今回の記事では、「二重表現」とはどのようなものなのか、また使ってしまいがちな例について、翻訳経験のある現役ライターの筆者が説明していきます。

「二重表現」の意味とよくある使用例10選

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「重言」「重複表現」ともいわれる「二重表現」は、気づかないうちに日常で使用していることが多い表現です。

具体的にどのようなものがあるのか、その意味と使用例を挙げていきましょう。

「二重表現」の意味は?

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「同じ意味のことを重複して用いる表現」のことで、分かりやすい例を挙げると「馬から落馬する」「頭痛が痛い」などの言い方です。

「落馬」は「乗っている馬から落ちること」、「頭痛」は「頭が痛いこと」を表すので、「馬から落馬する」は「馬から」という意味が、「頭痛が痛い」は「痛い」という意味が重なってしまいます。

逆に「馬から」を付けずに「落馬して怪我をする」、「痛い」を付けずに「頭痛がするから早退する」という使い方をしても意味は通じますよね。

このように、不要に意味を重複させている表現のことを「二重(または重複)表現」「重言」といいます。

主な使用例

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それでは次に、文字で表すと分かりやすいけれど口語で使ってしまいがちな表現例を紹介していきましょう。

「私の私見」

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こちらも文字通りですが、意味が重なった表現です。

「私見」というのは「自分の意見」を謙遜していう言葉ですので、その前に「私の」を付ける必要はありません。

意見を述べたい時などには「私の私見では」の代わりに、次のような言い方をすると良いでしょう。

「私見ですが~」

「私個人の考えとしては~」

「個人的な見解としては~」

「後で後悔する」

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口語表現で何気なく使ってしまうことがあるかもしれませんが、こちらも同じく重言です。

「後悔」するという言葉は「してしまったことを後で悔やむ」という意味を持ち、「後で」という意味が含まれるため、「後で後悔する」するというと「後で」が重なった表現となります。

この場合は、次のような言い方をすると良いでしょう。

「これをすると後悔することになる」

「後々悔やむことになりかねないから止めておいたほうがよい」

「お身体ご自愛ください」

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「ご自愛ください」は、目上の人に送る手紙などで結びの言葉としてよく用いられる表現です。

「お身体ご自愛ください」は、一見すると相手を気遣う丁寧な表現のようですが、二重表現となりますので注意しなければなりません。

文字だけを見ると気付きにくいのですが、「自愛」という言葉自体が「体に気をつける」という意味を持つため、前に「お身体」を付ける必要はないのです。

そのため、手紙などでは次のような使い方をすると良いでしょう。

\次のページで「「被害を被る」」を解説!/

「風邪など召されませぬようくれぐれもご自愛ください」

「寒さ厳しい折から、どうぞご自愛専一になさってください」

「被害を被る」

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「被害を被る」も、文字にすると「被」字が重なるのでわかりやすいのですが、口語だと気づきにくいかもしれません。

この表現は誤用ではないとして許容される考え方もありますが、次のように言い換えることができますので、書き言葉にする際には特に、正しい言い方をする方が無難です。

「被害に遭う」

「被害がある」

「過半数を超える」

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「過半数」という言葉自体に「半分以上」という意味がありますので、やはり二重表現です。

しかし、よく使われる表現であるためと、一種の強調表現であるという考え方もあるため、誤用ではないとする説もあります。

言い換える場合の例は、次の通りです。

「過半数を占める」

「半数を超える」

「一番最初」「一番最後」

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「最初」「最後」の「最」には「一番」の意味が含まれますので、「一番最初」「一番最後」も、本来ならば重言です。

しかし、これも使う人が多いため、許容される傾向にあります。

正しい表現にするためには、次のように言い換えましょう。

「一番最初」→「最初」「一番」「初め」

「一番最後」→「最後」「終わり」

\次のページで「「犯罪を犯す」」を解説!/

「犯罪を犯す」

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「犯罪を犯す」は文字にすると「犯」という字が重なる二重表現だとわかりますが、「犯罪する」とは言い換えられないため、誤用ではないとする説もあります。

そこで、次のように言い換えるのはいかがでしょうか。

「罪を犯す」

「過ちを犯す」

「犯行に及ぶ」

「断トツの一位」

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「断トツの一位」も重言であると知っていましたか?「ダントツ」とは「断然トップ」を略したものなので、「トップ」と「一位」の意味が重なってしまうのです。

言い換え表現は、次のようになります。

「彼の成績はクラスの中でも断トツだ」

「彼の成績はクラスの中でも余裕の1位だ」

「元旦の朝」

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「元旦」の「旦」という字は、太陽が地平線から現れるところを表していますので、「元旦」で「元日の朝」という意味があります。

