
「奇遇」の意味と使い方・例文・「偶然」との違いは?新聞記者歴29年の筆者がわかりやすく解説!
「奇遇」とは

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計画して待ち合わせたわけでもないのに、顔見知りと街角でばったり。「奇遇」というと、そのようなシーンをイメージします。ただ、だれと、どんなタイミングで、などと考え出すと、使い方に迷うことがあるかもしれません。
では、以下に「奇遇」の意味と使い方を説明していきましょう。
「奇遇」の意味

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「奇遇」とは、厳密に言うと2通りの意味を持ちます。
1.思いがけず出会うこと。
2.不思議な縁で巡り会うこと。
「思いがけず」とは「予期していない」ということを表します。
「思いがけず出会うこと」の意では、会う予定がなかった友人などの知り合いに、偶然どこかで出会うこと。「しばらく会う機会がなかったが、予期していない場所・タイミングで出会うことができた」といったニュアンスを持ちます。
「不思議な縁で巡り会う」の意では、極端に言えば初対面のケースであっても使用が可能です。「振り返ってみれば、あの人との出会いは不思議な縁だった」とのニュアンスを持たせることができます。
「奇遇」の語源
「奇遇」を構成する漢字2文字を、それぞれ一つずつ見ていきましょう。
「奇」は本来の「めずらしい」というところから「めったにない。貴重な」の意味で使われています。一方の「遇」は訓読みでは「あう」と読め、「思いがけなく出会う」「巡り会う」の両方の意味を持つ漢字です。
以上を合わせて考えると、すなわち「めったにない貴重なチャンスに、思いがけなく出会う、巡り会う」となります。
中国唐代の詩人・杜甫の『相逢歌贈厳二別駕』には「垂老遇君未恨晚」とあり「年を取ってから君に出会ったことを、遅いなどと恨めしく思うようなことはない」との意味です。このケースでは「遇」は大切な人との出会いのことでしょう。
少し時代が下って宋代の柳永の『迎新春』では「更闌燭影花阴下、少年人、往往奇遇」とあります。大意は「若者は時折このような光景に思いがけなく出会う」といった感じです。ここでは、人と風景・光景・現象との出会いに対して用いています。
現代では人と人の出会いにのみ「奇遇」と表現されますが、かつてはもう少し幅広い意味で使われたこともあるようです。
以上を踏まえて、使い方を例文で見ていきましょう。
「こんなところで出会うとは奇遇だね。卒業以来音沙汰がなかったからどうしてるのか気になっていたんだけど」
「彼と会ったのは全くの奇遇だ。以前から連絡を取り合っていた訳ではない」
「旅先でたまたま訪れた場所で彼女と再会した彼だったが、努めて冷静を装ってもその奇遇に驚きを隠せなかった」
「奇遇にも彼は同じ飛行機に搭乗しており、そこで私たちは奇しくも数十年ぶりの再会を果たした」
「それにしても、もう何年も会ってなかったのにこんなところでばったりと会うなんて、本当に奇遇だ」
「偶然」との違い

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同じく「思いがけない」というニュアンスを持つ用語に「偶然」があります。共通の「ぐう」という音が含まれており、似たようなイメージで捉えられますが、同じ意味だと考えてもよいのでしょうか。
では次に、「偶然」について見ていきます。
「偶然」の意味と使い方
「偶然」は「予測していないことが起こること。思いがけないさま」という意味です。
「偶」は「たまたま」という意味で、下には主に動詞が続きます。「然」は文末で動詞的に述語として用いると「しかり」。合わせると「まさしくたまたま起こった出来事で、予想外のことである」となります。
基本的には下に「に、の」などの助詞や、「である、起きる」などの動詞が必要な語です。下に続く動詞に「出会う」とつけると「奇遇」を意味しますし、それ以外のケースでは幅広く「たまたま起こった出来事」について用いることができるでしょう。
例文:
「その求人を見つけたのは全くの偶然だった」
「駅で偶然知人と会い、そのまま一緒にランチに行った」
「遇」と「偶」の違いに注目しましょう。
「奇遇」の「遇」は「出会う・巡り会う」という意味。「偶然」の「偶」は「たまたま・思いがけず」の意味。
つまり、「奇遇」は人や現象などに出会う・巡り会うという意味を、言葉の中に含んでいます。一方の「偶然」は意外性のある様子のみを指し、通常は何が思いがけなかったのかの内容を説明する言葉が必要です。「偶然」だけでは「出会う」の意味は持たないので注意しましょう。
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