「諌める」の意味と使い方・例文・類義語は?新聞記者歴29年の筆者がわかりやすく解説!
「諌める」とは
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「いさめる」というときの漢字には「諌」と「諫」が使われますが、いずれも同じ字の異体字という関係になります。また、新聞などではひらがなで「いさめる」と表記するケースも多いようです。今回の記事では「諌」に統一していきますので、ご了承ください。
では、以下に「諫める」の意味と使い方について説明していきます。
「諌める」の意味
「諌める」には「(多くは目上の人に対して)あやまちや欠点を改めるように忠告する。諌言(かんげん)する」という意味があります。
基本となるポイントは、以下の3つです。
・他人の行為・言動・考え方などが間違っており、正したい場合に用いる。
・下位者から上位者に対して用いる。
・したがって、思い切って言いますよというニュアンスがある。
つまり、上司にうまいことを言って意のままに操ろうなどと下心を抱いているようでは「諌める」とは言いません。あくまで「間違いを正す」行為です。
また、組織内での上下関係や年齢の上下があることが前提となります。対等な関係や目下の者に対しては、「注意する」「諭す」など別の表現を用いた方がよいでしょう。
漢字の「諌」
漢字の「諌(かん)」について見ていきましょう。
「諌」の字は「下のものが上のものに直言して、過ちを正させる」の意で古くから使われており、中国の古い儒学書『礼記(らいき)』には「為人臣之礼、不顕諌。三諌而不聴,則逃之」と書かれています。
大意は「臣下として礼をなすのであれば、表立って諌めるのは避け、三度直言しても聞き届けられなければ、臣下を辞すべきである」といったところでしょうか。当時、主君などに直言をするのは、おそらく命がけの行為だったのではないかと想像します。
実は、同じく中国の南北朝時代の詩人・陶淵明(とうえんめい)の『帰去来辞』という詩には「悟已往之不諌、知来者之可追」ともありました。大意は「すでに過ぎたことを改める方法がないのを悟り、将来のことは追いかけられるのを知っている」。つまり、過去の自分に対して誤りを忠告するすべはないと言っています。
時代をさかのぼると、「諌」は非常に柔軟な使い方をされていたようですね。
「いさめる」の由来
では、日本語の「いさめる」を詳しく見ていきましょう。
古くは「いさむ」という言葉でした。
感動詞の「いさ」(否定する気持ちを表す)に接尾辞の「む」(〜の状態になる・させる)が付き「いさむ」という動詞を形作ったのではないかと言われています。
意味は「教え諭す。忠告する」で、鎌倉時代に兼好法師によって書かれた随筆『徒然草(つれづれぐさ)』には「陰陽師有宗入道(中略)細道ひとつ残して、皆畠に作り給へと諌め申しき」とあります。大意は「有宗入道が、細い道一つを残して、あとは畑にしてはどうかと忠告した」。
忠告されたのがこの文章を書いた本人=兼好法師という関係から、上下関係をそれほど強く感じさせない言い回しになっている気がします。
では、以上を踏まえて「諌める」の使い方を例文で見ていきましょう。
「無謀な投資を続ける社長を諌める」
「リストラが原因で職を失い、仕事も探さずに競馬に入れ込む父を諌めた」
「意を決して社長を諌めたものの、軽く鼻であしらわれた」
「部長のいい加減な仕事ぶりは甚だ迷惑だが、それを諌めようという骨のある人間がいないのも問題だ」
類義語
次に、「諌める」の類義語について見ていきます。
誰かに対して正しいことを伝えるという意味合いの言葉の中から、「諭す(さとす)」「意見(いけん)する」「苦言(くげん)を程する」の3つを紹介しましょう。
諭す(さとす)
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「諭す」には「物事の道理(特に、自分の非)がよく分かるように目下のものに言い聞かせる。また、行動の指針を与えて目下の人を教え導く」という意味があります。
「目下の者」と「言い聞かせる・教え導く」の2点がポイントで、「自分よりも下の人間に、正しくはこうあるべきだと伝えて納得させる」場合に用いる語です。
例文:
「彼は子どもたちに身勝手な嘘を付くのは良くないと諭した」
「車内を大騒ぎで走り回る子どもたちに、電車の中では騒がないよう懇懇と諭した」
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