「案の定」(読み方:「あんのじょう」)という言葉は、「案の定~だった」という形でよく使われています。

物事の結果が予測していたのと同じ状態だったことをいう時に使う言葉ですが、具体的にはどのような使い方をするのか、また他の言葉で言い換えるにはどのような言い方をすることができるのか、中には疑問を抱く方もいるかもしれません。

そこで、ここでは、「案の定」の意味や語源・使い方・類義語・対義語を、法律事務所の事務職として、弁護士が作成した文書の校正・マニュアル改訂作業を行った経験を持つ筆者が解説します。

「案の定」の意味と語源・使い方・類義語・対義語まとめ

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それでは、以下に「案の定」の意味や語源・使い方・類義語・対義語について説明します。

「案の定」の意味は?

「案の定」は「あんのじょう」と読みます。

「あんのてい」ではありませんので注意してくださいね。

辞書で引くと以下のような意味があります。

【案の定(あんのじょう)】

(多く副詞的に)思ったとおり。予期したとおり。はたして。

出典:広辞苑 第6版(発行所 株式会社岩波書店)「案の定」

つまり、「ある物事の結果があらかじめ思っていたのと同じ」であることを指す語です。

「案の定」の語源は?

「案」という字は、「考え」「計画」「予想」といった意味を表します。

「予算案」「立案」などという言葉がありますね。

「定」は、「定まる」とも読むことができることから分かるように、「必ずそうなると決まっていること」「一所に落ち着いて動かないこと」「間違いないこと」「きまり」などを表します。

2つの字を組み合わせて、「考えが間違いないこと」「予想通りであること」という意味になるのですね。

「案の定」の使い方・例文

次に、「案の定」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

この言葉は、たとえば以下のように用いることができます。

「疲れていたので座りたかったが、帰宅ラッシュの時間帯なので案の定車内の座席は埋まっていた」

「彼は勉強をろくにせずにバイトばかりしているので心配していたが、案の定単位を落としたと言って嘆いていた」

「彼は待ち合わせにいつも遅れてくるので今度こそ時間厳守で来るように念を押したが、案の定遅れてやってきた」

「その資格試験は会社から強制的に受験させられているため皆やる気がなく、案の定受かった社員はほとんどいなかった」

「案の定」は、上記のようにある物事が前もってそう思っていた通りであることをいう場合に、

「案の定~だった」といった形で使うことができます。

\次のページで「「案の定」は良くないことにしか使わないの?」を解説!/

「案の定」は良くないことにしか使わないの?

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「案の定失敗してしまった」といったように、「案の定」はネガティブな予感が当たってしまった場合に使われることが多いようです。

では良いことが期待通りに起こったというときには使ってはいけないのでしょうか?

「案の定」という言葉それ自体には、特にネガティブな意味が含まれているわけではありません。

ですから、本来は良い意味にも悪い意味にもどちらにも使える言葉なのですが、習慣として悪い予想が当たってしまった場合に使われることが多いため、たとえば「実験が案の定成功して嬉しい」といったような使い方は、なんとなく違和感があります。

なぜこの言葉がこうした使われ方をするようになったかは分かりませんでしたが、良い意味を表したい場合は「案の定」は避けて、「予想通り(期待通り)上手く行った」などに言い換えた方が無難といえるでしょう。

「案の定」の類義語・言い換え表現

次に、「案の定」の類義語や言い換え表現を、例文とあわせて見ていきましょう。

やっぱり・やはり

「彼の家は代々医者の家系なので彼も将来は医者になるだろうなと思っていたが、やっぱりそうなった」

(≒「彼の家は代々医者の家系なので彼も将来は医者になるかもしれないと思っていたが、案の定そうなった」

 

「せっかくの旅行なので晴れてほしかったが、天気予報の通りにやはりその日は雨になった」

(≒「せっかくの旅行なので晴れてほしかったが、天気予報の通りに案の定その日は雨になった」

予想通り

「試合は接戦だったが、予想通り優勝候補と目されているチームの勝利に終わった」

(≒「試合は接戦だったが、案の定優勝候補と目されているチームの勝利に終わった」)

果たせるかな・果たして・果然(かぜん)

これらは文語的な、少々堅い言い方になりますが、予想通り・期待通りという意味を持ちます。

ただし、ニュアンスとしては、良い期待が見事に的中したという場合に使われることが多いです。

上述したように、「案の定」は悪い結果に対して使うことが多いので、これらの語と言い換えてしまうと少々違和感があります。

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果たせるかな、彼は見事に試験に合格した」

→※「案の定、彼は見事に試験に合格した」は△

果たして、彼は約束の場所に姿を現した」

→※彼が姿を現すことを期待していたのであれば、「案の定、彼は約束の場所に姿を現した」は△

果然予想が的中した」

→※良い結果を予想をしていたのであれば、「案の定予想が的中した」は△

 

「案の定」の対義語

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「案の定」と反対の意味を表す言葉には、以下のようなものがあります。例文とあわせて見ていきましょう。

案外

「あんがい」と読み、「予想が外れること」「思いがけないこと」を表します。

「海外旅行はお金がかかると思っていたけど、時期を選べば案外安く行けるんだね。」

「今までゴルフを何となく敬遠していたが、やってみると案外面白い。」

ちなみに、「案の外」と書く場合には、「あんのほか」と読みます。

「案外」と同じく予想外であることを指しますが、現代ではほとんど使われることがなくなりました。

古典文学では以下のように登場します。

「かの奴はあんのほかにて迷はめ」

【訳】あいつは予想外であって戸惑ったのであろう。

 

