「契機」(読み方:「けいき」)という言葉は、「~を契機として」「~が契機となって」などの形でよく用いられています。

取り立てて使い方に難しいところがある語ではありませんが、この言葉は具体的にどのようなを表していて、似た意味のある「原因」「発端」「端緒」「切っ掛け」という語とはどのような違いがあるのか疑問に思うこともあるかもしれません。

そこで、ここでは「契機」の意味と使い方、また「原因」「発端」「端緒」「切っ掛け」との違いについて、科学・技術系記事の執筆を中心に活躍する筆者が解説していきます。

「契機」の意味と使い方・例文・「原因」との違い

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それでは、始めに「契機」の意味と使い方、また「原因」との違いについて説明していきます。

「契機」の意味は?

まず、「契機」には「動機、きっかけ」といった意味があり、「何かの物事を始める直接的な原因」を表します。

また、その由来はドイツ語の「Moment」から来ていると言われており、さらにその「Moment」の語源はラテン語の「mouere」と言われています。

ちなみに、「mouere」は「事物を動かして決定する根拠のこと」を意味するそうです。

「契機」の使い方は?

次に、「契機」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

この言葉は、たとえば以下のように用いることができます。

「出産を契機に栄養管理への関心が高まった」

「失敗を契機に全体的な作業手順を見直すことにした」

「知人の死を契機に生命保険に関心を寄せるようになった」

「異動を契機に転職を考え始める」

「遠方の企業への就職を契機に一人暮らしを始めた」

「東京オリンピックの開催は日本の産業発展の契機となった」

「第二次世界大戦はアメリカの政治と軍事の関係を大きく変化させる契機となった」

「それは新聞記者であった司馬が作家となる契機となった作品だ」

「電力施設の火災を契機として、同地域の生活環境は著しく悪化した」

このように、「契機」は、「~を契機に」「~の契機となる」「~が契機となる」「~する契機となる」「~を契機とする」といった形で用いられます。

また、使い方の特徴として、「契機」は「~を契機に」「~を契機とする」という言い方をする場合は「就職を契機に」など動機となることを表す名詞の後に付いて用いられるケースが多いです。

「契機」と「原因」の違いは?

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ではここからは、似た意味を表す「原因」という語との違いについて見ていきましょう。

まず、この語は「物事や状態を引き起こすもとになること」を意味し、「契機」と使い方を比較すると以下のようになります。

\次のページで「「契機」の類義語は?」を解説!/

「原因」:「過度の飲酒が原因で体を壊す」(過度の飲酒がもとになって体を壊すことになった)

「契機」:「遠方の企業への就職を契機に一人暮らしを始めた」(遠方の企業に就職したことがもとになって一人暮らしを始めた)

「原因」と「契機」の違いとしては、「原因」が「何かの物事を起こすもとになること」を意味するのに対し、「契機」は「その物事を始める、もしくは起こることになった直接の要因となること」を表すという違いがあります。

それは、例えば「夫は家事や育児を妻に任せきりで妻はそれに不満を抱いていたが、一向に改善されない。そして夫の浮気が発覚したのを機に夫婦は離婚に至った」といった場合には、「浮気は離婚のきっかけ」で「夫が家事や育児の分担を放棄したことが離婚の原因」と言えるでしょう。

「契機」の類義語は?

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それでは、次は「契機」の類義語・類語である「発端(ほったん)」「端緒(たんちょ)」「切っ掛け(きっかけ)」について見ていきましょう。

まず、これらの語の意味は以下のようになっています。

「発端」:物事の始まりや起こり

「端緒」:物事の手掛かり、いとぐち

「切っ掛け」:物事を始める手掛かり、はずみ、動機や機会

「発端」の使い方は?「契機」との違いは?

それでは、次に「発端」の使い方と、「契機」との違いについて見ていきましょう。

この語はたとえば以下のような使い方があります。

「満州事変が発端となって、日中戦争が起きて太平洋戦争へと発展していった」

「今回の事件の発端となったパーティは、この豪奢な館で開かれたのだ」

このように、「発端」が「物事の始まり」を意味するのに対し、「契機」は「物事が始まる直接的な要因」を表すというニュアンスの違いがあります。

つまり、「発端」は物事の一番元になったところまで遡るのに対し、「契機」ではおおよそ一つ前までしか遡らないと言えるでしょう。

\次のページで「「端緒」の使い方は?「契機」との違いは?」を解説!/

「端緒」の使い方は?「契機」との違いは?

それでは、次に「端緒」の使い方と、「契機」との違いについて見ていきましょう。

この語はたとえば以下のような使い方があります。

「尾瀬保護運動は日本における自然保護運動の端緒であると言われている」

「すべての事件の端緒となった彼女の失踪の真相は、最後まで明らかにされることはなかった」

「端緒」は、「いとぐち」、つまり「物事が始まったり解決したりする、そのきっかけや手がかり」も意味するため、この意味の一部を取った「物事が始まるきっかけ」は「契機」とほぼ同じ意味を持つでしょう。

しかし、一方で、「端緒」は「(事件などが解決するきっかけとなった)物事の手掛かり」という意味も含むため、場面により「契機」とはニュアンスが違います。

「切っ掛け」の使い方は?「契機」との違いは?

