みなさんは「需要(じゅよう)」という言葉を耳にしたことがありますか?ニュースなどでは「~の需要がある」「需要が大きい」といった形でよく用いられています。しかし、大まかな意味は分かっていても、詳しく説明するとなると意外に簡単ではありません。今回の記事では、「需要」の具体的な意味と使い方、また反対の意味や近い意味のある語について、新聞記者歴29年の筆者が詳しく解説していきます。

「需要」とは

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「需要」は、経済関連のニュースや新聞記事で用いられることが多いかと思います。意味を分かっているつもりでも、いざ人に説明するとなると少し考えてしまいますね。

それではまず、以下に「需要」の意味と使い方ついて説明していきます。

「需要」の意味

「需要」には、2通りの捉え方があります。

1.ある商品を購入したいと思う気持ち。あるいは、ある物や事柄を必要として求めること。

2.自由主義市場において、商品やサービスを購入しようとする行為。とくに購買力に裏付けされたもの。

一般的には「1.必要として求める」の意味で用いられ、市場に提供されている商品やサービスばかりでなく、人材などに対しても広く「需要がある/ない」で表現されます。したがって、商取引が成立しない関係においても用いることが可能です。

一方、「2.商品やサービスを購入しようとする行為」は主に自由主義経済を念頭に置いた表現で、「供給」とワンセットで語られることが多いでしょう。また、市場に提供される商品の価格とも密接に関わってきます。

「需要」の成り立ち

「需要」を構成する漢字2文字を、それぞれ見ていきましょう。

「需」は「必要なもの。もとめ」を意味します。古くは「需つ(まつ)」とも使われており、雨乞いと関係がある文字でした。雨を「まつ」「もとめる」ということから、部首に「雨(あめかんむり)」が使われています。

「要」は本来「体の中央部分」を指していました。「大事なもの。欠かせないもの」というところから、次第に「自分のものにしたいと願う、請う」という意味が加わっていったようです。

以上を合わせて考えると「需要」は「自分に必要で所有したいと思うものを、欲しいと願って待つ・求める」といった意味になります。

いつ頃から使われ始めたのかははっきり分かりませんが、古い用例は福沢諭吉『文明論之概略』(1875年)にありました。「百般の需要一時に起て、又旧時の粗野を甘んずるものなし」という一節がそれです。「需要」の概念は、文明開化とともに一般化していったのかもしれません。

「供給」との関係

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では次に、経済に目を移してみましょう。

「需用」と「供給」は、自由主義経済では切っても切れない関係にあります。この場合「自由市場」というのがキーワードで、ここに提供(供給)される商品やサービスを、購買力を持った個人・企業などの経済主体が買い求めたいとする欲望、またはその総量を指す言葉です。

買いたいと思う人・企業などが、どれだけの購買力を持っているのか、商品やサービスの価格が高いのか安いのかなどの要因により、「需要」は大きく変化します。価格と需要の量との関係は需要関数で表され、一般に価格が上昇すると需要は減少する傾向となるようです。

具体例

たとえば、春先になると花粉の飛散予想に関する情報が、各種マスコミによってリリースされます。「今年は多いらしい…」「どうしよう…」花粉症に悩む消費者の心理としては、何か対策を考えねばとなるでしょう。そこで、花粉症対策グッズの「需要」がアップするという状況が生まれます。

ただし、花粉症をどうにかしたいという漠然とした欲求ではなく、対策グッズを購入したいという気持ち、あるいはその総量が市場における「需要」です。

一方、花粉症関連商品を製造、あるいは販売する側は、そうした「需要」の高まりを予測し、例年よりも多くの商品を揃えて市場に出そうとします。これが「供給」です。

仮にその中からヒット商品が生まれ、急激な「需要」増加により市場に商品が足りなくなった場合は「供給不足」となり、商品価格に「需要」が反映されるといった事態が予想されるでしょう。

以上を踏まえて、「需要」の使い方を例文で見ていきましょう。

「雑誌に紹介されたのがきっかけで需要が急に高まったので、製品の生産が追いつかない状態だ」

「グルテンフリーのブームによる影響で米粉の需要が高まっている」

「看護師は需要が大きく引く手あまたの状態だ」

「値上げ前の駆け込み需要で一時的に売上が伸びる」

「消費者の需要に応えるために生産性の向上を図る」

反対語と類語

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現在、「需要」は使われる場面によって、さまざまな言葉に言い換えられています。また、逆の意味を持つ言葉も「供給」だけではありません。

それでは、「需要」の反対語と類語を見ていきましょう。

\次のページで「反対語」を解説!/

反対語

・「供給」:「需要」に応じて商品やサービスなどを提供することを指し、反対語ではありますが、「需要」とはペアの関係とも言えます。「供」と「給」はともに提供する・市場に出すということの意味ですが、「給」が本来「上位者から下位者へ十分な提供」の意なのに対し、「供」は「上下関係は問わず、内容も十分かどうかも関係ない提供」だったようです。

・「提供」:「役に立つように差し出す」というところから、「供給」と近い意味になります。ただし、一般的な用法だと、商取引とは関係ない「無償提供」のようなケースもあり、用いる場面が関係する語だと言えるでしょう。

類語

・「需用」:用途に従って用いること。主に電気やガスなどについて用いられることが多いようです。「需要」を英語ではdemandというのに対し、「需用」はuseと表現します。

・「ニーズ」:英語のneedsで要求・欲求を指すことから「需要」と近い意味で用いられることが多い語です。「顧客ニーズ」「消費者ニーズ」といった形で使われています。

