今回は、気体の温度と体積に関する法則「シャルルの法則」について解説する。

シャルルの法則に関する現象と言えば、「自転車のタイヤが冬になると突然ぺちゃんこになる」「夏は弾んでいたボールが涼しくなると、ぺちゃんこ」など。読者の皆も経験あるかな?

一言で言うと、空気の体積と温度が比例するという現象。理系ライターR175と一緒に解説していきます。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.温めると膨張、冷めるとしぼむ

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冬になったら突如ボールがぺちゃんこ。「劣化してダメになっちゃたのかな?」そう心配する人も多いもの。

しかし多くの場合、劣化が原因ではなく、「温度の変化」が原因なのです。

2.シャルルの法則とは

温度と体積は比例

本記事のテーマ「ボイルの法則」は一言でいうと、「温度と体積は比例」

気体の圧力が一定の時、絶対温度をT、体積をVとすると、V/T=一定。

2-1.圧力一定ってどんな状態?

2-1.圧力一定ってどんな状態?

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想像してみてください。空気をたくさん入れたり、温めたりしても圧力が変わらないボールを。そう、それはふわふわ柔らかボールです。空気が増えたり、温度が上がったりして、「膨らみたくなったら好きなだけ膨らめる」状態

\次のページで「2-2.逆に、圧力が一定でない状態は?」を解説!/

2-2.逆に、圧力が一定でない状態は?

圧力が一定でない=自由に膨らめない状態とイメージしましょう。硬くて膨張できないボールのような状態。自由に膨らめないので、膨らまさそうとするとどんどん内圧が上がります。

3.状態方程式との関連

3.状態方程式との関連

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理想気体の状態方程式なるものと、シャルルの法則の関係を見ていきましょう。

状態方程式:PV=nRT

P:圧力、V:体積、n:気体の物質量、R:モル気体定数、T:気体の絶対温度

シャルルの法則では圧力一定としていますから、P=一定。気体の物質量を変える話は出てこないのでnも一定。Rは元々定数なので一定。

定数xV=定数xT

V/T=定数/定数=定数。シャルルの法則の形に変形できました。

このように、気体の状態方程式からも「圧力一定なら、温度と体積が比例する」ということを確認できます。シャルルの法則の公式を使う問題を、状態方程式を利用して解くことも可能。

4.温度と体積が比例する理由

「気体は温かくなると膨張」。これだけでも直感的にうなずけますが、もう少し深掘っていきましょう。

そもそも気体の温度とは?

温度=気体の熱のことですね。では、熱とは?熱の単位はジュール[J]、つまり熱はエネルギー、気体粒子の熱運動によるエネルギーなのです。

たどっていくと、温度=気体のエネルギーの指標となります。そして、絶対温度Tは気体のエネルギーに比例するように定義されているもの。

もし、絶対温度T=0Kなら、気体のエネルギーは0(全く熱運動していない状態)。絶対温度Tが2倍になれば、エネルギーも2倍。

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温度が高いほど、エネルギーが大きい=気体粒子(原子や分子)の運動が激しいわけですから、スペースをたくさん必要とするもの。

例えば、絶対温度が2倍になると、2倍激しく動きます。気体同士がぶつかる確率が2倍になるので、体積が同じままだと圧力が2倍になるのです。

圧力(=ぶつかる頻度)を据え置くためには、気体粒子の密度を半分=気体粒子の個数は同じでスペース(体積)を2倍にする必要があります。

以上より、圧力が一定の場合、絶対温度と体積が比例することが確認できました。

\次のページで「5.シャルルの法則を使ってみよう」を解説!/

5.シャルルの法則を使ってみよう

5.シャルルの法則を使ってみよう

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まず、温度と体積の関係をグラフにしてみましょう。

理想気体の圧力を一定に保った時の温度と体積の関係として正しいのは、イラストA~Cのうちどれでしょうか?以下の選択肢から、正しいものを選びながら考えてみましょう。

温度が高くなると、気体の(問1  ア.比重 イ.エネルギー ウ.濃度)が大きくなり、熱運動が激しくなり、お互いぶつかる頻度を一定にするためには(問2 ア.圧力 イ.体積)を増やす必要があります。つまり、温度と体積は(問3 ア.比例 イ.反比例)するので、A~Cのうち正解は(問4)。

