「忖度」(読み方:「そんたく」)という言葉は、「心情を忖度する」、「意図を忖度する」などの形でよく用いられています。
本来、他人の気持ちをおしはかり配慮する言葉で、人間らしい良い言葉なのではないでしょうか。しかしながら、見聞きすることはあっても自分が頻用する方は一部に限られてくるため、イメージで意味合いを捉えて深く理解されていない方が多い印象です。

また、近い意味のある「慮る(おもんばかる)」や「思い遣る(おもいやる)」といった語とはどのような違いがあるのか、中には疑問を抱くことがあるかもしれません。

今回は、「忖度」の意味と使い方についてご紹介し、あわせて「慮る」、「思い遣る」と比較して説明いたします。

「忖度(そんたく)」の意味と使い方

それでは、以下に「忖度」の意味と使い方を説明します。

「忖度(そんたく)」の意味とは?

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まず、「忖度」の意味を辞書を紐解いてみてみましょう。

以下の意味があります。

 

他人の気持ちをおしはかること。

出典:明鏡国語辞典「忖度」

 

他人の心をおしはかること。また、おしはかって相手に配慮すること。

出典:デジタル大辞泉「忖度」

 

(「忖」も「度」もはかる意)他人の気持ちをおしはかること。推察。

出典:大辞林 第三版

つまり、「(何らかの事実をもとにして)他人の心中や考えなどを想像する、推測すること」を表す語となっています。相手が思いを明言している場合には、用いることができません。

漢字のつくりを見てみましょう。

「忖度」の【忖】の意味は「おしはかる」、【度】も「 めもり。はかる。おしはかる。みつもる」という意味で同じ意味の二つの漢字でできた熟語です。

「忖度(そんたく)」の使い方と例文

次に、「忖度」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

この言葉は、たとえば以下のように用いることができます。

「今のままでは彼は部長と部下との板挟みだ。周囲はもっと彼の心情を忖度するべきだろう」

「ただお客様からの質問に答えるのではなく、時にはその裏にある意図を忖度することも必要だ」

「彼女と別れたばかりの彼の気持ちを忖度して、飲み会の話は伏せてしばらくそっとしておくことにした」

「夫の気持ちを忖度して、夕食のメニューを決めるのは諦めた」

「うちの社長がこんなにスピーディーに仕事を進められるのはそばで忖度してくれる優秀な秘書の存在が大きい」

「本社への栄転は妻と相談し、母の気持ちを忖度して辞退した」

「娘はなんでも顔に出るので、気持ちを忖度するのは簡単だ」

「息子を亡くしたばかりの彼女の心中を忖度する」

「こちらのお宿は外国人観光客に大人気だ。その理由は会話の中から忖度して素敵なサービスを提供してくれるからだ」

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上記の例文のとおり、明らかにされていない心のうちを推察・推測することを、また推測して行動することを表しています。

\次のページで「「慮る(おもんばかる)」、「思い遣る(思いやる)」との違い」を解説!/

「慮る(おもんばかる)」、「思い遣る(思いやる)」との違い

次に、「忖度(そんたく)」と似た意味がある「慮る」、「思い遣る」との違いについて見ていきます。

「慮る」「思い遣る」の意味

まず、「慮る」「思い遣る」には、以下の意味があります。

慮る

周囲の状況や将来に目を向けて、深く考える。おもんばかる。

出典:明鏡国語辞典「慮る」

 

あれこれ思いめぐらす。考慮する。

出典:コトバンク「慮る」

思い遣る

他人の身の上や立場になって親身に考える。同情する。

出典:明鏡国語辞典「思い遣る」

 

その人の身になって考える。同情する。察して気遣う。

出典:コトバンク「思い遣る」

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つまり、「慮る」は「周囲の状況などについてよく考える、あれこれと考えを働かせること」、「思い遣る」は「他人の立場になってその人の気持ちや状況などを推測して配慮したり、同じような気持ちを感じたりすること」を表す語となっています。

「忖度」と「慮る」、「思い遣る」を例文比較

それでは、上記の点を踏まえて、「忖度」と「慮る」、「思い遣る」の使い方を用例で比較してみましょう。

 

\次のページで「忖度(そんたく)した上で確認する!すべてを言葉にするのは簡単ではないけれど大切です」を解説!/

【忖度】

「彼女は離婚した後も普段と変わりなく明るく振る舞っていたため、同情されることを嫌う彼女の心を忖度して、あえてその話題には触れなかった」

(≒彼女は離婚した後も普段と変わりなく明るく振る舞っていたため、同情されることが嫌いな彼女の気持ちを推し量り、あえてその話題には触れなかった)

「社会人になって最初に学ぶ基本が”報連相”だが、経験をつむにつれて役職が上の人に忖度するきらいがあり、注意が必要だ」

(≒社会人となって最初に学ぶ基本が報連相だが、経験を積むとついつい役職が上の人の意向を推察するきらいがあり、注意が必要だ)

【慮る】

「彼の家庭の事情を慮って休職を提案する」

(≒彼の家庭の事情についてよく考えて休職を提案する)

「会社の組織においては、メンバーが情報を共有し、各自慮ることで、強固なチームになる」

(≒会社の組織においては、メンバーが情報を共有し、各自深く考え行動することで、強固なチームになる」

【思い遣る】

「離婚したばかりの彼女の気持ちを思い遣る」

(≒離婚したばかりの彼女の心中に同情する)

