「まことしやか」(漢字:「実しやか」)という言葉は、「まことしやかにささやかれる」などの形でよく使われています。

よく耳にする言葉ではありますが、意味を誤解してしまっている人も実は多いようです。また、具体的にはどのような使い方をするのか、また他の言葉で言い換えるにはどのような言い方をすることができるのか、中には疑問を抱いている方もいるかもしれません。

そこで、ここでは、「まことしやか」の意味と使い方・例文・類義語などを、法律事務所の事務職として、弁護士が作成した文書の校正やマニュアル改訂作業を行った経験を持つ筆者が解説します。

「まことしやか」の意味と使い方・例文・類義語

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それでは、以下に「まことしやか」の意味と使い方・例文・類義語について説明します。

「まことしやか」の意味は?

まず、「まことしやか」を辞書で引くと以下のように解説されています。

いかにも本当らしく言うさま。

 

出典:広辞苑 第6版(発行所 株式会社岩波書店)「まことしやか」

つまり、ある物事について「いかにもそれが本当であるかのように言う様子」のことをいう言葉ですから、「まことしやかにささやかれて」いるウワサは、事実ではない可能性が高いのです。

この点を誤解して、真実味が高いことを指すのだと思ってしまっている人が実は多いようなので気を付けましょう。

「まことしやか」の語源

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「まことしやか」は「実しやか」、あるいは「真しやか」、「誠しやか」と書きます。

「まことし」+「やか」に分けることができ、「まことし」とは、古くからの言葉で、「本当だ」という意味です。

また、「やか」は、名詞、形容詞の語幹、擬声語・擬態語など、状態を表す語に付いて形容動詞の語幹をつくる接尾語であり、「いかにもそのようなようすである」「いかにもそのような感じがする」といった意味を表します。

同じく「やか」を使う言葉としては、以下のようなものがありますね。

華やか
1. (花のように)きらびやかで美しいさま。明るく美しいさま。 「 -な装い」 「いと-にうち笑ひ給ひて/源氏 行幸」
2. 栄えて勢いがあるさま。盛んなさま。 「映画界-なりし頃」
3. きわだっているさま。 「なにがしさぶらふと、いと-にいふ/枕草子 82」 「樒(しきみ)のいと-に薫れるけはひも/源氏 総角」
(出典:大辞林(発行所 株式会社三省堂))

しめやか
1. ひっそりとしてもの静かなさま。 「 -に雨が降る」
2. 気分が沈んで悲しげなさま。 「 -に葬儀が執り行われた」
3. しんみりしたさま。しみじみとしたさま。 「 -なる御物語のついでに/源氏 薄雲」
4.(女性の容姿などが)しとやかなさま。 「いと、こめかしう、-に美しきさまし給へり/源氏 乙女」
(出典:大辞林(発行所 株式会社三省堂))

ちなみにこの「しめやか」という言葉はひらがなで書かれることがほとんどですが、あえて漢字で書くとすれば【蕭やか】という字が当てられます。この字は「ショウ」と読むことができ、「さびしい。ひっそりしたさま」を表す字です。

穏やか
1. 静かで平穏無事なさま。やすらか。 「 -な海」 「 -な気候」 「心中(しんちゆう)-でない」
2. 落ち着いていておとなしいさま。 「 -な人柄」
3. やり方や考え方などが穏当であるさま。 「 -に話す」 「 -でないことを言う」
(出典:大辞林(発行所 株式会社三省堂))

和やか(なごやか)
1. 複数の人が気分がやわらいでいるさま。おだやか。 「 -な雰囲気」 「 -に話し合う」
2. 態度・物腰のやわらかなさま。しなやか。 「狩衣姿なる男しのびやかにもてなし、-なれば/源氏 蓬生」
(出典:大辞林(発行所 株式会社三省堂))

「にこやか」という言葉も、同じく「和やか・柔やか」と書くことができます(現在は「和やか」は「なごやか」と読み、「にこやか」はひらがなで表記するのが一般的ですが。)。こちらは「ほほえみを浮かべ、にこにことしているさま」という意味になります。

