「羽目」の意味と使い方・例文・類義語は?新聞記者歴29年の筆者がわかりやすく解説!
「羽目」とは
image by iStockphoto
「羽目」は「破目」と表記されることもありますが、読み方は同じです。「はめ」という語そのものは、意外に歴史ある言葉でもあります。
それでは、以下に「羽目」の意味と使い方から説明していきましょう。
「羽目」の意味
「羽目」とは以下のような意味を持ちます。
1.建築で、板を縦または横に並べて平らに張ったもの。また、その板。羽目板のこと。
2.なりゆきから生じた好ましくない状況。また、追いつめられた事態。
「羽目(板)」は壁や天井などに用いられ、多くはつなぎ目がしっかりはまるように加工されています。正倉院文書にも登場するほど、建築技法としては古いもののようです。語源については「はめたりはずしたりできるところから」と言われていますが、そうだとすると、漢字の「羽」とも「目」ともあまり関連はなさそうですね。
また、「2.好ましくない状況」については江戸時代の雑俳に「水汲みを又まをにするはめになり」とあり、少なくとも江戸期にはこの意味で一般的に用いられていたようです。
「はめ(る)」の由来
image by iStockphoto
では「はめ」について、もう少し詳しく見ていきましょう。
「ぴったり収める」という意味での「はめ(る)」は漢字で「嵌・填」と書きます。また「食べる」という意味の「はむ」では「食・喫・咋」です。実はどちらも同源の語だとされています。
「はむ」は「歯」を動詞化したものではないかと言われており、口に含み込んで食べる様子を表すようです。「はむ」から変化した「はめ(る)」は、このことからの連想で「(枠、条件などに)ぴったり収める」さらには「計略にかけ、陥れる」の意味となったと思われます。
つまり、「1.羽目板」の場合にはやはり「嵌める板」と解釈するのがよいようです。一方「2.好ましくない状況」の場合には「(策略・罠に)ハメられた」ということではないでしょうか。
羽目を外す?馬銜を外す?
「羽目」を使った慣用句に「羽目を外す」がありますが、同じ意味で「馬銜(はめ)を外す」とも言うので、迷う方もおられるのではないでしょうか。
実は由来に2通りあるという点がカギでした。
・「羽目を外す」=羽目板を外してしまうと柱や骨組みが丸見えになってしまい、見た目を損なう。こうしたことから、調子に乗り過ぎて大騒ぎし、成果を台無しにすることを言うようになった。
・「馬銜を外す」=馬銜(はめ・はみ)とは馬にくわえさせてコントロールしやすくするためのもの。これを外すと馬が自由気ままに駆けることから、自由奔放に振る舞うことを指すようになった。
どちらが正解かは何とも言えませんが、現在では「羽目を外す」と表記することのほうが多いようです。
羽目になる?陥る?
「望ましくない事態となる」という意味でよく用いられる「羽目になる」という言い回しがあります。「羽目に陥る・落ちる」と言うこともありますが、意味は同じです。
後者の用例は、夏目漱石『虞美人草(ぐびじんそう)』(1907年)にありました。「ただ気が弱い。気が弱いために損をする。損をするだけならいいが乗っ引きならぬ羽目に陥る」とあり、いかにも大変損な役回りを押し付けられる様子が表現されています。
「羽目になる」と「羽目に陥る・落ちる」は同じ意味の言い回しですが、後者のほうがどうしようもない事態にはまり込んでしまうニュアンスが強まるでしょう。
では、以上を踏まえて、「羽目」の使い方を例文で見ていきます。
「その建物は外壁に木の縦羽目板を使いシンプルな外観に仕上がっていた」
「大きな仕事が終わって一段落したため、同僚とお酒を飲んで大いに羽目を外させてもらった」
「旧友と久しぶりに集まってランチをすることになったまでは良かったが、結果的に人の自慢ばかりを延々と聞かされる羽目になった」
「劇中の踊りがうまく合わず、同じところを何度も繰り返す羽目に陥った」
類義語種々
image by iStockphoto
次に、「羽目」を使った言い回しと近い意味の表現ついて見ていきます。
「羽目になる」では「憂き目(うきめ)に遭う」「貧乏(びんぼう)くじを引く」。
「羽目を外す」では「見境(みさかい)がない」「常軌(じょうき)を逸する」を紹介します。
\次のページで「憂き目(うきめ)に遭う」を解説!/