
「払拭」の意味と使い方・例文・「一掃」との違いや言い換え表現は?現役記者がサクッとわかりやすく解説!
上記の6番目の例題のように、「一掃」は「野球で出塁中のランナー全員をホームインさせること」という特殊な使い方もあるので覚えておきましょう。
「払拭」と「一掃」は互いにどのように言い換えられるのか?

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それでは、「払拭」と「一掃」がお互いどのように言い換えられるのか見ていきましょう。
「払拭」と「一掃」の使い方を比較すると以下のようになります。
「一掃」:「その店ではリニューアルオープンに向けて在庫一掃セールを実施している」(その店ではリニューアルオープンに向けて商品の在庫を一度に全て売り払うためのセールを実施している)
「払拭」:「夫と家事の役割分担についてのルールを決め、夫婦間の不満を払拭する」(夫と家事の役割分担についてのルールを決め、夫婦間の不満を取り除く)
つまり、「一掃」は「一度に残さず何かを取り除くこと」、「払拭」は「(不満や不安などの)良くないもの、都合の悪いことを完全に取り除いてそこにない状態にすること」を表すというニュアンスの違いがあります。
そのため、「払拭」で示した例文は全てそのまま「一掃」で言い換えることができますが、その場合「取り除く」という意味がより強く感じられる文になるでしょう。
一方、「一掃」の例文に挙げた「警備隊によって反抗的な者は瞬く間に一掃された」のように、「一掃」する対象が具体的な事物の場合は「一掃」を「払拭」で言い換えることはできません。これは、「払拭」が「良くないものを取り除く」という意味を表しているため、「心」や「心配」、「空気」など抽象的な対象にしか使えないことを意味しています。
「払拭」は「一掃」で言い換えられるが、その逆は場合による
以上、「払拭」の意味と使い方、「一掃」との違いや言い換え表現についてまとめました。
この言葉は、「何かを完全に取り除くこと」を表し、何らかの望ましくないイメージ・不安・不満・不信感といった良くないものをすっかりとそこから消し去ることについて述べる場合に用います。そのため、「払拭」する対象は抽象的な事物に限られ、具体的に存在するような事物を対象とする場合は使用できません。
また「一掃」もほとんど同じ意味ですが、この場合は「一度に」何かを完全に取り除くことを表し、「残っている在庫を一掃する」といったように不安などの精神的なこと以外についていう場合にも多く用いられています。「一掃」はこのほか、「走者一掃」のように野球での特殊な使い方もあるので覚えておきましょう。
「払拭」と「一掃」のこのような違いのため、「払拭」はそのまま「一掃」で言い換えることができますが、「取り除く」という意味はより強く感じられるようになります。一方、「一掃」の「払拭」による言い換えは、「一掃」する対象が抽象的な事物の場合に限り可能なので注意が必要です。
これらの語は近い意味がありますが、それぞれ微妙に意味や使い方が異なるため、場面に応じて適切に使い分けることができます。