今回は、流体力学で学習する「ベルヌーイの法則(定理)」というエネルギー保存則について解説していきます。

「ベルヌーイの法則」は、流体力学の基礎的な公式でありながら、多くの物理現象に適応できる。このことから、流体力学の学習をすると、「ベルヌーイの法則」が何度も登場する。ぜひとも、この機会に「ベルヌーイの法則」をマスターしてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

ベルヌーイの法則とは?

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ベルヌーイの法則は、流体力学を学ぶ上で避けて通ることのできない重要公式の1つです。ベルヌーイの定理と呼ばれることもあります。また、ベルヌーイの法則は、ダムの設計や配管の設計などの計算に応用することもあり、私たち人間の科学技術を支える式でもあるのです。その他にも、大気汚染のシミュレーションや天気予報に応用されることもありますよ。

ベルヌーイの法則は、流体力学におけるエネルギー保存則のことを指します。そのため、式の形は力学で登場する力学的エネルギー保存則と非常に似ているのです。そして、力学的エネルギー保存の法則と同様に、適応条件が存在します。つまり、ベルヌーイの法則はいつでも使える式ではないということです。この記事では、例題を交えながら、ベルヌーイの法則の使い方を中心に解説していきます。

ベルヌーイの法則について詳しく解説!

ベルヌーイの法則について詳しく解説!

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ここからはベルヌーイの法則について詳しく解説していきます。

ベルヌーイの法則を式で表そう

ベルヌーイの法則を式で表現すると、h+v2/2g+p/ρg=(一定)となります。各項の単位はすべてmです。1つ目の項であるhを位置水頭(位置ヘッド)、2つ目の項であるv2/2gを速度水頭(速度ヘッド)、3つ目の項であるp/ρgを圧力水頭(圧力ヘッド)と呼びます。

位置水頭は、位置エネルギーに関係する値です。力学的エネルギー保存則の場合と同じように、位置エネルギーを考えるときに、基準水平面を設定する必要があるので注意しましょう。同様に、速度水頭は運動エネルギー、圧力水頭は圧力エネルギーに関係する値となりますよ。

また、場合によっては、各項の単位をエネルギーのJや圧力のPaに統一して表現します。このとき、両辺にいくつかの文字がかけられ、式の形が微妙に変わるので気を付けましょう。

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ベルヌーイの法則の適応条件は?

ベルヌーイの法則の適応条件についても確認しておきましょう。「重力の大きさは一定」「保存力以外が作用しない」という点は、力学的エネルギー保存則と全く同じです。保存力とは、重力、万有引力、クーロン力などのことを指します。摩擦力や空気抵抗は保存力ではありません。

ベルヌーイの法則は、これに「流体は非粘性かつ非圧縮性」「定常流である」「同一流線上で考えるor渦なし流れである」ということが加わります。非粘性流体とはサラサラとした流体のことで、水、アルコール、多くの気体などが該当しますね。一方、マヨネーズやケチャップのようなドロドロした液体は粘性流体と呼びます。

非圧縮性流体は、流体中の粒子の体積が変化しないものを表していますよ。つまり、流体の密度が変化しないということですね。そして、定常流とは、全体で流体の量や流速が変化しない流れのことですよ。雨が降っていないときの川の流れのイメージに近いですね。

また、流線とは流体中の粒子を追ったときの軌跡のようなものです。ベルヌーイの法則は、原則、同じ流線の上で成り立ちます。ただし、渦をまいていない流れの場合は、流体中のどの場所でもベルヌーイの法則が成立するのです。

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ベルヌーイの法則を使って問題を解こう!

ベルヌーイの法則を使って問題を解こう!

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では、ベルヌーイの法則を使って問題を解いてみましょう!「図はダムの断面を表している。ダムでは放水を行っており、放水管から水面までの高さはH(m)とする。放水管における水の流速V(m/s)を求めよ。重力加速はg(m/s2)とする。ただし、水の粘性、圧縮性および摩擦力は考慮しない。」という問題です。

1.位置水頭、速度水頭、圧力水頭を求める

1.位置水頭、速度水頭、圧力水頭を求める

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今回は、ダムの水面と放水管内部に注目して、問題を解いていきます。では最初に、これら2つの場所における位置水頭、速度水頭、圧力水頭を求めましょう。基準水平面は、放水管のある高さに設定しますね。

