言葉の意味

「泰然」の意味と使い方・「悠然」「平然」との違いは?新聞記者歴29年の筆者が解説!

みなさんは「泰然(たいぜん)」という言葉を聞いたことがありますか?「泰然たる」「泰然自若(たいぜんじじゃく)」などの形でよく用いられています。主に人の状態について言い表す言葉ですが、実際にどのような状態が「泰然」なのか、疑問に思う方もおられるかと思います。また、類語の「悠然(ゆうぜん)」「平然(へいぜん)」といった語とは、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。今回の記事では「泰然」の意味と使い方、また「悠然」「平然」との違いを、新聞記者歴29年の筆者が詳しく解説していきます。

「泰然」とは

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「泰然」と聞くと、懐(ふところ)の大きな堂々たる人物をイメージしますが、具体的にどのようなことを指しているのか、説明するのは難しいですね。

それではまず、「泰然」の意味と使い方から見ていきましょう。

「泰然」の意味

「泰然」の意味は「どっしりとしていて落ち着いたさま」となります。主に人の様子を言い表すときに用いられる言葉です。

この場合、物事に対して落ち着いていることは肯定的に捉えられ、他人に対して使う場合には褒め言葉となります。また、自分に対して使う場合であれば、普段の心がけやこうありたいという願望の意が込められるでしょう。

マイナスイメージは持たないので、例えば「仕事が遅く泰然だと怒られた」といったような、貶める意味で用いるのはNGです。

「泰然」の由来

「泰然」で使われている漢字を見てみましょう。

「泰」は平穏である、ゆったり落ち着いている、やすらかな様子を言い表しています。「然」はそのようであること、さまという意味です。

古い用例では、中国明代に書かれた歴史書『元史・許衡伝』に「家貧窮耕、粟熟則食粟、不熟則食糠覈菜茹、処之泰然」とあります。「貧しく非常に粗末な食べ物しかなくとも動じない」という内容の一文です。

また「泰然自若」という四字熟語がありますが、「自若」は「普段と変わらず、動ずるところがないさま」ということを指すので「泰然」とは似た意味ですね。こうした似た意味の語を重ねることで、よりいっそう「落ち着いているさま」を強調する語となっています。

「泰然」の使い方・例文

以上を踏まえて、「泰然」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

この言葉は、たとえば以下のように用いることができます。

例文:

「彼があまりに泰然としているので、慌てている自分が恥ずかしくなった」

「突然の悲報が飛び込んできても、いつもと変わらず泰然と座っていた」

「彼は齢は若いが、何事にも泰然と構えている」

「泰然とした態度で、前を通り過ぎて行った」

「悠然」「平然」との違い

「悠然」と「平然」、どちらも慌てず騒がず、ゆっくり構えている様子を言い表す言葉です。では「泰然」とは全く同じ意味なのでしょうか?

実は細かく見ていくと、少しずつニュアンスに違いがあります。以下に詳しく説明していきましょう。

「悠然」の意味

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「悠然」とは「ゆったりと落ち着いているさま。のんびりしたさま」を指す言葉です。

「泰然」と同じく、主に人の様子を言い表すときに用いられます。

古い用例では、中国晋代の詩人で自然詩人として知られる陶淵明(365ー427年)の『飲酒』という詩に「采菊東籬下、悠然見南山」とありました。「ゆったりとした思いで南山を見る」という意味ですから、「悠然」の意味は現代と変わりません。

ゆったりしていることは肯定的に捉えられるケースが比較的多いようですが、揶揄するような文脈でもしばしばみられます。ですから、「悠然」は幅広い評価が可能で、柔軟な使い方ができる言葉だと言えるでしょう。

「平然」の意味

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「平然」とは「物事にあたって平気なさま、動じないさま」を言い表しています。「平気」は「平然」の類義語ですが、ニュアンス的にかなり近いといえるでしょう。

「平」は本来「平和なさま、穏やかなさま」を表していましたが、次第にややニュアンスが変わって「周りの状況・出来事に左右されない、気にかけない、意に介さない」の意味でも使われるようになったようです。

古い用例といってもそれほど昔ではなく、明治の幻想文学作家・泉鏡花(1873-1939年)の『外科室』に「渠(かれ)は露ほどの感情をも動かしおらざるもののごとく、虚心に平然たる状(さま)露(あらわ)れて」という表現がありました。

医者の感情に左右されず何事にも動じない様子が、「平然」という言葉を使って描かれています。

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