そのため、「元旦の朝」というのは二重表現なのですが、辞書によっては容認しているものもあるようです。

しかし、そのことに違和感を持つ人も多いため、次のように言い換えることをおすすめします。

「〇〇年元旦」

「元日の朝」

「1月1日の朝」

「クリスマス・イヴの夜」

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「クリスマス・イヴ」は、クリスマス前夜、つまり12月24日の夜のことですので、「クリスマス・イヴの夜」というのも二重表現です。

正しい言い方は、次のようになります。

\次のページで「その他にもたくさんある二重表現」を解説!/

「恋人とクリスマス・イヴを過ごす」

「恋人とクリスマス前夜を過ごす」

その他にもたくさんある二重表現

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こうしてみると、挙げればキリがないほどたくさんありますが、その他にもこのようなものがあります。

「日本に来日する」:「来日」は「日本に来ること」ですので重言です。

「後ろから羽交い絞めにする」:「羽交い絞め」は後ろからしかできません。

「最後の切り札」:「切り札」に「最後」の意味を含みます。

これも二重表現?

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二重表現かそうでないかの境界線を引くのは難しいところですが、次の言葉は二重表現とは言わないようです。

「故障中」:「故障」で既に状態を表す言葉となっているため本来は重言ですが、今では定着して許容されています。

「フラダンス」:「フラ」はハワイの言葉で「ダンス」の意味ですが、重言だと言う人の方が少ないでしょう。外来語にはこのような例が多く見られます。

「〇〇バンク銀行」:「バンク」は銀行の意味ですが、銀行法によって商号に「銀行」の文字を入れなければならないという理由があるようです。

正しい表現を覚えよう

以上、二重表現の意味と主な表現例を紹介しました。

これらの表現は何気なく使ってしまいがちですが、意識しておくことで誰に対しても違和感を与えることなくスムーズに会話できるようになりますので、ぜひ正しい言い方を覚えておいてください。

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「二重表現」とは?その意味と普段何気なく使ってしまいがちな使用例10選!現役ライターがサクッとわかりやすく解説

今回の記事では、「二重表現」とはどのようなものなのか、また使ってしまいがちな例について、翻訳経験のある現役ライターの筆者が説明していきます。

「二重表現」の意味とよくある使用例10選

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「重言」「重複表現」ともいわれる「二重表現」は、気づかないうちに日常で使用していることが多い表現です。

具体的にどのようなものがあるのか、その意味と使用例を挙げていきましょう。

「二重表現」の意味は?

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「同じ意味のことを重複して用いる表現」のことで、分かりやすい例を挙げると「馬から落馬する」「頭痛が痛い」などの言い方です。

「落馬」は「乗っている馬から落ちること」、「頭痛」は「頭が痛いこと」を表すので、「馬から落馬する」は「馬から」という意味が、「頭痛が痛い」は「痛い」という意味が重なってしまいます。

逆に「馬から」を付けずに「落馬して怪我をする」、「痛い」を付けずに「頭痛がするから早退する」という使い方をしても意味は通じますよね。

このように、不要に意味を重複させている表現のことを「二重(または重複)表現」「重言」といいます。

主な使用例

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それでは次に、文字で表すと分かりやすいけれど口語で使ってしまいがちな表現例を紹介していきましょう。

「私の私見」

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こちらも文字通りですが、意味が重なった表現です。

「私見」というのは「自分の意見」を謙遜していう言葉ですので、その前に「私の」を付ける必要はありません。

意見を述べたい時などには「私の私見では」の代わりに、次のような言い方をすると良いでしょう。

「私見ですが~」

「私個人の考えとしては~」

「個人的な見解としては~」

「後で後悔する」

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口語表現で何気なく使ってしまうことがあるかもしれませんが、こちらも同じく重言です。

「後悔」するという言葉は「してしまったことを後で悔やむ」という意味を持ち、「後で」という意味が含まれるため、「後で後悔する」するというと「後で」が重なった表現となります。

この場合は、次のような言い方をすると良いでしょう。

「これをすると後悔することになる」

「後々悔やむことになりかねないから止めておいたほうがよい」

「お身体ご自愛ください」

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「ご自愛ください」は、目上の人に送る手紙などで結びの言葉としてよく用いられる表現です。

「お身体ご自愛ください」は、一見すると相手を気遣う丁寧な表現のようですが、二重表現となりますので注意しなければなりません。

文字だけを見ると気付きにくいのですが、「自愛」という言葉自体が「体に気をつける」という意味を持つため、前に「お身体」を付ける必要はないのです。

そのため、手紙などでは次のような使い方をすると良いでしょう。

\次のページで「「被害を被る」」を解説!/

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