「薫陶」は、「~の薫陶を受ける」という形で主に用いられている言葉です。前提としてここで登場する人物はひとり以上。薫陶する側と薫陶を受ける側が存在します。
スポーツ選手や芸術家のドキュメンタリーなどでよく見聞きする言葉ではありますが、その文字を見ただけでは意味の確たる部分は推測しずらく、どのようなことを表す語なのか疑問に思っている人もいるかもしれません。著名人ではなくとも、どんな立場の人も成長していく過程で薫陶を受ける機会はあり、みなさんにも思い当たるシチュエーションがあったのではないでしょうか。
私自身、薫陶を受ける機会は多くありました。学生時代の恩師、クラブ活動や習い事の先生、社会人になってからは職場の先輩やクライアントなどから仕事のいろはを教わり、時には辟易したこともありましたが、感銘を受け今に残っていることばかりです。それでも幸せなことだったと思える指導者との出会いと成長のチャンス、それが「薫陶」ではないでしょうか。
そこで、ここではこの言葉の意味と使い方、そして語源をご紹介するとともに、近い意味のある「教育」や薫陶を受け生まれる「尊敬」の念など、この言葉に連なる
語を比較しながら、詳しい意味についてご説明します。

「薫陶」の意味と使い方・例文・類義語や「薫陶」に関連の深い言葉たちの意味

それでは、以下に「薫陶」の意味と使い方と、類義語との違いを説明します。

「薫陶」の意味・語源とは?

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まず、「薫陶」には、「徳を以て人を感化し、すぐれた人間をつくること」という意味があり、優れた人格で人を感化して教え育てることを表します。

一見してこの言葉の意味は「薫陶」という字と関わりがないように思えますね。

語源としては、「香を焚いて薫りを染み込ませ、土をこねて器を作り上げる」(ようにして徳で他人を感化教育する)という意からきたものだそうです。

香を焚いて空間に香りがしみ込むにはじっくりと。そして土を陶器に形作りには幾度もこねて滑らかになるほどに忍耐強く綿密に。そういう教育のスタイルが「薫陶」なのでしょう。

労を惜しまず、時間をかけ、丁寧かつ綿密に教育・教養を授けるということは、教える側は人格者であることが前提としてあるとも言えます。そして多くの場合、薫陶を受けた側は流儀を学び実践し受け継いでいくので「弟子」と名乗る者も多いのではないでしょうか。

「薫陶」の使い方・例文

では次に、この言葉の使い方を例文を使って見ていきます。

この言葉は、たとえば以下のように用いることができるでしょう。

1「薫陶よろしきを得て成人する」

2「今日の私があるのは恩師である○○先生の薫陶の賜物です」

3「社長から直接薫陶を受けた上司の指導を受ける」

4「上司や先輩からの薫陶を受けて業務知識を身に付ける」

5「薫陶を重んじた人材育成をする」

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ちなみに、例文1にある「よろしきを得る」の「よろしき(宜しき)」とは、「ちょうどよい程度、適当なこと、適切なこと」という意味になります。成人となるに値する薫陶を受け、成人となったということでしょう。

例文2においては、教育現場やスポーツや芸術分野などにおいて、人格者(教育者)の指導により現在活躍するに至ったことへの感謝の言葉です。

例文3は、「社長から薫陶を受けた上司」=「社長代理、もしくは社長直々に等しい上司に」というニュアンスで捉えることができるほどの言い回しではないでしょう。

例文4・5は、近いニュアンスで使われていると思われます。「上司・先輩の薫陶を受ける」ということは独学の勉強や叩き上げというよりは、責任を持って育て上げられたということを指し、「薫陶を重んじた人材育成」とはそういう育成方法を重要視しているということです。

「教育」「尊敬」との違い

次に、「〜を受ける」という言葉でよく用いられる語。意味は違えど使われ方が似ている「教育」「尊敬」という語の意味合いを比べて、違いや関連性を見ていきましょう。

教育

「知識、技能、規範などが身に付くように人を教え育てること」

尊敬

「他人の人格、思想、行為などを優れたものとして尊び敬うこと」

 

\次のページで「教育者の人徳あってこそ!そして弟子の尊敬があってこそ、薫陶という言葉は本当に輝く」を解説!/

教育がもっとも多く使われる場は、「教育関連施設」です。教育は、能動的、受動的(受け身)に関わらず、教受けることは可能と言えるでしょう。教育者・先輩など知的・スキルにおいて上位者が教え、学びたい人が「受ける」ものです。

しかしながら、尊敬はベクトルが変わるのはお気づきでしょうか。

例えば上記のシチュエーション。教育を受けた生徒が、教えてくれた教育者の博学を尊敬し、人格に感銘を受け、生じる思いが「尊敬」です。

よって「尊敬を受ける」と表現する場合は、受けているのは「教えている側」教育者の方。先ほどと逆転します。

これらの語に「薫陶」の使い方を加えて比較してみましょう。

教育

「新人の教育体制を整える」(新入社員に知識や技能などを教えて個人の能力を伸ばす)

尊敬

「先輩社員に尊敬の念を抱く」(先輩の人格や行為などを重んじる)

薫陶

「上司の薫陶を受ける」(上司の優れた人格に影響を受けて成長する)

