「払拭」(読み方:「ふっしょく」または「ふっしき」)という言葉は、「不安を払拭する」「イメージを払拭する」などの形でよく用いられています。

さまざまな場面で比較的よく用いられる語ではありますが、この言葉が具体的にどのようなことを表しているのか、また同じような意味がある「一掃」という語とはどのような違いがあるのか、中には疑問を抱くこともあるかもしれません。

そこで、ここでは「払拭」の意味と使い方、また「一掃」との違いや言い換え表現について、科学・技術系記事の執筆を中心に活躍する筆者が説明していきます。

「払拭」の意味と使い方・例文・「一掃」との違いや言い換え表現

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それでは、以下に「払拭」の意味と使い方、また「一掃」との違いや言い換え表現を説明していきます。

「払拭」の意味は?

まず、「払拭」には「すっかり拭い去ること」という意味があり、「不信感・不快感・不安・罪悪感などの精神的に良くないものや、悪いイメージ・噂・悪評判などのネガティブな事を取り除いて完全に消し去る、取り去ること」を表す語となっています。

「払拭」は、払いのけることや除去することを意味する「払う(はらう)」と、汚れをふき清めることや恥・汚点などを消し去ることを意味する「拭う(ぬぐう)」から成る同訓異字の熟語です。

「払拭」の使い方は?

次に、「払拭」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いることができます。

「全館リニューアルを行い、時代遅れの古びたイメージを払拭する」

「大々的に発表されたその改革は、世間に広がっていた悪い噂を払拭することが狙いであった」

「社長の交代で旧弊が払拭され、会社の風通しは良くなったように思える」

「彼は浮気を否定したが、不信感を払拭することができなかった」

「それまでのスキルとこれからの方向性を一から整理し直し、転職への漠然とした不安を払拭する」

「その著者の意見が、私の偏見を払拭した」

「初戦惨敗というその苦い経験を払拭しての初勝利であった」

「払拭」と「一掃」の違いは?

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次は、「払拭」と近い意味のある「一掃」という語との違いについて見ていきましょう。

まず、「一掃」には「一度にすっかりと拭い去ること」といった意味があり、例えば以下のように使われます。

「その事実によって悪評を一掃してしまう以外に方法はなかった」

「彼の登場によって今までの空気が一掃された」

「自信の籠もったその言葉はそれまで不安に襲われていた人々の心を一掃した」

「警備隊によって反抗的な者は瞬く間に一掃された」

「内閣の汚職が明るみに出たことで、閣僚は一掃された」

「その強打者による打球は左中間を深々と破り、走者を一掃させた」

\次のページで「「払拭」と「一掃」は互いにどのように言い換えられるのか?」を解説!/

上記の6番目の例題のように、「一掃」は「野球で出塁中のランナー全員をホームインさせること」という特殊な使い方もあるので覚えておきましょう。

「払拭」と「一掃」は互いにどのように言い換えられるのか?

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それでは、「払拭」と「一掃」がお互いどのように言い換えられるのか見ていきましょう。

「払拭」と「一掃」の使い方を比較すると以下のようになります。

「一掃」:「その店ではリニューアルオープンに向けて在庫一掃セールを実施している」(その店ではリニューアルオープンに向けて商品の在庫を一度に全て売り払うためのセールを実施している)

「払拭」:「夫と家事の役割分担についてのルールを決め、夫婦間の不満を払拭する」(夫と家事の役割分担についてのルールを決め、夫婦間の不満を取り除く)

つまり、「一掃」は「一度に残さず何かを取り除くこと」「払拭」は「(不満や不安などの)良くないもの、都合の悪いことを完全に取り除いてそこにない状態にすること」を表すというニュアンスの違いがあります。

そのため、「払拭」で示した例文は全てそのまま「一掃」で言い換えることができますが、その場合「取り除く」という意味がより強く感じられる文になるでしょう。

一方、「一掃」の例文に挙げた「警備隊によって反抗的な者は瞬く間に一掃された」のように、「一掃」する対象が具体的な事物の場合は「一掃」を「払拭」で言い換えることはできません。これは、「払拭」が「良くないものを取り除く」という意味を表しているため、「心」や「心配」、「空気」など抽象的な対象にしか使えないことを意味しています。

