「無垢」(読み方:「むく」)という言葉は、「純粋無垢」「白無垢」などの形でよく使われています。

汚れのない美しいものや混じりけのないものについていう時に使う言葉ですが、具体的にはどのような使い方をするのか、また近い意味のある「純粋」「潔白」「清純」「純潔」という語とはどのような違いがあるのか、中には疑問を抱くことがあるかもしれません。

そこで、ここでは「無垢」の意味と使い方、類義語である「純粋」「潔白」「清純」「純潔」との違いについて、科学・技術系記事の執筆を中心に活躍する筆者が解説していきます。

「無垢」の意味と使い方・例文

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それでは、始めに「無垢」の意味と使い方を説明していきます。

「無垢」の意味は?

まず、「無垢」には以下のような複数の意味があります。

1. 仏教で、いっさいの煩悩(ぼんのう)を離れて、清浄なこと。

2. 心身に汚れがなく、清らかなこと。うぶなこと。

3. まじりもののないこと。純粋なこと。

4. 和服で、表裏を同質・同色の無地で仕立てた長着。

出典:明鏡国語辞典(発行所 株式会社大修館書店)「無垢」

上記の中でも一般に2・3・4の意味で使われており、「心身が汚れなく清く美しいこと」「他の物が混ざっていないこと」「同色無地でつくられた和服」のこと表す語となっています。

また、「無垢」は、「人間の心身の苦しみを生みだす心の作用」を表す仏教用語の「煩悩(ぼんのう)」や「汚(けが)れ」を意味する「垢」(「あか」とも読む)を「無いこと」を意味する「無」によって打ち消すことで成り立っている熟語です。

「無垢」の使い方は?

次に、「無垢」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いることができます。

「彼女は世間ずれしたところがなく、子供のように無垢で愛らしい少女だった」

「その少女は、僕の目からは無垢なる子供に見えたが、女性視点では女の芽生えが窺えるという」

「江戸時代においては、我が子の健康という無垢なる願いも叶えられることは困難だった」

「世の中のことを何もしらない純真無垢な心を持つ赤ちゃんは、まるで透き通るかのように澄み切った目をしている」

「心に受けた衝撃のあまりの強さに、少年の純真無垢な魂は耐えきれなかった」

「白無垢は打掛や小物に至るまでの一切を白一色で統一した和装の婚礼衣装だ」

「彼は金無垢の高級時計を父から譲り受けたが、オフィスでは派手過ぎてなかなか使う機会がないようだ」

「十五年ほど前に買った銀無垢のジッポーと似たようなものがショーケースの目立つ場所に飾られていた」

「建築に無垢材を用いる技術が高く、豊富な知識を持っているとして、日本の大工を紹介された」

「この高度に情報化が進んだ今日においては、完全に無垢清浄な社会など空想の産物に過ぎない」

「彼女は天真爛漫で純粋無垢だが、自分で決めたことは絶対に変えない部分がある」

「無垢」は、上記のように「他のものが混ざっていないこと」「汚れがなく澄んでいて美しいこと」「同色の無地で仕立てた和服」についていう場合に、「無垢な~」「無垢なる~」や「金無垢」「純真無垢」「白無垢」などの「~無垢」といった形で使うことができます。

\次のページで「「無垢」の類義語は?」を解説!/

「無垢」の類義語は?

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それでは次は、「無垢」の類義語・類語である「純粋」「潔白」「清純」「純潔」との違いについて見ていきましょう。

「無垢」と「純粋」の違いは?

まず、「純粋」には以下の意味があり、この語と「無垢」の使い方を比較すると以下のようになります。

1. ほかのものが混じっていないこと。

2. 気持ちに私欲や打算のないこと。

出典:明鏡国語辞典(発行所 株式会社大修館書店)「純粋」

「純粋」:「フレーバーウォーターはミネラルウォーターとは違って純粋の水ではなく、フルーツなどを少量加えてつくられた清涼飲料水だ」
(≒「フレーバーウォーターはミネラルウォーターとは違って混じりけのない水ではなく、フルーツなどを少量加えてつくられた清涼飲料水だ」)

「無垢」:「赤ちゃんはどこまでも透き通った無垢な目でこちらを眺めていた」
(≒「赤ちゃんはどこまでも透き通った汚れのない済んだ美しい目でこちらを眺めていた」)