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A 教育者、B学習者とします。

教育: AがBを教育する。BはAから教育を受ける

尊敬:BはAの知識と人柄を尊敬した。AはBから尊敬を受ける

尊敬を受けるほどの関係性が気づくことができた教育は「薫陶」となります。

すると

薫陶:AはBに知識情報スキルなどすべてを教え、BはAから薫陶を受けた

と表現することができるでしょう。

上記のように、「教育」は「知識や技能といった社会生活に必要なものが身に付くように教え育てること」、「尊敬」は「他人の人格などを優れているとして重んじること」、「薫陶」は「優れた人格などによって人を教え育てること」を表すというニュアンスの違いがあります。

教育者の人徳あってこそ!そして弟子の尊敬があってこそ、薫陶という言葉は本当に輝く

以上、「薫陶」の意味と使い方についてまとめました。

上記のように、「薫陶」は「優れた人格によって人を育て上げること」を表します。

また、「教育」や「尊敬」という語はそれぞれ「薫陶」に関連付けることができ、似た使い方もできることばではありますが、意味は全く異なると言えるでしょう。

「教育」は単に「知識などを教えて相手の能力を伸ばすこと」、「尊敬」は「他人の人格などが優れているとして重んじること」を表すという違いがあるため、「薫陶」の正しい意味、表す人間関係を思うと間違えることはないでしょう。美しい品位のある言葉ですので、良き先輩に出会い薫陶を受けるとともに、この言葉もぜひお使いになってください。

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言葉の意味

「薫陶」の意味と使い方・例文・「教育」「尊敬」との違いは?現役ライターがサクッとわかりやすく解説

「薫陶」は、「~の薫陶を受ける」という形で主に用いられている言葉です。前提としてここで登場する人物はひとり以上。薫陶する側と薫陶を受ける側が存在します。
スポーツ選手や芸術家のドキュメンタリーなどでよく見聞きする言葉ではありますが、その文字を見ただけでは意味の確たる部分は推測しずらく、どのようなことを表す語なのか疑問に思っている人もいるかもしれません。著名人ではなくとも、どんな立場の人も成長していく過程で薫陶を受ける機会はあり、みなさんにも思い当たるシチュエーションがあったのではないでしょうか。
私自身、薫陶を受ける機会は多くありました。学生時代の恩師、クラブ活動や習い事の先生、社会人になってからは職場の先輩やクライアントなどから仕事のいろはを教わり、時には辟易したこともありましたが、感銘を受け今に残っていることばかりです。それでも幸せなことだったと思える指導者との出会いと成長のチャンス、それが「薫陶」ではないでしょうか。
そこで、ここではこの言葉の意味と使い方、そして語源をご紹介するとともに、近い意味のある「教育」や薫陶を受け生まれる「尊敬」の念など、この言葉に連なる
語を比較しながら、詳しい意味についてご説明します。

「薫陶」の意味と使い方・例文・類義語や「薫陶」に関連の深い言葉たちの意味

それでは、以下に「薫陶」の意味と使い方と、類義語との違いを説明します。

「薫陶」の意味・語源とは?

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まず、「薫陶」には、「徳を以て人を感化し、すぐれた人間をつくること」という意味があり、優れた人格で人を感化して教え育てることを表します。

一見してこの言葉の意味は「薫陶」という字と関わりがないように思えますね。

語源としては、「香を焚いて薫りを染み込ませ、土をこねて器を作り上げる」(ようにして徳で他人を感化教育する)という意からきたものだそうです。

香を焚いて空間に香りがしみ込むにはじっくりと。そして土を陶器に形作りには幾度もこねて滑らかになるほどに忍耐強く綿密に。そういう教育のスタイルが「薫陶」なのでしょう。

労を惜しまず、時間をかけ、丁寧かつ綿密に教育・教養を授けるということは、教える側は人格者であることが前提としてあるとも言えます。そして多くの場合、薫陶を受けた側は流儀を学び実践し受け継いでいくので「弟子」と名乗る者も多いのではないでしょうか。

「薫陶」の使い方・例文

では次に、この言葉の使い方を例文を使って見ていきます。

この言葉は、たとえば以下のように用いることができるでしょう。

1「薫陶よろしきを得て成人する」

2「今日の私があるのは恩師である○○先生の薫陶の賜物です」

3「社長から直接薫陶を受けた上司の指導を受ける」

4「上司や先輩からの薫陶を受けて業務知識を身に付ける」

5「薫陶を重んじた人材育成をする」

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ちなみに、例文1にある「よろしきを得る」の「よろしき(宜しき)」とは、「ちょうどよい程度、適当なこと、適切なこと」という意味になります。成人となるに値する薫陶を受け、成人となったということでしょう。

例文2においては、教育現場やスポーツや芸術分野などにおいて、人格者(教育者)の指導により現在活躍するに至ったことへの感謝の言葉です。

例文3は、「社長から薫陶を受けた上司」=「社長代理、もしくは社長直々に等しい上司に」というニュアンスで捉えることができるほどの言い回しではないでしょう。

例文4・5は、近いニュアンスで使われていると思われます。「上司・先輩の薫陶を受ける」ということは独学の勉強や叩き上げというよりは、責任を持って育て上げられたということを指し、「薫陶を重んじた人材育成」とはそういう育成方法を重要視しているということです。

「教育」「尊敬」との違い

次に、「〜を受ける」という言葉でよく用いられる語。意味は違えど使われ方が似ている「教育」「尊敬」という語の意味合いを比べて、違いや関連性を見ていきましょう。

教育

「知識、技能、規範などが身に付くように人を教え育てること」

尊敬

「他人の人格、思想、行為などを優れたものとして尊び敬うこと」

 

\次のページで「教育者の人徳あってこそ!そして弟子の尊敬があってこそ、薫陶という言葉は本当に輝く」を解説!/

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