「執着」という言葉は、日常生活でよく用いられるものの一つです。

その意味については概ね分かっていても、具体的にこの言葉がどのようなことを表しているのか、また他に似た意味を持つ言葉にはどのようなものがあるのか、疑問に思うことがあるかもしれません。

ここでは、この言葉の基本的な意味や使い方、類義語との違いなどについて、翻訳経験のある現役ライターの筆者が説明していきます。

「執着」の意味と使い方・例文・類義語・「依存」「未練」との違い

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それでは、「執着」の意味と使い方、また近い意味を持つ「依存」「未練」との違いや類義語などについて説明していきましょう。

 

「執着」の意味は?

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「執着(しゅうちゃく)」には、次のような意味があります。

一つのことに心をとらわれて、そこから離れられないこと。

出典:小学館「執着」

「執着」は「しゅうじゃく」とも読み、「ある物事に心が深くとらわれて離れられないこと」という意味を持つ言葉です。

「執着心」という表現があるように、何か心惹かれた物事にとらわれて諦められないことをいいます。

「執着」の語源

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「執着」の「執」は「こだわる」「とりつく」、「着」は「くっついて離れない」という意味を持つ漢字です。

また、「執着」は仏教に深い関わりのある用語でもあり、「執著」という書き方もします。仏教においては、苦しみの原因がこの「執着」にあるとされ、執着を捨てることが大切だという教えです。

「執着」の関連語として「我執(がしゅう)」というものがあります。これは仏教用語で「自分の存在の中に実体的があると思う心」を表し、すべての存在に実体があるとする「法執(ほっしゅう)」とともに手放すべき執着であるという考えです。

「執着」の使い方・例文

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「執着」は、愛情や恋愛などに使われることの多い言葉ですが、それ以外にも次のように用いることができます。

「新しいものを受け入れずに古いしきたりに執着する」
「彼は金銭に執着し過ぎだ」
「昔の恋人に執着しても仕方がない。思い切って前に進むべきだ」
「長年抱いてきた価値観に執着する」
「生きることに執着する人が多いことに疑問を感じる」

「依存」「未練」との違い

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「執着」と似たような意味を持つ「依存」「未練」とはどのような違いがあるのでしょうか。比較してみましょう。

「依存」には「他に頼って生存が成立すること」という意味があり、他のものに寄りかかって存在が成り立つことを表します。

「未練」には「思い切りの悪いこと、諦めきれないこと、またそのさま」という意味があり、心残りがあり諦めきれないことを表す言葉です。

この2つの言葉と「執着」の使い方を比較してみると、次のようになります。

\次のページで「「執着」の類義語」を解説!/

「依存」:「日本では食料の多くを輸入に依存している」(食料の供給は外国からの輸入によって成り立っている)

「未練」:「今の仕事に未練はない」(今の仕事を手放すことに対して心残りはない)

「執着」:「現在の地位に執着する」(現在得ている地位に引きつけられてそこから離れられない)

つまり簡単にいうと、「依存」は「自分以外のものに頼ることでその存在が成立していること」、「未練」は「すっきりと思い切れないこと」、「執着」は「何らかの物事に心を強く引かれて離れられないこと」を表します。

「執着」の類義語

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では、「執着」の類語をいくつか紹介します。

「固執」

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「固執(こしつ)」が持つ意味は、次の通りです。

あくまでも自分の意見を主張して譲らないこと。

出典:小学館「固執」

「固執」は「こしゅう」とも読み、「自分の考えや意見を頑なに守って譲らないこと」を表す言葉です。

「執着」が「ひとつの対象に心が惹かれて離れられない」のに対して、「固執」は「自分の意見などを譲らない」ことを表し、次のような使い方をします。

「会議では賛成派が多数だったが、彼だけは自分の考えに固執して反対していた」

「いつまでも古いやり方に固執していては、時代に取り残されてしまう」

「執心」

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「執心(しゅうしん)」には、次のような意味があります。

ある物事に心を引かれて、それにこだわること。また、その心。執着。

 (多く「御執心」の形で)異性などに深く思いをかけることをひやかしの意をこめていう語。

出典:小学館「執心」

\次のページで「「頓着」」を解説!/

「執心」は、「ある物事に心を引かれそれにこだわること」「人に強く思いをかけること」の意味を持つ言葉です。

「執着」が「既に手に入れたものを手放さないようにする」というときでも使えるのに対して、「執心」は「まだ自分のものになっていないもの」についてしか使えないという違いがあります。

