みなさんは「玲瓏(れいろう)」という言葉を聞いたことがありますか?「玲瓏たる~」の形で用いられる語です。しかし、最近の日常生活の中では、あまり接する機会がない言葉の一つでしょう。何かの美しさについて形容する語ですが、具体的にどのようなことを表すのかを説明するのは簡単ではありません。また、他に似た意味を持つ語にはどのようなものがあるのかも、気になるところです。今回の記事では「玲瓏」の意味と使い方、また類義語にあたる語について、新聞記者歴29年の筆者が、詳しく解説していきます。

「玲瓏」とは

「玲」「瓏」ともに部首が「玉(ぎょくへん)」なので、玉や宝石に関連する言葉かな、というところまでは想像がつきます。ですが、この漢字を含む熟語もそう多くなく、はっきりとした意味まではご存じない方も多いのではないでしょうか。

それでは、以下に「玲瓏」の意味と使い方について説明していきます。

「玲瓏」の意味

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「玲瓏」とは2通りの意味があります。

1.玉のように光り輝くさま。また、冴え冴えとして美しいさま。

2.玉や金属などが触れ合って美しい音を立てるさま。また、澄んだ音声が美しく響きわたるさま。

「1.光り輝く」の意味では、澄み切った美しさに満ち溢れて光り輝いている様子を指し、本来は目に見える自然の美しさについての表現に用いられていました。次第に対象が広がっていき、立派な建物や女性の美しさなどについても「玲瓏」と表現することがあります。

「2.美しい音」の場合は音が対象なので、自然の音というより、楽器や鈴の音色の美しさを表現するときに多く用いられるようです。

いずれにせよ、文学的で堅い表現なので、一般的には「玲瓏たる〜」「玲瓏として〜」といった言い回しで用いられます。口語調の軽い感じで使うのは適切ではないでしょう。

「玲瓏」の語源

「玲瓏」を構成する漢字2文字を、それぞれ詳しく説明しましょう。

「玲」は音読みの「レイ」がストレートに音を表し、「玲玲(れいれい)」とすれば「玉が触れ合ったときに出る、澄んだ美しい音」を意味します。このことから「明るく清らかな様子」を表すようにもなりました。

「瓏」は「玉(ぎょくへん)」と「龍」の組み合わせからイメージできる通り、雨乞いの祈祷に使う玉のことを指します。その玉には龍の絵が描かれていることから、この字となりました。どこか神秘性を感じさせる文字でもあります。

以上を総合すると「(祈祷で用いる玉のごとく)霊的で神秘性を感じさせる美しさを持ち、澄み切って清らかな様子の光景・姿・音色」といったイメージでしょう。

古い用例では…

風景が対象の古い用例としては、中国前漢の時代に書かれた楊雄(ようゆう)の『甘泉賦(かんせんふ)』に「前殿崔巍兮和氏玲瓏」(大意:前殿が険しくそびえたち、宝玉のように光り輝いている)とあり、立派な建物・甘泉宮についての表現でした。

音を対象とする用例としては、中国後漢の時代に書かれた班固(はんこ)『東都賦(とうとふ)』に「和鑾玲瓏」とあります。和鑾とは鈴のこと。鈴の澄んだ音が鳴り響く様子の表現です。

日本の文学からは、明治~昭和に活躍した女流作家であり歌人の与謝野晶子による『三つの路』という詩に用いられているので、ご紹介します。「われは玲瓏たる身一つにて逃れ出でぬ」との一節で、着ているものを脱ぎ捨てた(余計なものを一切捨てた)姿を「玲瓏」と表現しました。飾りのない自然な状態こそ光り輝いて美しいということでしょうか。

以上を踏まえて、現在の「玲瓏」の使い方を例文で見ていきましょう。

「漆黒の空に月が玲瓏として輝き、疲れ切った2人を柔らかく包んでいた」

「外に出ると世界が一変し、玲瓏たる雪で銀色に明るく輝いていた」

「彼の玲瓏とした歌声は心地よく心に染み渡った」

「肌を刺すような寒さの中でも、玲瓏たる朝の空は私を前向きな気持ちにさせた」

「玲瓏」の類義語種々

「玲瓏」のほかにも、美しさを文学的な表現で伝える言葉があります。その中から近いイメージを持つ語として、「煌煌(こうこう)」「燦燦(さんさん)」「清か(さやか)」を紹介しましょう。