・「必要性」:一般的には幅広い意味で「必要とされる度合いの高さ」を指しますが、経済関連の文脈の中で用いると「需要」と近いイメージとなるでしょう。

「需要」は必要の度合い

以上、「需要」の具体的な意味と使い方、また反対の意味や近い意味のある語について、解説してきました。

この言葉は「あるものや事柄を必要として求めること」「商品やサービスを購入しようとする行為」を表し、反対語の「供給」とペアでよく用いられます。特に自由主義市場では、商品価格と密接に関わっているため、非常に重要視される要素です。

反対の意味の語には「供給」「提供」などがあり、似た意味の言葉では「需用」「ニーズ」「必要性」などがあります。それぞれ、場面に応じて使い分けすることが可能なので、いくつかの語を併せて覚えておくと便利です。

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言葉の意味

「需要」の意味と使い方・例文・反対語・類義語は?新聞記者歴29年の筆者がわかりやすく解説!

みなさんは「需要(じゅよう)」という言葉を耳にしたことがありますか?ニュースなどでは「~の需要がある」「需要が大きい」といった形でよく用いられています。しかし、大まかな意味は分かっていても、詳しく説明するとなると意外に簡単ではありません。今回の記事では、「需要」の具体的な意味と使い方、また反対の意味や近い意味のある語について、新聞記者歴29年の筆者が詳しく解説していきます。

「需要」とは

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「需要」は、経済関連のニュースや新聞記事で用いられることが多いかと思います。意味を分かっているつもりでも、いざ人に説明するとなると少し考えてしまいますね。

それではまず、以下に「需要」の意味と使い方ついて説明していきます。

「需要」の意味

「需要」には、2通りの捉え方があります。

1.ある商品を購入したいと思う気持ち。あるいは、ある物や事柄を必要として求めること。

2.自由主義市場において、商品やサービスを購入しようとする行為。とくに購買力に裏付けされたもの。

一般的には「1.必要として求める」の意味で用いられ、市場に提供されている商品やサービスばかりでなく、人材などに対しても広く「需要がある/ない」で表現されます。したがって、商取引が成立しない関係においても用いることが可能です。

一方、「2.商品やサービスを購入しようとする行為」は主に自由主義経済を念頭に置いた表現で、「供給」とワンセットで語られることが多いでしょう。また、市場に提供される商品の価格とも密接に関わってきます。

「需要」の成り立ち

「需要」を構成する漢字2文字を、それぞれ見ていきましょう。

「需」は「必要なもの。もとめ」を意味します。古くは「需つ(まつ)」とも使われており、雨乞いと関係がある文字でした。雨を「まつ」「もとめる」ということから、部首に「雨(あめかんむり)」が使われています。

「要」は本来「体の中央部分」を指していました。「大事なもの。欠かせないもの」というところから、次第に「自分のものにしたいと願う、請う」という意味が加わっていったようです。

以上を合わせて考えると「需要」は「自分に必要で所有したいと思うものを、欲しいと願って待つ・求める」といった意味になります。

いつ頃から使われ始めたのかははっきり分かりませんが、古い用例は福沢諭吉『文明論之概略』(1875年)にありました。「百般の需要一時に起て、又旧時の粗野を甘んずるものなし」という一節がそれです。「需要」の概念は、文明開化とともに一般化していったのかもしれません。

「供給」との関係

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では次に、経済に目を移してみましょう。

「需用」と「供給」は、自由主義経済では切っても切れない関係にあります。この場合「自由市場」というのがキーワードで、ここに提供(供給)される商品やサービスを、購買力を持った個人・企業などの経済主体が買い求めたいとする欲望、またはその総量を指す言葉です。

買いたいと思う人・企業などが、どれだけの購買力を持っているのか、商品やサービスの価格が高いのか安いのかなどの要因により、「需要」は大きく変化します。価格と需要の量との関係は需要関数で表され、一般に価格が上昇すると需要は減少する傾向となるようです。

具体例

たとえば、春先になると花粉の飛散予想に関する情報が、各種マスコミによってリリースされます。「今年は多いらしい…」「どうしよう…」花粉症に悩む消費者の心理としては、何か対策を考えねばとなるでしょう。そこで、花粉症対策グッズの「需要」がアップするという状況が生まれます。

ただし、花粉症をどうにかしたいという漠然とした欲求ではなく、対策グッズを購入したいという気持ち、あるいはその総量が市場における「需要」です。

一方、花粉症関連商品を製造、あるいは販売する側は、そうした「需要」の高まりを予測し、例年よりも多くの商品を揃えて市場に出そうとします。これが「供給」です。

仮にその中からヒット商品が生まれ、急激な「需要」増加により市場に商品が足りなくなった場合は「供給不足」となり、商品価格に「需要」が反映されるといった事態が予想されるでしょう。

以上を踏まえて、「需要」の使い方を例文で見ていきましょう。

「雑誌に紹介されたのがきっかけで需要が急に高まったので、製品の生産が追いつかない状態だ」

「グルテンフリーのブームによる影響で米粉の需要が高まっている」

「看護師は需要が大きく引く手あまたの状態だ」

「値上げ前の駆け込み需要で一時的に売上が伸びる」

「消費者の需要に応えるために生産性の向上を図る」

反対語と類語

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現在、「需要」は使われる場面によって、さまざまな言葉に言い換えられています。また、逆の意味を持つ言葉も「供給」だけではありません。

それでは、「需要」の反対語と類語を見ていきましょう。

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