解答

問1
そもそも温度は、熱運動によるエネルギーの指標正解はイ。温度が上がるほど。気体粒子同士の間隔が広がりますので、アの比重や、ウの濃度は温度が高くなると、むしろ小さくなる方向にいきます。

問2
お互いぶつかる頻度=圧力。温度が高くなると、ぶつかりやすくなるもの。ぶつかる頻度を保つためには、体積を大きくして広々と分布させる必要があるのです。正解はイ。

問3、問4
問2の文脈から、温度と体積は比例。そしてそれに該当するグラフはC

5-1.暖房で風船を膨らませる

 気温7℃の時、体積が100ccだった風船を室温27℃の部屋に持ち込み、風船内の空気とが室温と同じになるまで放置。

このとき風船の体積はいくらになっていますか。

ただし、風船内の空気の圧力は一定とし、放置している間に空気は漏れないものとし、気温7℃=280K、気温27℃=300Kとします。

解答

題意をシャルルの法則に当てはめましょう。

体積/絶対温度が一定なので求めたい体積をVとおくと、100cc/280K=V/300K。これよりV=107cc。

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5-2.風船が割れない温度設定

 体積が110ccを超えると割れる風船があります。気温-3℃の屋外で100ccまで膨らませ、暖房の効いた屋内に持ち込むとしましょう。屋内にしばらく風船を放置しても割れないようにするには、室温を何℃までにする必要がありますか?

ただし、風船内の空気の圧力は一定とし、放置している間に空気は漏れないものとし、気温-3℃=270K、セルシウス温度=絶対温度[K] – 273とします。

解答

今度は絶対温度を求める問題。求めたい絶対温度をTとして、題意をシャルルの法則に当てはめると、100cc/270K=110/TからT=297K。これをセルシウス温度に変換すると297-273=24℃。室温24℃までなら割れませんね。

動きが激しいほどスペースが必要

シャルルの法則は、圧力が一定の時、絶対温度と体積が比例するという内容。「動きが激しいほどスペースが必要」と覚えておきましょう。

まず、

圧力=気体粒子同士のぶつかる頻度

絶対温度=気体の動きの激しさ

とイメージしましょう。絶対温度が高いほど、気体の動きが激しいため、ぶつかりやすいもの。ぶつかる頻度(圧力)を保つためには、スペース(体積)を広げる必要がありますから、絶対温度と体積は比例するのです。

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化学

温めると膨張「シャルルの法則」について理系ライターがわかりやすく解説

今回は、気体の温度と体積に関する法則「シャルルの法則」について解説する。

シャルルの法則に関する現象と言えば、「自転車のタイヤが冬になると突然ぺちゃんこになる」「夏は弾んでいたボールが涼しくなると、ぺちゃんこ」など。読者の皆も経験あるかな?

一言で言うと、空気の体積と温度が比例するという現象。理系ライターR175と一緒に解説していきます。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.温めると膨張、冷めるとしぼむ

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冬になったら突如ボールがぺちゃんこ。「劣化してダメになっちゃたのかな?」そう心配する人も多いもの。

しかし多くの場合、劣化が原因ではなく、「温度の変化」が原因なのです。

2.シャルルの法則とは

温度と体積は比例

本記事のテーマ「ボイルの法則」は一言でいうと、「温度と体積は比例」

気体の圧力が一定の時、絶対温度をT、体積をVとすると、V/T=一定。

2-1.圧力一定ってどんな状態?

2-1.圧力一定ってどんな状態?

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想像してみてください。空気をたくさん入れたり、温めたりしても圧力が変わらないボールを。そう、それはふわふわ柔らかボールです。空気が増えたり、温度が上がったりして、「膨らみたくなったら好きなだけ膨らめる」状態

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