「無垢」:「半年に渡る節約生活の末、念願だった金無垢の時計を手に入れる」
(≒「半年に渡る節約生活の末、念願だった純金でできた時計を手に入れる」)

このように、「純粋」は「私欲や損得勘定といった良くない考えが混じっていないこと」「ある物のそれ自身に他のものが混じっていないこと」、「無垢」は「心身に汚れがなく澄んでいて美しいこと」「他のものが混じっていないこと」を表すというニュアンスの違いがあります。

つまり、「純粋」と「無垢」は、「他の物が混じっていないこと」という意味ではほぼ同じ意味です。しかし、もう一方の意味では、「無垢」が「心身が清らかなこと」であるのに対し、「純粋」は「私欲や打算のないこと」と意味が狭いような印象を受けます。

「無垢」と「潔白」の違いは?

まず、「潔白」には以下の意味があり、この語と「無垢」の使い方を比較すると以下のようになります。

\次のページで「「無垢」と「清純」の違いは?」を解説!/

1. 心やおこないが正しいこと。うしろぐらいところがないこと。

2. 清くて白いさま。

出典:大辞林 第三版(発行所 株式会社 三省堂)「潔白」

「潔白」: 「彼女は、自身の行動によって自分の潔白を示さなくてはならない」
(≒「彼女は、自身の行動によって自分に後ろ暗いところがないことを示さなくてはならない」)

「無垢」:「あのような無垢な瞳をした子供が犯人であるなんて信じられない」
(≒「あのような汚れを知らず世間ずれしていないような瞳をした子供が犯人であるなんて信じられない」)

このように、「潔白」は「気持ちや行いが正しいことや悪いところがないこと」を表す一方で、「無垢」は「(汚れを知らないゆえに)気持ちや行いが良いこと」と解釈できる意味を持っています。また、「無垢」の「清らかであること」には「正しさ」は含まれないという違いがあることも理解できるでしょう。

また、「潔白」は、今では「清くて白いさま」という意味ではほとんど使われず、この意味で使われているのは昔の文献などに限られるようです。

「無垢」と「清純」の違いは?

まず、「清純」には以下の意味があり、この語と「無垢」の使い方を比較すると以下のようになります。

きよらかでけがれのないこと。清楚で純真なさま。

出典:大辞林 第三版(発行所 株式会社 三省堂)「清純」

「清純」:「彼女には宮廷婦人たちの上品な美しさとは違う少女の面影を残したような清純な美しさがあった」
(≒「彼女には宮廷婦人たちの上品な美しさとは違う少女の面影を残したような清らかな美しさがあった」)

「無垢」:「養護施設で育った無垢な少女の成長を描いたその映画は、東京の道玄坂で上映された」
(≒「養護施設で育った清らかな少女の成長を描いたその映画は、東京の道玄坂で上映された」)

\次のページで「「無垢」と「純潔」の違いは?」を解説!/

このように、「清純」と「無垢」は「清らかなこと」という共通の意味を持っていますが、「無垢」の例文で「無垢」を「清楚」と言い換えると微妙にニュアンスが違ってきます。つまり、「清純」には、「無垢」にはない「清楚」といった意味を含んでいると考えられるでしょう。

「無垢」と「純潔」の違いは?

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まず、「純潔」には以下の意味があり、この語と「無垢」の使い方を比較すると以下のようになります。

1. けがれがなく心が清らかなこと。

2. 異性との性的なまじわりがなく心身が清らかなこと。

出典:大辞林 第三版(発行所 株式会社 三省堂)「純潔」

「純潔」:「彼は父母が自慢するほどの誇り高い純潔な青年であったが、それは都会に出るまでだった」
(≒「彼は父母が自慢するほどの誇り高い心の清らかな青年であった、それは都会に出るまでだった」)

「無垢」:「青年期に到達した人間が無垢なる心を持っているなんてとても信じられない」
(≒「青年期に到達した人間が清らかなる心を持っているなんてとても信じられない」)

このように、「純潔」と「無垢」も、「心身に汚れがないこと、清らかであること」といった意味ではほぼ同じ意味を持っています。また、「無垢」は、「純潔」が含む「異性との性的なまじわりがないこと」といった意味でも使われることがあるので、この意味でも、両者の意味は似通っていると言えるでしょう。

