
「捻出」の意味と使い方・例文・「工面」との違いは?新聞記者歴29年の筆者がわかりやすく解説!
「捻出」とは

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「捻出」は「拈出」と表記されることもあります。通常「捻出する・できる」という形で用いられることが多い言葉です。では、何を、どのようにすれば「捻出」なのでしょうか。
まず、以下に「捻出」の意味と使い方を説明していきます。
「捻出」の意味
「捻出」は、以下のような意味を持つ言葉です。
1.いろいろ工夫をして、ようやく考え出すこと。
2.苦心をして(費用などを)つくりだすこと。
何を「捻出」するのかについては、いくつかのことが考えられます。主なものを挙げると「お金(費用・資金・利益など)」「時間」「アイデア」「スペース」などです。いずれも「ようやく考え出す」「苦心してつくりだす」のどちらかに当てはまります。
また、「工夫して」「苦心して」というニュアンスを持つ点も、非常に重要です。努力もせずあっという間に出来上がってしまっては「捻出」とは言えません。何らかの苦労の末にひねりだされたものだけが、「捻出」されたものだと言うことができます。
漢字の「捻」
「捻出」を構成している2つの漢字のうち、「捻」について説明しましょう。
「捻」は本来「指で物を取る・手に持つ」ということを表していました。そうしたイメージから「指でよじる・よる・ひねる」意味につながっていったようです。
実際に「指でよじる・よる・ひねる」動作からは「捻線」「捻子(ねじ)」、「よじれるような(思いをする)」という比喩的な連想からは「捻転」「捻出」などの熟語が生まれています。
「捻出」の使い方・例文
次に、「捻出」の使い方を例文を使って見ていきましょう。
この言葉は、たとえば以下のように用いることができます。
例文:
「他店との差別化を図るため、新メニュー開発のためのアイディアを捻出する」
「限られた空間の中で座席スペースを捻出するには、窓の位置を犠牲にするほかない」
「施設の建て替えが最優先の課題とされたが、どうやってその資金を捻出するのかについては、棚上げされたままである」
「友人からどうしても会いたいと連絡があり、殺人的なスケジュールから何とか時間を捻出して会うことにした」
「工面」との違い

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「捻出」と意味が近い言葉に、類語の「工面」があります。会話の中では、お互いをそのまま置き換えて問題なさそうにも感じられますが、本当はどうなのでしょうか。
では、「工面」の意味と使い方、「捻出」との違いを見ていきましょう。
「工面」の意味と使い方・例文
「工面」には、以下のような意味があります。
1.必要な金銭・品物などを工夫・やりくりしてそろえること。
2.(1.の意味から)金のやりくり、金回り。
3.物事の手段・方法に関する工夫、算段。
江戸時代の初め頃までは「ぐめん」と濁音が入っていたそうで、意味も「手段・方法に関する工夫」を指す表現として使われていたと言います。江戸時代中期ごろになって、金銭面での使用に特定され、それが現代まで続いているようです。
「金銭・品物などを工夫・やりくりしてそろえること」の意味で使う場合には、「工面がつく/つかない、できる/できない」という表現になります。以下の例文で見ていきましょう。
例文:
「何とか費用を工面して、世界一周の旅に出ようと思っている」
「今月中に運営資金が工面できなくては、オープンに間に合わなくなってしまうぞ」
「今日になってとうとう、どうしても金の工面がつかないと白状した」
「軍資金の工面が、喫緊の課題である」
つまり、「捻出」は「工夫や苦心をして、ひねり出す(つくり出す)こと」を言い表しており、お金だけではなく「時間」「アイデア」「スペース」など幅広く用いることができる言葉です。一方、「工面」は本来「手段・方法に関する工夫」を指しましたが、現在では主に「金銭・品物などを工夫・やりくりしてそろえること」を意味し、お金に関わることに直結する言葉となりました。
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