「まことしやか」の使い方・例文

次に、「まことしやか」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

上述したように、この言葉は真実ではないことを、いかにも真実らしく言う場合に使うことができます。たとえば以下の通りです。

「彼はまだ一社も内定をもらっていなかったが、友人たちには『有名企業から内定が出たが辞退した』とまことしやかな嘘をついていた。」

「一部の人の間では、その月に巨大地震が起こるという噂がまことしやかにささやかれていた。」

「契約を変えると料金が今よりも安くなるという営業マンのまことしやかな説明に危うく乗せられてしまうところだった。」

「その子は喧嘩の原因を相手が自分のおもちゃを取ったからだと言い張ってまことしやかに涙を流した。」

\次のページで「「まことしやか」の類義語」を解説!/

このように、「まことしやか」は、それが事実ではないのにもかかわらず本当のように相手に感じさせるように話すことについていう場合に、「まことしやかにささやかれる」「まことしやかな嘘」などの形で使うことができます。

「まことしやか」の類義語

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次に、「まことしやか」と近い意味がある表現には、以下のようなものがあります。

いかにも本当らしく・さも本当のように

そして「まことしやか」のように、「実際にはそうでないのにそれが本当かのように言うこと」をいう場合には、上記の語を使って以下のような言い方をすることが可能です。

「いかにも本当らしく」:「彼女は街でよくスカウトに合うがいつも断っているという話をいかにも本当らしく語ってていた。」
(≒「彼女は街でよくスカウトに合うがいつも断っているという話をまことしやかに語ってていた。」)

「さも本当らしく」:「彼は一流大学を出て有名企業に就職したのだという経歴をさも本当のように語っていた。」
(≒「彼は一流大学を出て有名企業に就職したのだという経歴をまことしやかに語っていた。」)

「いかにも」や「さも」は「実に」といった意味があり、「いかにも本当らしく」「さも本当のように」という言い方で「まことしやか」とほぼ同じ内容のことを述べることができます。

また、「信憑性のある」「真実味のある」といった表現は「情報の信用度が高い様子」を表しますから、真実である可能性が高いということになり、「まことしやか」とは逆の意味になってしまいますね。

「まことしやか」の意味を正しく理解して効果的に使おう

以上、「まことしやか」の意味と使い方・例文・類義語についてまとめました。

この言葉は「実際にはそうでないことを本当かのように言う様子」をいい、嘘などをさもそれが実際のことであるかのように話すことについていう場合に、「まことしやかに言う」「まことしやかな噂」といった形で使われています。

また近い意味の表現としては「いかにも本当らしく」「さも本当のように」といったものがあり、それらの語を「まことしやか」と置き換えて同じような内容のことを述べることが可能です。

日本語は似た意味の言葉でも少しずつニュアンスの異なるものが数々存在し、使い分けるのが難しいですが、それだけに奥深い面白さがあります。
意味を正しく理解して、効果的に使い分けられるようになると良いですね。

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言葉の意味

「まことしやか」の意味と使い方・例文・類義語は?校正者がサクッとわかりやすく解説!

「まことしやか」(漢字:「実しやか」)という言葉は、「まことしやかにささやかれる」などの形でよく使われています。

よく耳にする言葉ではありますが、意味を誤解してしまっている人も実は多いようです。また、具体的にはどのような使い方をするのか、また他の言葉で言い換えるにはどのような言い方をすることができるのか、中には疑問を抱いている方もいるかもしれません。

そこで、ここでは、「まことしやか」の意味と使い方・例文・類義語などを、法律事務所の事務職として、弁護士が作成した文書の校正やマニュアル改訂作業を行った経験を持つ筆者が解説します。

「まことしやか」の意味と使い方・例文・類義語

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それでは、以下に「まことしやか」の意味と使い方・例文・類義語について説明します。

「まことしやか」の意味は?