「無垢」と「純潔」は「清らか」、「純粋」は「私欲無し」、「潔白」は「正しい」、「清純」は「清楚」

以上、「無垢」の意味と使い方、類義語である「純粋」「潔白」「清純」「純潔」との違いについてまとめました。

この言葉には複数の意味がありますが、一般的に「心身に汚れがなく清らかなこと」「混じりけがないこと」「同色無地で仕立てられた和服」のことをいい、「無垢な~」「無垢なる~」や「~無垢」といった形で用いられます。

また、「純粋」「潔白」「清純」「純潔」は「無垢」と同じように「清らかであること」という意味を持っていますが、「純潔」と「無垢」がほぼ同じ意味と言えるのに対し、「純粋」「潔白」「清純」では「無垢」と異なるニュアンスを含むことがあるので注意が必要です。

それは、「純粋」では「私欲や打算のないこと」と意味が狭く、「潔白」では「無垢」にはない「正しさ」という意味を含み、「清純」では「無垢」にはない「清楚」といった意味を含んでいます。

このように、これらの語はそれぞれ異なるニュアンスがあるので、場面によって適切な形で使い分けると良いでしょう。

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言葉の意味

「無垢」の意味と使い方・例文・類義語は?現役記者がサクッとわかりやすく解説!

「無垢」(読み方:「むく」)という言葉は、「純粋無垢」「白無垢」などの形でよく使われています。

汚れのない美しいものや混じりけのないものについていう時に使う言葉ですが、具体的にはどのような使い方をするのか、また近い意味のある「純粋」「潔白」「清純」「純潔」という語とはどのような違いがあるのか、中には疑問を抱くことがあるかもしれません。

そこで、ここでは「無垢」の意味と使い方、類義語である「純粋」「潔白」「清純」「純潔」との違いについて、科学・技術系記事の執筆を中心に活躍する筆者が解説していきます。

「無垢」の意味と使い方・例文

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それでは、始めに「無垢」の意味と使い方を説明していきます。

「無垢」の意味は?

まず、「無垢」には以下のような複数の意味があります。

1. 仏教で、いっさいの煩悩(ぼんのう)を離れて、清浄なこと。

2. 心身に汚れがなく、清らかなこと。うぶなこと。

3. まじりもののないこと。純粋なこと。

4. 和服で、表裏を同質・同色の無地で仕立てた長着。

出典:明鏡国語辞典(発行所 株式会社大修館書店)「無垢」

上記の中でも一般に2・3・4の意味で使われており、「心身が汚れなく清く美しいこと」「他の物が混ざっていないこと」「同色無地でつくられた和服」のこと表す語となっています。

また、「無垢」は、「人間の心身の苦しみを生みだす心の作用」を表す仏教用語の「煩悩(ぼんのう)」や「汚(けが)れ」を意味する「垢」(「あか」とも読む)を「無いこと」を意味する「無」によって打ち消すことで成り立っている熟語です。

「無垢」の使い方は?

次に、「無垢」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いることができます。

「彼女は世間ずれしたところがなく、子供のように無垢で愛らしい少女だった」

「その少女は、僕の目からは無垢なる子供に見えたが、女性視点では女の芽生えが窺えるという」

「江戸時代においては、我が子の健康という無垢なる願いも叶えられることは困難だった」

「世の中のことを何もしらない純真無垢な心を持つ赤ちゃんは、まるで透き通るかのように澄み切った目をしている」

「心に受けた衝撃のあまりの強さに、少年の純真無垢な魂は耐えきれなかった」

「白無垢は打掛や小物に至るまでの一切を白一色で統一した和装の婚礼衣装だ」

「彼は金無垢の高級時計を父から譲り受けたが、オフィスでは派手過ぎてなかなか使う機会がないようだ」

「十五年ほど前に買った銀無垢のジッポーと似たようなものがショーケースの目立つ場所に飾られていた」

「建築に無垢材を用いる技術が高く、豊富な知識を持っているとして、日本の大工を紹介された」

「この高度に情報化が進んだ今日においては、完全に無垢清浄な社会など空想の産物に過ぎない」

「彼女は天真爛漫で純粋無垢だが、自分で決めたことは絶対に変えない部分がある」

「無垢」は、上記のように「他のものが混ざっていないこと」「汚れがなく澄んでいて美しいこと」「同色の無地で仕立てた和服」についていう場合に、「無垢な~」「無垢なる~」や「金無垢」「純真無垢」「白無垢」などの「~無垢」といった形で使うことができます。

\次のページで「「無垢」の類義語は?」を解説!/

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