出典:今昔物語集

意外に

予想と現実がとても違っていて驚いたような場合に使われます。

「~を除いた」という意味の「以外」という字に書き間違えることが多いですので注意しましょう。

 

彼はクールな人だと思っていたけれど、話してみると意外に陽気で気さくだった。

\次のページで「「案の定」の意味を正しく理解して効果的に使おう」を解説!/

存外

「ぞんがい」と読み、こちらも意味は似ているのですが、案外や意外とは若干ニュアンスが異なります。

案外・意外は「予想していなかったことが起きた」という状況を表し、予想とは真逆の事態が起きたときにも使うことができるのに対して、存外は「予想していたよりも程度が上回っていた」という状況に対して使う言葉です。

たとえば、

「意外と難しい」=もっと簡単だと思っていた。ここまで難しいとは予想外だ。

「存外難しい」=難しいとは思っていたが、思っていた以上に難しい。

何となくニュアンスの違いがお分かりいただけるでしょうか?

 

思いの外

「おもいのそと」ではなく、「おもいのほか」と読みます。

「思ったより」「予想外に」という意味を表すので、「存外」や「案外」などと同様に使うことができますが、これらの語よりも予想とのギャップが大きい場合に使うため、場合によっては大げさな印象を与えてしまうこともあるようです。

 

「無名の新人選手が思いの外好成績をおさめたので驚いた。」

「沖縄は思いの外寒かった。」

「案の定」の意味を正しく理解して効果的に使おう

以上、「案の定」の意味と語源・使い方・類義語・対義語についてまとめました。

この言葉は「思っていた通り」であることをいい、ある物事が前から予想していたのと同じ結果であることについていう場合に、「案の定~だった」といった形で使われます。

似た意味の語として、「やっぱり」「やはり」「予想通りに」「果たして」などをご紹介しましたが、「狙い通り」「ご多分に漏れず」「お約束」など、まだまだたくさんの類義語があるので、ご自身で調べてみても面白いでしょう。

これらの語は、いずれもあることの結果が予想通りであることを言う場合に同じような使い方をすることができるので、それぞれを別の言葉で言い換えたい時には適度に使い分けることができます。

また、対義語としては「案外」「意外に」「存外」「思いの外」をご紹介しましたが、それぞれ少しずつニュアンスに違いがありましたね。

日本語は似た意味の言葉でも少しずつニュアンスの異なるものが数々存在し、使い分けるのが難しいですが、それだけに奥深い面白さがあります。

意味を正しく理解して、効果的に使い分けられるようになると良いですね。

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言葉の意味

「案の定」の意味や語源・使い方・類義語・対義語は?日本文学専攻の現役ライターがサクッとわかりやすく解説!

「案の定」(読み方:「あんのじょう」)という言葉は、「案の定~だった」という形でよく使われています。

物事の結果が予測していたのと同じ状態だったことをいう時に使う言葉ですが、具体的にはどのような使い方をするのか、また他の言葉で言い換えるにはどのような言い方をすることができるのか、中には疑問を抱く方もいるかもしれません。

そこで、ここでは、「案の定」の意味や語源・使い方・類義語・対義語を、法律事務所の事務職として、弁護士が作成した文書の校正・マニュアル改訂作業を行った経験を持つ筆者が解説します。

「案の定」の意味と語源・使い方・類義語・対義語まとめ

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それでは、以下に「案の定」の意味や語源・使い方・類義語・対義語について説明します。

「案の定」の意味は?

「案の定」は「あんのじょう」と読みます。

「あんのてい」ではありませんので注意してくださいね。

辞書で引くと以下のような意味があります。

【案の定(あんのじょう)】

(多く副詞的に)思ったとおり。予期したとおり。はたして。

出典:広辞苑 第6版(発行所 株式会社岩波書店)「案の定」

つまり、「ある物事の結果があらかじめ思っていたのと同じ」であることを指す語です。

「案の定」の語源は?

「案」という字は、「考え」「計画」「予想」といった意味を表します。

「予算案」「立案」などという言葉がありますね。

「定」は、「定まる」とも読むことができることから分かるように、「必ずそうなると決まっていること」「一所に落ち着いて動かないこと」「間違いないこと」「きまり」などを表します。

2つの字を組み合わせて、「考えが間違いないこと」「予想通りであること」という意味になるのですね。

「案の定」の使い方・例文

次に、「案の定」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

この言葉は、たとえば以下のように用いることができます。

「疲れていたので座りたかったが、帰宅ラッシュの時間帯なので案の定車内の座席は埋まっていた」

「彼は勉強をろくにせずにバイトばかりしているので心配していたが、案の定単位を落としたと言って嘆いていた」

「彼は待ち合わせにいつも遅れてくるので今度こそ時間厳守で来るように念を押したが、案の定遅れてやってきた」

「その資格試験は会社から強制的に受験させられているため皆やる気がなく、案の定受かった社員はほとんどいなかった」

「案の定」は、上記のようにある物事が前もってそう思っていた通りであることをいう場合に、

「案の定~だった」といった形で使うことができます。

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