ダムの水面は基準水平面からH(m)の場所にあります。ゆえに位置水頭はH(m)です。また、ダムの水面が降下する速さは非常にゆっくりとしています。このことからダム水面における流速は0(m/s)に近似できるのです。したがって、速度水頭は0(m)となります。さらに、ダム水面にかかる圧力は大気圧に等しいことから、大気圧をp0(Pa)とすると圧力水頭はp0/ρg(m)です。

続いて、放水管内部についても考えましょう。放水管のある高さを基準水平面に設定したので、位置水頭は0(m)です。速度水頭は、V2/2gとなります。そして、放水管内部にかかる圧力も大気圧に等しいと考えられるので、圧力水頭はp0/ρg(m)ですね。

2.方程式を立てる

2.方程式を立てる

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次に、ベルヌーイの法則を利用して、方程式を立てます。問題文に、「水の粘性、圧縮性および摩擦力は考慮しない」という記述があり、ベルヌーイの法則の適応条件を満たしていますよね。ベルヌーイの定理によれば、位置水頭、速度水頭、圧力水頭の和は一定です

ゆえに、H+0+p0/ρg=0+V2/2g+p0/ρgという式が成立します。この式をVについて解くと、V=√2gH(m/s)となりますね。これで問題を解くことができました!

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ベルヌーイの法則をマスターしよう

ベルヌーイの法則は適応条件が複雑で、慣れるまではどの問題でベルヌーイの法則を利用すればよいか分かりません。それゆえ、ベルヌーイの法則で、流体力学の学習につまづいてしまったという方も少なくないと思います。ですが、ベルヌーイの法則をマスターすると、解ける問題の幅が大きく広がり、流体力学の学習も楽しくなってくるのです。「あきらめようかな」と思っても、もうひと踏ん張りしてみましょう。

ベルヌーイの法則をマスターできれば、流体力学の理解はより深くなりますよ!

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流体力学物理理科

簡単でわかりやすい「ベルヌーイの法則(定理)」!流体力学の基礎を理系学生ライターが3分で詳しく解説!

今回は、流体力学で学習する「ベルヌーイの法則(定理)」というエネルギー保存則について解説していきます。

「ベルヌーイの法則」は、流体力学の基礎的な公式でありながら、多くの物理現象に適応できる。このことから、流体力学の学習をすると、「ベルヌーイの法則」が何度も登場する。ぜひとも、この機会に「ベルヌーイの法則」をマスターしてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

ベルヌーイの法則とは?

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ベルヌーイの法則は、流体力学を学ぶ上で避けて通ることのできない重要公式の1つです。ベルヌーイの定理と呼ばれることもあります。また、ベルヌーイの法則は、ダムの設計や配管の設計などの計算に応用することもあり、私たち人間の科学技術を支える式でもあるのです。その他にも、大気汚染のシミュレーションや天気予報に応用されることもありますよ。

ベルヌーイの法則は、流体力学におけるエネルギー保存則のことを指します。そのため、式の形は力学で登場する力学的エネルギー保存則と非常に似ているのです。そして、力学的エネルギー保存の法則と同様に、適応条件が存在します。つまり、ベルヌーイの法則はいつでも使える式ではないということです。この記事では、例題を交えながら、ベルヌーイの法則の使い方を中心に解説していきます。

ベルヌーイの法則について詳しく解説!

ベルヌーイの法則について詳しく解説!

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ここからはベルヌーイの法則について詳しく解説していきます。

ベルヌーイの法則を式で表そう

ベルヌーイの法則を式で表現すると、h+v2/2g+p/ρg=(一定)となります。各項の単位はすべてmです。1つ目の項であるhを位置水頭(位置ヘッド)、2つ目の項であるv2/2gを速度水頭(速度ヘッド)、3つ目の項であるp/ρgを圧力水頭(圧力ヘッド)と呼びます。

位置水頭は、位置エネルギーに関係する値です。力学的エネルギー保存則の場合と同じように、位置エネルギーを考えるときに、基準水平面を設定する必要があるので注意しましょう。同様に、速度水頭は運動エネルギー、圧力水頭は圧力エネルギーに関係する値となりますよ。

また、場合によっては、各項の単位をエネルギーのJや圧力のPaに統一して表現します。このとき、両辺にいくつかの文字がかけられ、式の形が微妙に変わるので気を付けましょう。

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