「あながち」(漢字では「強ち」)という言葉は、「あながち~ではない」といった形でよく用いられています。

とはいえ、具体的にこの言葉がどのようなことを表しているのか、また他に近い意味を持つ言葉にはどのようなものがあるのか、疑問を抱くことがあるかもしれません。

そこで、ここでは「あながち」の意味と使い方、また類義語などについて翻訳経験のある現役ライターの筆者が説明していきます。

「あながち」の意味と使い方・例文・類義語

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それでは、以下に「あながち」の意味と使い方、また類義語などについて説明していきましょう。

「あながち」の意味は?

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まず、「あながち」には以下のような意味があります。

《判断や主張の内容を受けて、下に打ち消しを伴って》全面的に断定できないという話し手の気持ちを表す。一概に。必ずしも。

出典:明鏡国語辞典 (発行所 株式会社大修館書店)「強ち」

「あながち」の使い方・例文

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「あながち」は、後ろに「~ない」などの打消しの語句を伴って、物事を断定してしまうことができない気持ちを表す言葉です。

「あながち」を使った例文は、次のようになります。

「その成分は天然由来で安全だと彼は言うが、あながち正しいとも言い切れない」
「確かに彼は大見得を切っているように見えたが、あながちはったりとは限らない」
「前年比二倍の売上目標とは無茶なように思うが、あながち不可能なことではない」
「彼の年になって新しいことを始めるのは難しくはあろうが、あながち無理なことではない」

古語としての「あながち」の意味

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平安時代には、「あながち」は「あながちなり」という形容動詞として使われていました。意味は、「強引だ」「身勝手だ」「無理やりだ」というもので、「あな(己))」+「かち(勝ち)」から成ると言われています。「おのれ(己)」が勝つ、つまり自分勝手に物事を押し通すということを表す言葉でした。

「あながち」の語源

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こうして「身勝手なさま」という意味で使われていた「あながち」ですが、そののちには打消しの語句を伴って、現在のような「むやみに」「一概に」と副詞的に用いられるようになりました。

「あなたの言うこともあながち間違いではないですね」などと言えるのは、同等の立場にある人か、自分より目下の人に対しては使えますが、上司など目上の人に使うのは失礼な印象を与えてしまうので避けましょう。

\次のページで「「あながち」の類義語」を解説!/

「あながち」の類義語

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では次に、「あながち」の類語について見ていきましょう。

「あながち」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものが挙げられます。

「一概に」

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まず、「一概に(いちがいに)」には以下の意味があります。

細かい違いを無視して判断するさま。ひっくるめて。一様に。▼多く下に否定的な表現を伴う。

出典:明鏡国語辞典(発行所 株式会社大修館書店)「一概に」

「一概に」は、「細かいところを考慮しないで、すべてをまとめて同じように判断する様子」を表す言葉です。

また、「一概」という言葉もあり、こちらは自分の意見を強引に押し通すことを表します。

「一概」の「概」は、「ますに入れた米の盛り上がった部分をならす棒(ますかき)」の意味を持つ漢字です。そのため、「一概には言えない」という表現も、「米をならすように、物事をひとつの面だけで考えて結論を出すわけにはいかない」という意味が込められています。

「一概に」は、次のように使う言葉です。

「金持ちが幸せでそうでない人が不幸かどうかなんて一概にはいえない」
「価格が安い製品を一概に否定するつもりはないが、値段相応で安物買いの銭失いになることもある」

「まんざら」

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次に、「まんざら」には以下の意味があります。

《否定的表現を伴って》必ずしも。

出典:明鏡国語辞典「満更」

\次のページで「「必ずしも」」を解説!/

「まんざら」は、「(後に否定形を続けて、判断などが)必ずそうと決まったものではない」ことを表します。

語源はわかっておらず、「満更」は当て字です。「まんざらでもない」は慣用句なので、「まんざらではない」のような言い方は誤用になります。「必ずしも悪くない、全く嫌なわけではない、むしろかなり良い」という意味で、例文は次の通りです。

「ここしばらくヒットがなく鳴かず飛ばずの日々を送っているとはいえ、彼の作品はまんざら捨てたものではない」
「彼は自分がリーダーなんて柄ではないと言いながら、まんざらでもなさそうだった」