「執心」を使った例文は、次の通りです。

「あの男は金もうけに執心している」

「君、ずいぶん彼女にご執心のようだね」

「頓着」

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「頓着(とんちゃく)」には、次のような意味があります。

深く気にかけてこだわること。執着すること。

出典:小学館「頓着」

「頓着」は「とんじゃく」とも読み、「深く心にかけること」を表す言葉で、次のような使い方をします。

「彼女は裕福だからか、お金にあまり頓着しないようだ」

「結婚相手の身長に頓着する気はまったくない」

「固着」

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「固着(こちゃく)」とは、次の意味を持つ言葉です。

他のものにしっかりくっつくこと。

出典:小学館「固着」

「固着」とは「他のものにかたくくっつくこと」を表し、次のような使い方をします。

「アクリル絵具は、固着剤にアクリル樹脂を用いた絵具だ」

「家具転倒防止用品で家具を固着させないといけない」

 

「頑固」

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「頑固(がんこ)」には次の意味があります。

\次のページで「「執着」の対義語」を解説!/

かたくなで、なかなか自分の態度や考えを改めようとしないこと。また、そのさま。

取りついて容易に離れようとしないこと。また、そのさま。

出典:小学館「頑固」

 

「頑固」とは「人の意見を聞こうとせず、かたくなに自分の考えなどを守ること」を表す言葉で、次のように使います。

「あの職人は頑固で扱いにくいが、腕は確かだ」

「一緒に暮らそうと言うのに、頑固な母はなかなか聞き入れない」

「執着」の対義語

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「執着」の反対の意味を持つ言葉、「断念」「無頓着」などです。

「断念」は「きっぱりあきらめること」を意味し、「試合出場を断念する」のように使います。

「無頓着」は「ものごとにこだわらないこと」を意味し、「着るものには無頓着だ」といった使い方をする言葉です。

「執着」の英語表現

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「執着」の英語訳は、「付着」「粘着」の意味を持つ「adhesion」になります。

「~に執着する」という表現をしたい場合には、「be attached to~」や「cling to~」を使うと良いでしょう。

「be attached to something」「cling to something」で「ものごとに執着する」となります。

「執着」の意味を正確に理解しておこう

以上、「執着」の意味と使い方についてまとめました。

この言葉は、「人や地位、金銭など何らかの物事に対して深くとらわれてそこから離れないこと」をいいます。

同じように強くこだわることを表す言葉や、「未練」「依存」といった似たような意味の言葉もいくつかありますが、いずれも使い方やニュアンスには違いがあるため、それぞれの正確な意味を理解して使い分けるようにしましょう。

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言葉の意味

「執着」の意味と使い方・例文・類義語・「依存」「未練」との違いは?現役ライターがサクッとわかりやすく解説

「依存」:「日本では食料の多くを輸入に依存している」(食料の供給は外国からの輸入によって成り立っている)

「未練」:「今の仕事に未練はない」(今の仕事を手放すことに対して心残りはない)

「執着」:「現在の地位に執着する」(現在得ている地位に引きつけられてそこから離れられない)

つまり簡単にいうと、「依存」は「自分以外のものに頼ることでその存在が成立していること」、「未練」は「すっきりと思い切れないこと」、「執着」は「何らかの物事に心を強く引かれて離れられないこと」を表します。

「執着」の類義語

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では、「執着」の類語をいくつか紹介します。

「固執」

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「固執(こしつ)」が持つ意味は、次の通りです。

あくまでも自分の意見を主張して譲らないこと。

出典:小学館「固執」

「固執」は「こしゅう」とも読み、「自分の考えや意見を頑なに守って譲らないこと」を表す言葉です。

「執着」が「ひとつの対象に心が惹かれて離れられない」のに対して、「固執」は「自分の意見などを譲らない」ことを表し、次のような使い方をします。

「会議では賛成派が多数だったが、彼だけは自分の考えに固執して反対していた」

「いつまでも古いやり方に固執していては、時代に取り残されてしまう」

「執心」

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「執心(しゅうしん)」には、次のような意味があります。

ある物事に心を引かれて、それにこだわること。また、その心。執着。

 (多く「御執心」の形で)異性などに深く思いをかけることをひやかしの意をこめていう語。

出典:小学館「執心」

\次のページで「「頓着」」を解説!/

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