それでは、次に「切っ掛け」の使い方と、「契機」との違いについて見ていきましょう。

この語はたとえば以下のような使い方があります。

「友人に誘われてワンコインのパン教室に行ったことを切っ掛けに本格的にパンづくりを始めるようになった」

「その原子炉の問題は、 点検作業を行った技術者の内部告発が切っ掛けで表面化した」

このように、「切っ掛け」は「契機」とほぼ同じ意味を持っていますが、「切っ掛け」にも「端緒」と同じく「手掛かり」という意味を含むため、場面によって「契機」とはニュアンスが違ってきます。

それは、例えば「話の切っ掛けを探す」という文を「契機」で言い換えると不自然さを感じさせますし、「独立の切っ掛けを掴む」という文では単純に「契機」と置き換えても意味は通りません。

\次のページで「「発端」は「契機」となった「物事の始まり」、「端緒」は「物事の手掛かり」、「原因」は「もとになった事」」を解説!/

「発端」は「契機」となった「物事の始まり」、「端緒」は「物事の手掛かり」、「原因」は「もとになった事」

以上、「契機」の意味と使い方、「原因」「発端」「端緒」「切っ掛け」との違いについてまとめました。

「契機」は「動機、きっかけ」を意味し「きっかけ」と同じことを表しますが、「~を契機に」といった言い方をする場合には、その動機となったことを表す名詞の後に続いて用いられることが多いです。

また、「原因」は何かの物事が起こるもとになったことを表すもので、「きっかけ」とは明確にニュアンスが異なるため、意識して使い分けるようにすると良いでしょう。

一方、「発端」「物事の始まり」を意味するのに対し、「契機」は「物事が始まる直接的な要因」を意味するという微妙なニュアンスの違いがあります。

そして、「端緒」「切っ掛け」は「契機」とほぼ同じ意味を持っていますが、「物事の手掛かり」を表す場面では「契機」はあまり用いないので使い分けには注意が必要です。

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「契機」の意味と使い方・例文・「原因」との違い・類義語は?現役記者がサクッとわかりやすく解説!

「契機」(読み方:「けいき」)という言葉は、「~を契機として」「~が契機となって」などの形でよく用いられています。

取り立てて使い方に難しいところがある語ではありませんが、この言葉は具体的にどのようなを表していて、似た意味のある「原因」「発端」「端緒」「切っ掛け」という語とはどのような違いがあるのか疑問に思うこともあるかもしれません。

そこで、ここでは「契機」の意味と使い方、また「原因」「発端」「端緒」「切っ掛け」との違いについて、科学・技術系記事の執筆を中心に活躍する筆者が解説していきます。

「契機」の意味と使い方・例文・「原因」との違い

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それでは、始めに「契機」の意味と使い方、また「原因」との違いについて説明していきます。

「契機」の意味は?

まず、「契機」には「動機、きっかけ」といった意味があり、「何かの物事を始める直接的な原因」を表します。

また、その由来はドイツ語の「Moment」から来ていると言われており、さらにその「Moment」の語源はラテン語の「mouere」と言われています。

ちなみに、「mouere」は「事物を動かして決定する根拠のこと」を意味するそうです。

「契機」の使い方は?

次に、「契機」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

この言葉は、たとえば以下のように用いることができます。

「出産を契機に栄養管理への関心が高まった」

「失敗を契機に全体的な作業手順を見直すことにした」

「知人の死を契機に生命保険に関心を寄せるようになった」

「異動を契機に転職を考え始める」

「遠方の企業への就職を契機に一人暮らしを始めた」

「東京オリンピックの開催は日本の産業発展の契機となった」

「第二次世界大戦はアメリカの政治と軍事の関係を大きく変化させる契機となった」

「それは新聞記者であった司馬が作家となる契機となった作品だ」

「電力施設の火災を契機として、同地域の生活環境は著しく悪化した」

このように、「契機」は、「~を契機に」「~の契機となる」「~が契機となる」「~する契機となる」「~を契機とする」といった形で用いられます。

また、使い方の特徴として、「契機」は「~を契機に」「~を契機とする」という言い方をする場合は「就職を契機に」など動機となることを表す名詞の後に付いて用いられるケースが多いです。

「契機」と「原因」の違いは?

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ではここからは、似た意味を表す「原因」という語との違いについて見ていきましょう。

まず、この語は「物事や状態を引き起こすもとになること」を意味し、「契機」と使い方を比較すると以下のようになります。

\次のページで「「契機」の類義語は?」を解説!/

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