「非金属元素」と聞いてまず最初に思い浮かべるものは、何だ?

炭素や水素、酸素といった元素ですね。これらの元素はすべて、お前たちの身の回りに多く存在している、身近な元素です。

今回は、この身近な非金属元素の性質について解説してくれる、実験大好き未来の科学者ライターHaruを呼んです。お前ら、しっかり聞けよ!

ライター/Haru

化学グランプリに挑戦した経験もある、実験が大好きな学生ライター。子どもの頃、元素周期表をポケモンと一緒に覚えてから、物質を見ると化学式が一緒に見えてくる生活を送っている。アインシュタインとニュートンを尊敬しており、彼らの偉業や化学の面白さを分かりやすく伝えていきたい。将来は研究員になって実験を生業とするのが夢。

非金属元素の定義とは

Simple Periodic Table Chart-en.svg
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はじめに、まず「非金属元素」を定義しましょう。

非金属元素をシンプルに定義すると、「金属の性質を持っていない元素」のことになります。

電気を通すグラファイト(炭素)など、例外はあるのですが、基本的には非金属元素は、「金属性」である

・展性
・延性
・電気伝導性
・金属光沢

などを持っていません。

非金属元素の特徴

そして、非金属元素の特徴には、以下のようにいろいろあります。

1.陰性が強い

1.陰性が強い

image by Study-Z編集部

まず1つ目の特徴は、陰性が強いことです。陰性とは何か、ということをはじめにご紹介しましょう。

陰性とは、「原子の陰イオンになりやすい性質」のことです。

例えば、原子番号9番の元素であるフッ素は、1個の電子を放出して1価の陰イオンになることができます。

このフッ素の属する第17族の電子群を「ハロゲン元素」といい、これに含まれる6元素は全て、フッ素と同じように1価の陰イオンになりやすい性質を持っているのです。

このように、陰イオンになりやすい性質を陰性といい、水素と貴ガス以外は陰性が強いことを覚えておきましょう。

1族元素に属する水素は陽イオンになりやすい性質を持ち、18族元素である「希ガス」は、そもそもイオン化しにくいので例外となります。

\次のページで「2.非金属元素は電気を通しにくい」を解説!/

2.非金属元素は電気を通しにくい

image by iStockphoto

非金属元素は、前述の通りグラファイトなどの例外もあるものの、電気を通しにくい性質を持っています。

その理由は、自由電子を持っていないから。

では、自由電子とはいったい何なのか?

自由電子とは、結合している原子間の軌道を自由に動ける電子のことで、自由電子があれば電気が流れるというわけです。

この自由電子が特定の向きに動くことによって「電気が流れる」という現象が起こるものの、この自由電子は金属元素しか持っていません。

非金属元素はこれを持っていないために電気を通すことが出来ないのです。

3.非金属どうしの結合は共有結合になる

非金属元素どうしは共有結合によって結合をなします。

そもそも、共有結合とイオン結合の区別は原子間の電気陰性度によって行われ、結合している原子の間の電気陰性度の差が大体1.7よりも大きければイオン結合、小さければ共有結合に分類されるのです。

実際に例を挙げてみると、塩化ナトリウム。

塩素とナトリウムの結合によって成り立っていますが、塩素の電気陰性度は3.2、対してナトリウムの電気陰性度0.9です。

この2つの原子間の電気陰性度は2.3と、1.7よりも大きい値になるため、塩化ナトリウムの結合様式はイオン結合に分類されます。

一方、二酸化炭素の場合を見てみると、炭素の電気陰性度は2.6、酸素の電気陰性度は3.4なので、2つの原子間の電気陰性度の差は0.8と、1.7より小さい値になるので、二酸化炭素分子内の炭素と酸素の結合は共有結合に分類されるのです。

このように、結合がイオン結合なのか共有結合なのかは、原子間の電気陰性度の差によって決まることを覚えておきましょう。

電気陰性度は何で決定されるのか?

それでは、電気陰性度は何によって決まるのでしょうか?

それは、イオン化エネルギー電子親和力という2つの値です。

電気陰性度は、イオン化エネルギーと電子親和力の和に比例することが知られています。

そのため、イオン化エネルギーや電子親和力が大きいほど電気陰性度が大きいということができるのです。

電気陰性度を決定する「イオン化エネルギー」と「電子親和力」とは

「イオン化エネルギー」と「電子親和力」は、電気陰性度の大きさに大きく関わるエネルギーです。

この章では、この2つのエネルギーの詳細な定義を説明しましょう。

1.イオン化エネルギーの定義とは

First ionization energies.png
CC 表示-継承 3.0, リンク

イオン化エネルギー(厳密には第一イオン化エネルギー)とは、気体状態の原子から電子を1つ取り払って1価の陽イオンを作るのに必要なエネルギーのことをいいます。

常温で固体の元素でも気体状態で考えなければならないことに注意です。

つまり、イオン化エネルギーとは、原子を陽イオンに変えるのに必要なエネルギーであるため、このエネルギーの値が小さいほど原子は陽イオンになりやすいという事になります。