まず、「まことしやか」を辞書で引くと以下のように解説されています。

いかにも本当らしく言うさま。

 

出典:広辞苑 第6版(発行所 株式会社岩波書店)「まことしやか」

つまり、ある物事について「いかにもそれが本当であるかのように言う様子」のことをいう言葉ですから、「まことしやかにささやかれて」いるウワサは、事実ではない可能性が高いのです。

この点を誤解して、真実味が高いことを指すのだと思ってしまっている人が実は多いようなので気を付けましょう。

「まことしやか」の語源

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「まことしやか」は「実しやか」、あるいは「真しやか」、「誠しやか」と書きます。

「まことし」+「やか」に分けることができ、「まことし」とは、古くからの言葉で、「本当だ」という意味です。

また、「やか」は、名詞、形容詞の語幹、擬声語・擬態語など、状態を表す語に付いて形容動詞の語幹をつくる接尾語であり、「いかにもそのようなようすである」「いかにもそのような感じがする」といった意味を表します。

同じく「やか」を使う言葉としては、以下のようなものがありますね。

華やか
1. (花のように)きらびやかで美しいさま。明るく美しいさま。 「 -な装い」 「いと-にうち笑ひ給ひて/源氏 行幸」
2. 栄えて勢いがあるさま。盛んなさま。 「映画界-なりし頃」
3. きわだっているさま。 「なにがしさぶらふと、いと-にいふ/枕草子 82」 「樒(しきみ)のいと-に薫れるけはひも/源氏 総角」
(出典:大辞林(発行所 株式会社三省堂))

しめやか
1. ひっそりとしてもの静かなさま。 「 -に雨が降る」
2. 気分が沈んで悲しげなさま。 「 -に葬儀が執り行われた」
3. しんみりしたさま。しみじみとしたさま。 「 -なる御物語のついでに/源氏 薄雲」
4.(女性の容姿などが)しとやかなさま。 「いと、こめかしう、-に美しきさまし給へり/源氏 乙女」
(出典:大辞林(発行所 株式会社三省堂))

ちなみにこの「しめやか」という言葉はひらがなで書かれることがほとんどですが、あえて漢字で書くとすれば【蕭やか】という字が当てられます。この字は「ショウ」と読むことができ、「さびしい。ひっそりしたさま」を表す字です。

穏やか
1. 静かで平穏無事なさま。やすらか。 「 -な海」 「 -な気候」 「心中(しんちゆう)-でない」
2. 落ち着いていておとなしいさま。 「 -な人柄」
3. やり方や考え方などが穏当であるさま。 「 -に話す」 「 -でないことを言う」
(出典:大辞林(発行所 株式会社三省堂))

和やか(なごやか)
1. 複数の人が気分がやわらいでいるさま。おだやか。 「 -な雰囲気」 「 -に話し合う」
2. 態度・物腰のやわらかなさま。しなやか。 「狩衣姿なる男しのびやかにもてなし、-なれば/源氏 蓬生」
(出典:大辞林(発行所 株式会社三省堂))

「にこやか」という言葉も、同じく「和やか・柔やか」と書くことができます(現在は「和やか」は「なごやか」と読み、「にこやか」はひらがなで表記するのが一般的ですが。)。こちらは「ほほえみを浮かべ、にこにことしているさま」という意味になります。

「まことしやか」の使い方・例文

次に、「まことしやか」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

上述したように、この言葉は真実ではないことを、いかにも真実らしく言う場合に使うことができます。たとえば以下の通りです。

「彼はまだ一社も内定をもらっていなかったが、友人たちには『有名企業から内定が出たが辞退した』とまことしやかな嘘をついていた。」

「一部の人の間では、その月に巨大地震が起こるという噂がまことしやかにささやかれていた。」

「契約を変えると料金が今よりも安くなるという営業マンのまことしやかな説明に危うく乗せられてしまうところだった。」

「その子は喧嘩の原因を相手が自分のおもちゃを取ったからだと言い張ってまことしやかに涙を流した。」

\次のページで「「まことしやか」の類義語」を解説!/

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