「必ずしも」

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「必ずしも」には、次のような意味があります。

《「し」は副助詞、「も」は係助詞》打消しの語を伴って、必ず…というわけではない、…とは限らない、という気持ちを表す。

出典:小学館「必ずしも」

「必ずしも」は、打消しの語と共に使って、部分的に否定する意味を表す言葉です。

「必ずしも」は、次のように使います。

「行列のできるレストランの食事が必ずしもおいしいとは限らない」
「いつも一緒に行動している夫婦が必ずしも円満だとは言えない」

「いささか」

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「いささか」は、次のような意味を持っています。

\次のページで「「あながち」の対義語」を解説!/

数量・程度が少ないさま。少し。幾らか。自己の事柄については謙遜を、他者の事柄については婉曲を表し、「かなり」の意で用いられることがある。

出典:三省堂「聊か・些か」①

「いささか」は、万葉仮名の時代からある古い言葉で、「ちょっと」「わずかに」という、気持ちや物の数量や程度を主体的に表します。

ビジネスの場面で「ちょっと」などの表現を使うと、軽くて子どもっぽい印象を与えてしまいますが、「いささか」だと自分の感情を控えめに伝えることができる言葉です。

自分の自信があることを話すときに謙虚さを出すため、「かなり」自信があることでも「いささか」自信がある、という言い方を表現することができます。

「いささか」を使った例文は次の通りです。

「留学の経験がありますので、英語にはいささか自信があります」

「あなたの今日の服装は、いささか華やかですね」

「あながち」の対義語

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「あながち」の反対の意味を持つ言葉には、

「絶対に~ない」

「必ず~である」

「すべてにおいて~である」

「一律~である」

などがあります。

「あながち」の英語表現

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「あながち」を英語で表す場合には、「not necessarily」「not exactly」「not altogether」「not always」 などが使えます。

「It is not always bad meaning.」の和訳は「それは必ずしも悪い意味ではない」ということです。

「あながち」は100%ではないときに使おう

以上、「あながち」の意味と使い方、類義語などについてまとめました。

この言葉は、ある事柄について全面的にそれが事実だとはっきりと判断できない気持ちを表し、後に否定語を続けて「あながち~ではない」という形で用いられています。

また、近い意味の語には「一概に」「まんざら」といったものがあり、これらも後に否定形を伴って用いる表現です。

そして、この場合にはそれぞれ「細かい部分をすべてまとめて同じように判断する様子」(例文でいうと、製品によってピンキリにもかかわらず「価格の安い製品」と一括りにしてすべてを同じように考えて判断すること)、「必ずしも(~ではない)」(ある物事が絶対にそうと決められないこと、むしろその逆であることを認めるニュアンスを含む)をいいます。

それぞれニュアンスは異なりますが、これらの言葉はある事柄について、それがすべてにおいて100%真実だとは決めつけられない、そうとは判断できないこと、その気持ちについていう場合に用いることができるため、その場面に応じてふさわしいニュアンスの言葉を使い分けると良いでしょう。

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言葉の意味

「あながち」の意味と使い方・例文・類義語は?現役ライターがサクッとわかりやすく解説

「あながち」(漢字では「強ち」)という言葉は、「あながち~ではない」といった形でよく用いられています。

とはいえ、具体的にこの言葉がどのようなことを表しているのか、また他に近い意味を持つ言葉にはどのようなものがあるのか、疑問を抱くことがあるかもしれません。

そこで、ここでは「あながち」の意味と使い方、また類義語などについて翻訳経験のある現役ライターの筆者が説明していきます。

「あながち」の意味と使い方・例文・類義語

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それでは、以下に「あながち」の意味と使い方、また類義語などについて説明していきましょう。

「あながち」の意味は?

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まず、「あながち」には以下のような意味があります。

《判断や主張の内容を受けて、下に打ち消しを伴って》全面的に断定できないという話し手の気持ちを表す。一概に。必ずしも。

出典:明鏡国語辞典 (発行所 株式会社大修館書店)「強ち」

「あながち」の使い方・例文

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「あながち」は、後ろに「~ない」などの打消しの語句を伴って、物事を断定してしまうことができない気持ちを表す言葉です。

「あながち」を使った例文は、次のようになります。

「その成分は天然由来で安全だと彼は言うが、あながち正しいとも言い切れない」
「確かに彼は大見得を切っているように見えたが、あながちはったりとは限らない」
「前年比二倍の売上目標とは無茶なように思うが、あながち不可能なことではない」
「彼の年になって新しいことを始めるのは難しくはあろうが、あながち無理なことではない」

古語としての「あながち」の意味

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平安時代には、「あながち」は「あながちなり」という形容動詞として使われていました。意味は、「強引だ」「身勝手だ」「無理やりだ」というもので、「あな(己))」+「かち(勝ち)」から成ると言われています。「おのれ(己)」が勝つ、つまり自分勝手に物事を押し通すということを表す言葉でした。

「あながち」の語源

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こうして「身勝手なさま」という意味で使われていた「あながち」ですが、そののちには打消しの語句を伴って、現在のような「むやみに」「一概に」と副詞的に用いられるようになりました。

「あなたの言うこともあながち間違いではないですね」などと言えるのは、同等の立場にある人か、自分より目下の人に対しては使えますが、上司など目上の人に使うのは失礼な印象を与えてしまうので避けましょう。

\次のページで「「あながち」の類義語」を解説!/

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