
「泡沫」の意味と使い方・例文・類義語は?新聞記者歴29年の筆者がわかりやすく解説!
「泡沫」とは

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「泡沫」は「うたかた」と「ほうまつ」の2通りの読み方がありますが、今回のテーマは「うたかた」です。鴨長明『方丈記(ほうじょうき)』の一節「よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて」があまりにも有名ですが、意味を説明するとなると、簡単ではありません。
それではまず、以下に「泡沫」の意味と使い方について説明します。
「泡沫」の意味
「泡沫」とは本来「水面の泡」を指していましたが、その連想から「消えやすくはかない物事のたとえ」として用いられるようになりました。現在ではむしろ、たとえの表現として使われるケースのほうが多いかと思います。
英語で言えばbubble(バブル)。「バブル景気」「バブル経済」といった言葉を思い浮かべると、イメージしやすいかもしれません。限界まで膨らんだかと思えば、あっという間に弾けてしまう。そうした一過性のものを表現する言葉として用いられます。
「うたかた」の語源
「うたかた」は本来「うた(た)」と「かた」に分けられるのだそうです。
「うた(た)」は「何とは無しに。そぞろに」という様子を指します。もう少し詳しく言うと「何という理由もない。気分や物事の根拠や理由がなくとらえどころがない状態」のことです。確かに「うたた寝」というと、何とは無しにうとうととしていることですね。
「かた」はストレートに「泡」のことです。
両者を合わせると「何という理由もなく、とらえどころのない泡」ということになります。
ちなみに、漢字の「泡沫」にも触れておきましょう。実は「泡」も「沫」も中国の川の名前で、地図上には「泡江」「沫江」の名で残っています。2つを合わせて「はかないもののたとえ」として用いられていますが、頻繁に泡が立つほど流れが急な川なのでしょうか。
以上を踏まえて、使い方を例文で見ていきましょう。
「まさに泡沫のように消えた恋だったが、当時の思い出は今でも色褪せることなく胸に残っている」
「生き物とは泡沫の存在である一方、何世代も遺伝子を受け継いできた、半永久的な存在でもある」
「当時の私は、自分が生きている世界など泡沫だと考えていた」
「壮大な事業計画を泡沫の夢で終わらせてはならない」
関連する四字熟語
「泡沫」に関連する四字熟語も存在するので、紹介します。
「泡沫夢幻(ほうまつむげん)・夢幻泡沫(むげんほうまつ)」:水の泡と夢と幻。はかない様子を表すたとえ。
主に文学作品などの文章で「泡沫」より重い表現が必要な場合に用いられます。
日常会話の中で使うことは少ないですが、覚えておくと役に立つかもしれません。
「泡沫」の類語
物事がいつの間にかむなしく消え去ってしまう様子を表す言葉は、「泡沫」のほかにもいくつか存在します。
そのような「泡沫」の類義語について紹介していきましょう。
儚い(はかない)

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「はかない」は古語の「はかなし」からきています。本来は「果無し・果敢無し」と表記され、漢字の「儚」が当てられるようになったのは江戸時代以降のことなのだそうです。
「頼りにならない。あてにならない」という意味から転じて「むなしい。何の甲斐もない」あるいは「弱々しい」といったことを表現するようになりました。
『古今和歌集(こきんわかしゅう)』の「行く水に数書くよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり」の用例が有名です。「川の水に数を書いていってもあっという間にむなしく流れてしまうが、それよりも自分を思ってくれない人を思うのはなんと儚いことよ」と無常感・無力感をこめて歌っています。
例文:
「若すぎる友人の死に直面し人の命の儚さを感じる」
「人生など儚いもの。いかに目的意識を持って生きるかが大切だ」
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