「払拭」は「一掃」で言い換えられるが、その逆は場合による

以上、「払拭」の意味と使い方、「一掃」との違いや言い換え表現についてまとめました。

この言葉は、「何かを完全に取り除くこと」を表し、何らかの望ましくないイメージ・不安・不満・不信感といった良くないものをすっかりとそこから消し去ることについて述べる場合に用います。そのため、「払拭」する対象は抽象的な事物に限られ、具体的に存在するような事物を対象とする場合は使用できません

また「一掃」もほとんど同じ意味ですが、この場合は「一度に」何かを完全に取り除くことを表し、「残っている在庫を一掃する」といったように不安などの精神的なこと以外についていう場合にも多く用いられています。「一掃」はこのほか、「走者一掃」のように野球での特殊な使い方もあるので覚えておきましょう。

「払拭」と「一掃」のこのような違いのため、「払拭」はそのまま「一掃」で言い換えることができますが、「取り除く」という意味はより強く感じられるようになります。一方、「一掃」の「払拭」による言い換えは、「一掃」する対象が抽象的な事物の場合に限り可能なので注意が必要です。

これらの語は近い意味がありますが、それぞれ微妙に意味や使い方が異なるため、場面に応じて適切に使い分けることができます。

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言葉の意味

「払拭」の意味と使い方・例文・「一掃」との違いや言い換え表現は?現役記者がサクッとわかりやすく解説!

「払拭」(読み方:「ふっしょく」または「ふっしき」)という言葉は、「不安を払拭する」「イメージを払拭する」などの形でよく用いられています。

さまざまな場面で比較的よく用いられる語ではありますが、この言葉が具体的にどのようなことを表しているのか、また同じような意味がある「一掃」という語とはどのような違いがあるのか、中には疑問を抱くこともあるかもしれません。

そこで、ここでは「払拭」の意味と使い方、また「一掃」との違いや言い換え表現について、科学・技術系記事の執筆を中心に活躍する筆者が説明していきます。

「払拭」の意味と使い方・例文・「一掃」との違いや言い換え表現

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それでは、以下に「払拭」の意味と使い方、また「一掃」との違いや言い換え表現を説明していきます。

「払拭」の意味は?

まず、「払拭」には「すっかり拭い去ること」という意味があり、「不信感・不快感・不安・罪悪感などの精神的に良くないものや、悪いイメージ・噂・悪評判などのネガティブな事を取り除いて完全に消し去る、取り去ること」を表す語となっています。

「払拭」は、払いのけることや除去することを意味する「払う(はらう)」と、汚れをふき清めることや恥・汚点などを消し去ることを意味する「拭う(ぬぐう)」から成る同訓異字の熟語です。

「払拭」の使い方は?

次に、「払拭」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いることができます。

「全館リニューアルを行い、時代遅れの古びたイメージを払拭する」

「大々的に発表されたその改革は、世間に広がっていた悪い噂を払拭することが狙いであった」

「社長の交代で旧弊が払拭され、会社の風通しは良くなったように思える」

「彼は浮気を否定したが、不信感を払拭することができなかった」

「それまでのスキルとこれからの方向性を一から整理し直し、転職への漠然とした不安を払拭する」

「その著者の意見が、私の偏見を払拭した」

「初戦惨敗というその苦い経験を払拭しての初勝利であった」

「払拭」と「一掃」の違いは?

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次は、「払拭」と近い意味のある「一掃」という語との違いについて見ていきましょう。

まず、「一掃」には「一度にすっかりと拭い去ること」といった意味があり、例えば以下のように使われます。

「その事実によって悪評を一掃してしまう以外に方法はなかった」

「彼の登場によって今までの空気が一掃された」

「自信の籠もったその言葉はそれまで不安に襲われていた人々の心を一掃した」

「警備隊によって反抗的な者は瞬く間に一掃された」

「内閣の汚職が明るみに出たことで、閣僚は一掃された」

「その強打者による打球は左中間を深々と破り、走者を一掃させた」

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