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「隔てる」の意味と使い方・例文・「隔たる」との違いは?新聞記者歴29年の筆者が解説!

みなさんは「隔てる(へだてる)」という言葉を使ったことがありますか?2つのものの関係性についての表現で、「~を隔てる」「~を隔てたところ」などの形でよく用いられています。しかし、同じ「隔」という漢字を含んだ「隔たる」という語もありますね。非常に似ている2つの語の間には、どのような違いがあるのでしょうか。今回の記事では「隔てる」の意味と使い方、また「隔たる」との違いについて、新聞記者歴29年の筆者が詳しく解説していきます。

「隔てる」とは

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「隔絶」「隔離」といった熟語に使われている「隔」という漢字を訓読みすると「隔てる」あるいは「隔たる」です。ということは、この2つの語は同じ意味だと捉えてかまわないのでしょうか?

それではまず、「隔てる」の意味と使い方から見ていきましょう。

「隔てる」の意味

「隔てる」は細かく見ると、以下の3通りの意味があります。

1.時間的・空間的に距離を置く。

2.間に物を置く。また、間に置かれた物が二つの物をさえぎる。

3.関係をうとくする。損なう。遠ざける。

いずれも、2つのものの間に関係の障害となりうる何かが存在し、関係の妨げとなっているという点が共通しています。その障害がどういう性格のものなのかが問題で、整理すると「時間・年月」「空間・距離・地形」「物体」「心・気持ちの距離」に分類できるということになるでしょう。

対象となる2つのものについては非常に幅が広く、「人と人」の場合が想定されるだけではなく、「人ともの」「ものともの」のケースもあります。たとえば「A町とB町」といった場合にも使用が可能です。

「隔てる」の語源

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もう少し詳しく「隔てる」を見ていきましょう。

漢字の「隔」の字は本来、「物理的に間にものがあって遮られる」ことを意味していました。このことから次第に空間・距離や時間、さらに人間関係まで表現するようになっていったようです。

「隔てる」は分けると「へだ・てる」。タ行下一段活用の他動詞です。これを参考にすると、古くは「隔つ(へだつ)」という言葉があり、この言葉からの変化ではないかと推測できるでしょう。「隔つ」は自動詞としても使われますが、「隔てる」と同じく他動詞(~を、といった目的語を必要とする)としても使われていたようです。

平安時代に書かれた紫式部(むらさきしきぶ)『源氏物語(げんじものがたり)』の「賢木」には「大小のことを隔てず」とあります。「大小のことを区別せず」という意味なので、現在の「分け隔てなく」に通じる使い方でしょう。

以上を踏まえて、「隔てる」の使い方を例文で見ていきましょう。

「高層マンションに隔てられており、南向きの部屋にもかかわらず日当たりがよくない」

「両親の離婚以来離れ離れになっていた実の母親と、20年の歳月を隔てて再会した」

「忙しさからくるすれ違いが生んだ不信感が、彼らの仲を隔てた」

「すべての生徒を分け隔てなく扱う教師は案外少ないものだ」

「病院はここから数百メートルほど隔てたところにあります」

「隔たる」との違い

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次に、非常によく似ている「隔たる」という語について見ていきます。「隔てる」と同じように使えるようでいて、細かく見ると実は明確な違いがありました。

「隔たる」の意味と特徴

「隔たる」には以下の3通りの意味があります。

1.時間的・空間的に遠く離れる。

2.物事の間に差がある。かけ離れている。差異がある。

3.気持ちが離れて関係がうとくなる。かけ離れる。疎遠になる。

意味のみを追うと違いが分かりにくいですが、「隔たる」は分けると「へだた・る」となります。「~を」という目的語を必要としない自動詞で、活用もラ行であるという点で違いは明確です。

多くは主語に人もしくは人に関係するもの(心・考え・場所など)を持ちます。また、言い切りの形ではよく「隔たっている」というように、促音が入る点も特徴だと言えるでしょう。

古い用例は『万葉集(まんようしゅう)』にあり「心ゆも我は思はずき山川も隔たらなくにかく恋ひむとは」と書かれています。「(恋する相手が近くに戻り)もう山や川に遮られて離れているわけではないというのに、これほど恋焦がれてしまうとは」という意味で、物理的な距離と気持ちの距離を同時に表現していると言えそうです。

以上を踏まえて、「隔たる」の使い方を例文で見ていきましょう。

「彼は子育ての方針が妻と大きく隔たっていることに苛立ちを隠せなかった」

「彼は電車で2駅ほど隔たったところに転居し、以前のように頻繁には行き来できなくなった」

「2つの作品はわずかな時間しか隔たっていないので、似たようなテーマが語られている」

「文化的に隔たった地域にたった一人で乗り込んでいくのだから、その熱意には全く驚かされる」

つまり、具体的には以下のような違いがあります。

・他動詞「隔てる」:「価値観の差が両者の意見を隔てる」(「価値観の差」が主語。また「意見を」という目的語を必要とする。少し遠回しなニュアンスを持つ)

・自動詞「隔たる」:「両者の意見が隔たる」(「意見」が主語。ストレートに違いの存在を明確にしており、直接的なニュアンスを持つ)

いずれのケースも、2つのものの間に障害・妨げとなるものがあるという点において、共通の状況があります。しかし、文章の中で使う場合には、何を主語とするかで使い分ける必要があるでしょう。

隔なる(へなる)

ちなみに、古語では「隔なる(へなる)」という語もありました。

この言葉も「間に物があって遮られている。離れている」という意味で、『万葉集』には「愛しと吾が思ふ妹を山川を中にへなりて安けくもなし」とあります。「愛しい人との間を山や川が遮っており、心安らかではいられない」という意味です。

「隔なる」も自動詞で活用はラ行。つまり「隔たる」と同じです。真ん中の「な」と「だた」の差があるだけですが、いずれも母音はaで共通しているので、関係が深い言葉だと思われます。

意味は近いが使い方に注意

以上、「隔てる」の意味と使い方、また「隔たる」との違いについて詳しく解説してきました。

この言葉は「2つのものの間に関係の障害となりうる何かが存在し、関係の妨げとなっている」ということを言い表します。「時間・年月」「空間・距離・地形」「物体」「心・気持ちの距離」などについて用いることができ、「人と人」の場合だけでなく、幅広いシチュエーションで使用が可能です。

一方、「隔たる」も同じような状況を言い表す言葉ですが、主語には主に人や人に関係するものがくるので、比較的ストレートな表現となります。

「隔てる」と「隔たる」、意味が非常に近く語感も似ているので、同じように捉えてしまいがちですが、それぞれ他動詞、自動詞という点で違いがありました。使い方やニュアンスが異なるため、注意が必要となるでしょう。

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