煌煌(こうこう)

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「煌煌(煌々)」は「きらきらと光り輝くさま」を表します。通常は暗い状態の中で光るもの(星・電灯・イルミネーションなど)について用いられる言葉です。

「煌」は訓読みすると「きらめく」と読め、それ自身が明るく輝くこと。「煌煌」と繰り返すことにより、より一層強く光り輝いて明るい様子を言い表しています。

例文:

「街は煌煌と光り輝くイルミネーションに彩られ、幻想的な世界を作り出していた」

「リビングにはクラシック調のシャンデリアが煌煌と輝き、高級感のある雰囲気を醸し出していた」

\次のページで「燦燦(さんさん)」を解説!/

燦燦(さんさん)

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「燦燦(燦々)」は「(太陽の光などが)明るく輝くさま。鮮やかに光り輝くさま」を指します。こちらは主に太陽・陽光について用いられる言葉です。

「燦」は「目にまぶしく、きらめき明るい」様子を表しており、「煌煌」と同様に「燦燦」と重ねてより意味を強調しています。

例文:

「燦燦とした日差しが容赦なく降り注ぎ、一息つくことすら許さなかった」

「四方をマンションに囲まれた東京の自分の家は昼間でも薄暗く、燦燦と差し込む陽光がなつかしく思われる」

清か(さやか)

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「清か」には2通りの意味があります。

1.明るくてはっきりしているさま。また、澄み切ってさわやかなさま。

2.音や声が澄んで、はっきりと聞こえるさま。

「1.明るくてはっきり」は目に見えるものに対する表現で、「2.はっきり聞こえる」は耳で聞こえるものに対する表現となります。動詞の「さゆ(冴ゆ)」と語源を同じくする言葉で、冷たく、くっきりと際立っている様子を言う言葉なのだそうです。

例文:

「ちょうど新月にあたるその日の空には、星が清かに輝いていた」

「あたりがしんと静まるにつれて、彼の話す声がいっそう清かに聞こえた」

美しさを表現力豊かに

以上、「玲瓏」の意味と使い方、また類義語にあたる語について、詳しく解説してきました。

この言葉は「玉のように光り輝くさま」「澄んだ声音が美しく響きわたるさま」という2通り意味があり、前者は目で見える光景などについて、後者は耳で聞く音について「美しい」と表現するための言葉です。やや堅い表現なので、多くは「玲瓏たる~」「玲瓏とした~」などの形で用いられます。

また近い意味の語には「煌煌」「燦燦」「清か」があり、いずれも「美しさ」を言い表す言葉です。それぞれ「暗い中で光り輝く」「まぶしいほどのパワーを持って輝く」「澄み切ってはっきりした様子」といったニュアンスの違いがあります。

以上のように、何かが美しい・素晴らしいと表現したい場合、場面や美しさの特徴などによって、さまざまな表現を用いることが可能です。多くの語のニュアンスの違いを理解しておくことで、日本語表現の幅がより広がっていくのではないでしょうか。

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言葉の意味

「玲瓏」の意味と使い方・例文・類義語は?新聞記者歴29年の筆者がわかりやすく解説!

みなさんは「玲瓏(れいろう)」という言葉を聞いたことがありますか?「玲瓏たる~」の形で用いられる語です。しかし、最近の日常生活の中では、あまり接する機会がない言葉の一つでしょう。何かの美しさについて形容する語ですが、具体的にどのようなことを表すのかを説明するのは簡単ではありません。また、他に似た意味を持つ語にはどのようなものがあるのかも、気になるところです。今回の記事では「玲瓏」の意味と使い方、また類義語にあたる語について、新聞記者歴29年の筆者が、詳しく解説していきます。

「玲瓏」とは

「玲」「瓏」ともに部首が「玉(ぎょくへん)」なので、玉や宝石に関連する言葉かな、というところまでは想像がつきます。ですが、この漢字を含む熟語もそう多くなく、はっきりとした意味まではご存じない方も多いのではないでしょうか。

