「謙虚」の意味と使い方・例文・「へりくだる」との違いは?新聞記者歴29年の筆者がわかりやすく解説!
「謙虚」とは
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「謙虚」とは、人の性格・性質、あるいは人の行為について評価するときに使われる言葉です。古くから褒めたたえる意味を込めて使われており、美徳と言ってよいかもしれません。
それでは、以下に「謙虚」の意味と使い方を説明します。
「謙虚」の意味
「謙虚」は「控えめで慎ましやかなさま」を言い表します。「人の言動や態度が非常に遠慮深く、振る舞いが物静かである様子」を指す言葉です。すぐれた人物の褒めるべき一要素として、捉えられてきました。
多くは他人からの評価として「謙虚」と言われますが、自分自身について言う場合には「謙虚に受け止める」といった形になります。また、人以外にも「態度」「心」「気持ち」「姿勢」などを評するときに使うことが可能です。
「謙虚」の由来
「謙虚」を構成する漢字2文字を、それぞれひとつずつ見ていきましょう。
「謙」という漢字は、一文字で「へりくだった態度。謙虚さ」を表しており、古くから誉め言葉として使われていたようです。中国の古典『書経(しょきょう)』には「満招損、謙受益、時乃天道」とあります。大意は「高慢な心が損を招き、へりくだった態度が益を招くのは、自然の法則である」といったところでしょうか。
一方の「虚」には「からっぽ、うわべだけ」のようなマイナスの意味もありますが、プラスの意味も併せ持つようです。
中国春秋時代に書かれた『老子』には「虚懐若谷」(大意=度量が谷のように広く非常に謙虚である)のような表現がありますし、『荘子』には「虚室生白」(大意=からっぽの部屋には日光がさして明るくなる。心をからにすれば自然と物事の真実を悟ることができる)との記述があります。
以上を合わせて考えると、「謙虚」とは「よこしまなところが全くなく素直な(からっぽな)心から、相手に対してへりくだった態度」ということを意味する熟語だと捉えてよいでしょう。
少しうがった言い方をするならば、「謙虚な態度を見せておけば、後々いい目を見るだろう」あるいは「相手に気に入られて、よくしてもらえるのでは」など、妙な意識があるようでは本当の意味で「謙虚」とは言えないようです。
関連する慣用句(四字熟語)
ちなみに、中国唐代の歴史書『晋書(しんじょ)』では「而謙虚敬慎、開襟下士」との記述もありました。「たいへん慎み深く謙虚で、下士(位が低い兵隊)に対しても心を開いている」という内容が書かれています。
このくだりの「謙虚敬慎」の部分を抜き出して、慣用句(四字熟語)とすることもあるようです。覚えておくと、役に立つかもしれません。
「謙虚」の使い方・用例
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では以上を踏まえて、「謙虚」の使い方を例文を使って見ていきましょう。
この言葉は、たとえば以下のように用いることができます。
例文:
「あなたは成功してからも変わることなく、謙虚に人の話に耳を傾けているところが素晴らしい」
「彼は強気な性格ではあるが、その一方で自分の誤ちについては謙虚に認める面も備えている」
「確かに彼には才能があるのかもしれないが、何よりもそれに驕ることなく仕事に対して謙虚さを持って取り組む姿勢が目標達成につながったのだろう」
「自分の軽はずみな行動が招いた失敗を謙虚に受け止めた」
「あの先生は生徒に敬意を持って接し、彼らの言うことに謙虚に耳を傾けている」
「へりくだる」との違い
「へりくだる」は漢字を使って表記すると「謙る・遜る」となります。「謙遜」という熟語の「謙」と「遜」ですね。敬語を説明するときによく使われる言葉ですが、具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。
では、「へりくだる」という語の意味と使い方、「謙虚」との違いについて見ていきます。
「へりくだる」の意味と使い方・例文
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「へりくだる」とは「相手を敬って自分(立場)を低くする」という意味の動詞です。『日本書紀』にはすでに「儉下(へりくだる)」と言う形で登場しており、日本では古くから使われていた言葉だと言えます。
具体的な特徴を以下の3つにまとめてみました。
・相手を敬うための行為。
・動作する主体(自分)を低める表現。
・相手を間接的に高めたり、聞き手への敬意の表現。
以上を踏まえて、例文を見ていきましょう。
例文:
「彼は職場では常に周囲に対してへりくだった態度で接している」
「今後の処遇に関わってくるとあれば、笑顔でへりくだってみせるのも手である」
「本来はそこまで周りにへりくだる必要などないのだが、根が実直なのだ」
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