非金属元素は、ほとんどは陰性が強いもので陽イオンになりにくいため、イオン化エネルギーの値が大きい傾向にあるということです。

\次のページで「2.電子親和力の定義とは」を解説!/

2.電子親和力の定義とは

電子親和力とは、原子が電子を1つ受け取って、1価の陰イオンになった時に放出するエネルギーの値です。

ここで、陰性の高い非金属原子は電子親和力が大きいのか否かを考えるにあたって、注目しなければならないのは原子の状態でしょう。

まず、エネルギーの高い不安定な物質は、エネルギーの低い安定した物質になろうとします。

これは物理の大原則ですね。

原子と陰イオンでは、エネルギーを放出する前の原子よりも、エネルギーを放出した後の陰イオンの方が安定しているといえます。

ここで、電子親和力の大きさについて考えると、このエネルギーが大きいほど、イオン化前の原子は不安定な状態だったという事になるのです。

原子が不安定であれば、陰イオンになって安定しようとする性質も強くなるので、電子親和力が大きければ陰性が強いという相関関係が導き出せます。

これらが非金属元素では、実際に、どうなっているのか

これらの情報をいったん整理すると、電気陰性度はイオン化エネルギーと電子親和力が大きいほど大きい値を取る陰性の強い非金属元素はイオン化エネルギーと電子親和力がともに大きい、という2点が重要な要素です。

この2つを踏まえると、非金属原子はイオン化エネルギー、電子親和力がともに大きいので電子親和力も大きいということができます。

なので、非金属同士の結合は、どの原子も電気陰性度がそれなりに大きいため、原子間の電気陰性度の差が出にくく、共有結合になりやすいのです。

非金属元素と私たちを取り巻く環境

image by iStockphoto

非金属元素は私たちを取り巻く環境にも多く存在します。

例えば、今立っている地面は、その約50%は酸素、26%はケイ素で出来ており、非金属元素の占める割合が大きいです。

また、私たちの体内の元素の存在比を見てみると、65%は酸素、18%は炭素、10%は水素と、やはり非金属元素がその大部分を占めています

しかしこの地球は、その組成の60%以上が鉄、次に多いのがアルミニウム。

実は、地球の大部分は金属元素で出来ているのです。

ではなぜ、私たちの身の回りは非金属元素があふれているのでしょうか?

その理由は、非金属元素には、はるか太古から、地球の形成と深い結び付きがあるから。

その結び付きとは、金属元素の大部分が地球の内部に埋まってしまっていることにあります。

非金属元素と我々生命体

非金属元素と我々生命体は密接にかかわっています。

私たちの普段の食事を見ても、タンパク質デンプン脂肪など、非金属元素が多く含まれる有機化合物を摂取しているでしょう。

私たちの生命が維持される所以には、非金属元素のはたらきが、大きく関わっていますね。

" /> 生命の維持を支えてきた「非金属元素」を未来の科学者ライターが分かりやすくわかりやすく解説 – Study-Z
化学

生命の維持を支えてきた「非金属元素」を未来の科学者ライターが分かりやすくわかりやすく解説

「非金属元素」と聞いてまず最初に思い浮かべるものは、何だ?

炭素や水素、酸素といった元素ですね。これらの元素はすべて、お前たちの身の回りに多く存在している、身近な元素です。

今回は、この身近な非金属元素の性質について解説してくれる、実験大好き未来の科学者ライターHaruを呼んです。お前ら、しっかり聞けよ!

ライター/Haru

化学グランプリに挑戦した経験もある、実験が大好きな学生ライター。子どもの頃、元素周期表をポケモンと一緒に覚えてから、物質を見ると化学式が一緒に見えてくる生活を送っている。アインシュタインとニュートンを尊敬しており、彼らの偉業や化学の面白さを分かりやすく伝えていきたい。将来は研究員になって実験を生業とするのが夢。

非金属元素の定義とは

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はじめに、まず「非金属元素」を定義しましょう。

非金属元素をシンプルに定義すると、「金属の性質を持っていない元素」のことになります。

電気を通すグラファイト(炭素)など、例外はあるのですが、基本的には非金属元素は、「金属性」である

・展性
・延性
・電気伝導性
・金属光沢

などを持っていません。

非金属元素の特徴

そして、非金属元素の特徴には、以下のようにいろいろあります。

1.陰性が強い

1.陰性が強い

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まず1つ目の特徴は、陰性が強いことです。陰性とは何か、ということをはじめにご紹介しましょう。

陰性とは、「原子の陰イオンになりやすい性質」のことです。

例えば、原子番号9番の元素であるフッ素は、1個の電子を放出して1価の陰イオンになることができます。

このフッ素の属する第17族の電子群を「ハロゲン元素」といい、これに含まれる6元素は全て、フッ素と同じように1価の陰イオンになりやすい性質を持っているのです。

このように、陰イオンになりやすい性質を陰性といい、水素と貴ガス以外は陰性が強いことを覚えておきましょう。

1族元素に属する水素は陽イオンになりやすい性質を持ち、18族元素である「希ガス」は、そもそもイオン化しにくいので例外となります。

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