「日本で察することが思い遣りだが、海外でははっきり言うことが思い遣りのようだ」

(≒日本で言葉にされない心中を察することが親身になる姿勢だが、海外でははっきりということが相手に対する親身な姿勢のようだ)

つまり、これらの語の違いを説明すると、以下のようになります。


「忖度」は「相手の気持ちを推測する、推し量ること」をいい、相手が置かれている状況や様子などからその心中を推測する、もしくは相手の心中を察した上でそれに沿った行動を取るような場面で使う。


「慮る」は「(相手の状況などを)よく考えること」をいい、周囲のことをよく考える、もしくはよく考えた上で何らかのアドバイスをする、取り計らうといった場面で使用する。


「思い遣る」は「相手の立場になって気持ちを考えて配慮する、同情する」、つまり相手の心情を汲むというニュアンスがあるため、たとえば苦しい状況にある相手に対して同情を寄せる、もしくは相手の身になって気持ちを考えて配慮をする場面で用いる。

忖度(そんたく)した上で確認する!すべてを言葉にするのは簡単ではないけれど大切です

以上、「忖度」の意味と使い方についてまとめました。

この言葉は、言動や状況を鑑みて、「他人の心中などを推測すること」を表す言葉です。

近い意味の言葉に「慮る」、「思い遣る」といった語がありますが、それぞれ「周囲の状況などをあれこれと考える」、「同情する」といったニュアンスが強く、時には異なる意味を伝えてしまうため、適度に使い分けると良いでしょう。

使い方に迷うことがある時には、「相手の状況を踏まえて心中を察し、何かしら行動する」時は【忖度する】。「周囲の状況をあれこれと深く考えること、またそのうえでアドバイスすること」を言うときは【慮る】。「相手の身になって思いを寄せる、苦しい状況を同情する」時は「思い遣る」。

上記のようなポイントを覚えておきましょう。

「忖度(そんたく)」することは、人間らしい心ある行動であるといえます。しかし、その推察が的を射ず、誤った思い込みである可能性があることを念頭に置かなければいけないのではないでしょうか。

ことビジネスにおいては顧客であれ、上司であれ、最終的な判断をする担当者(責任者)がいます。「良かれと思って」と後で言い訳をしないためにも、自分の「忖度」で行動を起こすときに暴走しないことが重要ではないでしょうか。

また、上長・顧客の立場に立った場合は、依頼は明確にすることも心掛けていきましょう。

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言葉の意味

「忖度(そんたく)」の意味と使い方・例文・「慮る」「思い遣る」との違いは?現役ライターがサクッとわかりやすく解説

「忖度」(読み方:「そんたく」)という言葉は、「心情を忖度する」、「意図を忖度する」などの形でよく用いられています。
本来、他人の気持ちをおしはかり配慮する言葉で、人間らしい良い言葉なのではないでしょうか。しかしながら、見聞きすることはあっても自分が頻用する方は一部に限られてくるため、イメージで意味合いを捉えて深く理解されていない方が多い印象です。

また、近い意味のある「慮る(おもんばかる)」や「思い遣る(おもいやる)」といった語とはどのような違いがあるのか、中には疑問を抱くことがあるかもしれません。

今回は、「忖度」の意味と使い方についてご紹介し、あわせて「慮る」、「思い遣る」と比較して説明いたします。

「忖度(そんたく)」の意味と使い方

それでは、以下に「忖度」の意味と使い方を説明します。

「忖度(そんたく)」の意味とは?

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まず、「忖度」の意味を辞書を紐解いてみてみましょう。

以下の意味があります。

 

他人の気持ちをおしはかること。

出典:明鏡国語辞典「忖度」

 

他人の心をおしはかること。また、おしはかって相手に配慮すること。

出典:デジタル大辞泉「忖度」

 

(「忖」も「度」もはかる意)他人の気持ちをおしはかること。推察。

出典:大辞林 第三版

つまり、「(何らかの事実をもとにして)他人の心中や考えなどを想像する、推測すること」を表す語となっています。相手が思いを明言している場合には、用いることができません。

漢字のつくりを見てみましょう。

「忖度」の【忖】の意味は「おしはかる」、【度】も「 めもり。はかる。おしはかる。みつもる」という意味で同じ意味の二つの漢字でできた熟語です。

「忖度(そんたく)」の使い方と例文

次に、「忖度」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

この言葉は、たとえば以下のように用いることができます。

「今のままでは彼は部長と部下との板挟みだ。周囲はもっと彼の心情を忖度するべきだろう」

「ただお客様からの質問に答えるのではなく、時にはその裏にある意図を忖度することも必要だ」

「彼女と別れたばかりの彼の気持ちを忖度して、飲み会の話は伏せてしばらくそっとしておくことにした」

「夫の気持ちを忖度して、夕食のメニューを決めるのは諦めた」

「うちの社長がこんなにスピーディーに仕事を進められるのはそばで忖度してくれる優秀な秘書の存在が大きい」

「本社への栄転は妻と相談し、母の気持ちを忖度して辞退した」

「娘はなんでも顔に出るので、気持ちを忖度するのは簡単だ」

「息子を亡くしたばかりの彼女の心中を忖度する」

「こちらのお宿は外国人観光客に大人気だ。その理由は会話の中から忖度して素敵なサービスを提供してくれるからだ」

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上記の例文のとおり、明らかにされていない心のうちを推察・推測することを、また推測して行動することを表しています。

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