすべて力に変換できたとしたら、1Nの力で1m移動させるだけのパワーがあるという意味。

同様に、1Jの電気エネルギーも、仮にその電力をすべて力に変えた場合、1Nの力をかけて1m移動させられますよという意味です。

また、1Nで1m移動させる力をすべて熱に変換できたら、1J(ジュール)分の加熱が可能、温度が上がっていきます。

J(ジュール)の定義のつじつまが合わせてあるので、力学エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギー。複数の種類のエネルギー換算が簡単にできて便利ですね。

一瞬か積算

力の単位=[N]

エネルギーの単位[Nm]

力は、一瞬一瞬どれだけ頑張ているかの指標。一方エネルギーは、力に距離をかけたもの。どれだけの距離だけ頑張ったかという指標が入ってきます。

" /> これで明確「エネルギー」と「力」の違い。両者の単位を使って理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
物理物理学・力学理科

これで明確「エネルギー」と「力」の違い。両者の単位を使って理系ライターがわかりやすく解説

「彼はエネルギッシュだ」、「省エネモード」、「エナジードリンク」。「エネルギー」という言葉についてあなたはどんなイメージを持っているでしょうか?

「力」が近いニュアンス?「エネルギッシュ→力がみなぎる」「省エネ→あまり力を使っていない」「エナジードリンク→力が湧いてくる」

いい線をついているが、エネルギ=力ではない。この記事では、「単位」に注目して、「エネルギー」と「力」の違いを理系ライターのR175が解説する。

ライター/R175

理科教員を目指す20代。エンジニアの経験もあり、理科の内容を身近な現象に結び付けて人に説明するのが好き。

1.エネルギーの概念

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「エネルギーが切れた」と「力尽きた」

「みなぎるエネルギー」と「みなぎる力」

「エネルギッシュ」と「パワフル」

上記は大体同じ意味で使いますよね。理科に関して深入りしない限り、「エネルギー」と「力」の違いはさほど気にしなくてよさそうです。両者はどこがどう違うのでしょうか?

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100m走とマラソン

100m走とマラソンどっちがエネルギーが必要でしょうか?マラソンは100mより速度が遅いため、一瞬一瞬それほど力は要りません。マラソンがスピード化の時代となった現在でも、さずがに100m走ほどの力は要りません。しかし、その運動を何時間も繰り返し。それは疲れますね(エネルギーが必要)。

一方、100m走ではマラソンより速く走るため、「大きな力」が要りますね。ただ、力が必要なのは短時間

以上の理屈から考えると、「力」と「エネルギー」は別物

「力」は一瞬一瞬の力を指しますが、エネルギーは「どれだけの時間」or「どれだけの距離」だけ作用したかというあたりの概念が入ってきますね。

2.力の物理的な意味

前項で「力は一瞬、エネルギーは積算」と言葉で説明しました。力とエネルギーの違いを理解するために、ここではまず物理的な定義を見ていきます。

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