「堪える」の意味と使い方・例文・「応える」との違いは?新聞記者歴29年の筆者がわかりやすく解説!
「堪える」とは
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「堪える」という表記には「こたえる」の他に「たえる」「こらえる」といった読み方がありますが、今回のテーマは「こたえる」です。主に厳しい状況に陥ったときに用いられます。
それでは、「堪える」の意味と使い方を解説していきましょう。
「堪える」の意味
「堪える」とは「耐える。がまんする。こらえる」ということを意味します。
動詞の下について「持ち堪える」「踏み堪える」といった形で使われることも多いです。意味は「苦しい状況に負けず、耐え続けて(その状態で)我慢をする」となります。
もちろん苦しいことがあるからこそ「堪える」必要があるのですが、具体的には「暑さ・寒さ」「空腹」「ケガや病気などの痛み」などの物理的なもの、「怒り・悲しみ」などの感情から発せられるものと、2種類が考えられるでしょう。どちらかというと、外的な要因に対抗するというよりは、内的な苦しみに耐え忍ぶニュアンスの方が強調されます。
漢字の「堪」
漢字の「堪」を詳しく見ていきましょう。
本来は「能力があって任務にこたえられる。負担できる」ということを言い表していました。そこから転じて「我慢する」の意味を持つようになったようです。
「子曰く~」で知られる『論語』に用例があり「一簞食、一瓢飲、在陋巷、人不堪其憂」との記述があります。回という人物を称えた内容で、大意は「少しのご飯と少しの汁で腹を満たし、住むのは汚い家。普通の人なら我慢できまい」といった感じでしょう。
逆境に耐え忍ぶ様子が、現代の「堪える」の意味にも繋がっています。
「今日も炎天下の中営業回りだが、この暑さに堪えられるかどうか心配だ」
「これだけの備えがあれば、災害時でも一週間は持ち堪えられるだろう」
「ここ最近も倒産の危機が訪れたが、何とか踏み堪えて持ち直した」
「病状の回復具合は思わしくなかったものの、持ち堪えて出版までこぎつけた」
「堪」忍袋
落語の演目としても有名な「堪忍袋」にも「堪(える)」の字が使われています。人が怒りを我慢できる度量・心の広さを袋にたとえて「堪忍袋」と言いました。つまり、このケースでは何を「堪える」のかというと、「怒り」です。
「堪えられない」?
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「堪忍袋の緒が切れた」と言うと、「怒りに持ち堪えられなかった」すなわち「(怒りを)我慢することができなかった」という意味になります。
しかし、日常会話の中で「堪えられない」という否定形で用いた場合、ほとんどのケースでは違った意味となるので、気を付けましょう。「この上なく良い」「なんとも言えず素晴らしい」ことを指す表現です。
実は「堪」には反語的な用法(「我慢できようか、いやできまい」のような使い方)があり、中国唐代の詩人・李賀の『出城』には「無印自堪悲」(官職がないという悲しみを我慢することができようか、いやできまい)との記述があります。
本来はネガティブな要素に対して抱く感情の表現でしたが、いつの間にか逆の要素について言い表す言葉に変化しているのは面白いですね。
「仕事を終えた後に飲む一杯は堪えられない」
「志望校の合格発表の日、自分の番号を見つけた時はまさに堪えられない瞬間だった」
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