それでは、以下に「玲瓏」の意味と使い方について説明していきます。

「玲瓏」の意味

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「玲瓏」とは2通りの意味があります。

1.玉のように光り輝くさま。また、冴え冴えとして美しいさま。

2.玉や金属などが触れ合って美しい音を立てるさま。また、澄んだ音声が美しく響きわたるさま。

「1.光り輝く」の意味では、澄み切った美しさに満ち溢れて光り輝いている様子を指し、本来は目に見える自然の美しさについての表現に用いられていました。次第に対象が広がっていき、立派な建物や女性の美しさなどについても「玲瓏」と表現することがあります。

「2.美しい音」の場合は音が対象なので、自然の音というより、楽器や鈴の音色の美しさを表現するときに多く用いられるようです。

いずれにせよ、文学的で堅い表現なので、一般的には「玲瓏たる〜」「玲瓏として〜」といった言い回しで用いられます。口語調の軽い感じで使うのは適切ではないでしょう。

「玲瓏」の語源

「玲瓏」を構成する漢字2文字を、それぞれ詳しく説明しましょう。

「玲」は音読みの「レイ」がストレートに音を表し、「玲玲(れいれい)」とすれば「玉が触れ合ったときに出る、澄んだ美しい音」を意味します。このことから「明るく清らかな様子」を表すようにもなりました。

「瓏」は「玉(ぎょくへん)」と「龍」の組み合わせからイメージできる通り、雨乞いの祈祷に使う玉のことを指します。その玉には龍の絵が描かれていることから、この字となりました。どこか神秘性を感じさせる文字でもあります。

以上を総合すると「(祈祷で用いる玉のごとく)霊的で神秘性を感じさせる美しさを持ち、澄み切って清らかな様子の光景・姿・音色」といったイメージでしょう。

古い用例では…

風景が対象の古い用例としては、中国前漢の時代に書かれた楊雄(ようゆう)の『甘泉賦(かんせんふ)』に「前殿崔巍兮和氏玲瓏」(大意:前殿が険しくそびえたち、宝玉のように光り輝いている)とあり、立派な建物・甘泉宮についての表現でした。

音を対象とする用例としては、中国後漢の時代に書かれた班固(はんこ)『東都賦(とうとふ)』に「和鑾玲瓏」とあります。和鑾とは鈴のこと。鈴の澄んだ音が鳴り響く様子の表現です。

日本の文学からは、明治~昭和に活躍した女流作家であり歌人の与謝野晶子による『三つの路』という詩に用いられているので、ご紹介します。「われは玲瓏たる身一つにて逃れ出でぬ」との一節で、着ているものを脱ぎ捨てた(余計なものを一切捨てた)姿を「玲瓏」と表現しました。飾りのない自然な状態こそ光り輝いて美しいということでしょうか。

以上を踏まえて、現在の「玲瓏」の使い方を例文で見ていきましょう。

「漆黒の空に月が玲瓏として輝き、疲れ切った2人を柔らかく包んでいた」

「外に出ると世界が一変し、玲瓏たる雪で銀色に明るく輝いていた」

「彼の玲瓏とした歌声は心地よく心に染み渡った」

「肌を刺すような寒さの中でも、玲瓏たる朝の空は私を前向きな気持ちにさせた」

「玲瓏」の類義語種々

「玲瓏」のほかにも、美しさを文学的な表現で伝える言葉があります。その中から近いイメージを持つ語として、「煌煌(こうこう)」「燦燦(さんさん)」「清か(さやか)」を紹介しましょう。

煌煌(こうこう)

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「煌煌(煌々)」は「きらきらと光り輝くさま」を表します。通常は暗い状態の中で光るもの(星・電灯・イルミネーションなど)について用いられる言葉です。

「煌」は訓読みすると「きらめく」と読め、それ自身が明るく輝くこと。「煌煌」と繰り返すことにより、より一層強く光り輝いて明るい様子を言い表しています。

例文:

「街は煌煌と光り輝くイルミネーションに彩られ、幻想的な世界を作り出していた」

「リビングにはクラシック調のシャンデリアが煌煌と輝き、高級感のある雰囲気を醸し出していた」

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