「適当」とは?意味と使い方・例文・言い換え表現は?新聞記者歴29年の筆者がわかりやすく解説!
「適当」とは
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日常生活や仕事の場など、さまざまなシーンで「適当」という言葉に遭遇します。しかし、「適当」の捉え方の違いから、思わぬトラブルを引き起こした経験をお持ちの方もおられるのではないでしょうか。
それでは、以下に「適当」の意味と使い方について説明していきます。
「適当」の意味
「適当」には、以下の3つの意味があります。
1.よく当てはまる。うってつけであるさま。相当。
2.物事の具合・程度がちょうどよい。ほどほど。
3.無責任なさま。いい加減。
ビジネスシーンや文書などの厳格な表現が求められる場では「1.よく当てはまる」の意で用いられることが多く、「2.ほどほど」や「3.無責任」の意では日常の会話上でよく使われています。
いずれの意味で用いるかは主に話し手に主導権があり、受け手側が勝手に判断してしまうと、思わぬ食い違いを招くこともあるでしょう。双方に共通の価値観や認識があってはじめて、正確に意味が伝わります。
「適当」の語源
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「適当」を構成する漢字2文字を、それぞれ見ていきましょう。
「適」は訓読みでは「まさに」と読め、この場合は「ちょうど」ということを指します。
「当」は「あてる」というところから、「ぴったりと合う」「ある物事が一致しているとみなす」との意味です。
以上を合わせると本来の意味は「ちょうどぴったり合う」、または「まさに一致するものだとみなす」となります。
中国の有名な歴史書『三国志』の「鍾繇(しょうよう)伝」には「昔蕭何鎮守関中、足食成軍、亦適当爾」との記述があり、大意は「昔、蕭何(しょうか)と言う人が関中を守護し、食料は軍隊をコントロールするのに十分だったという。(鍾繇のやり方は)それによく当てはまる」といった感じでしょうか。
現在では役や任務にうまく当てはまるという意味で「適当」と使うことがありますが、「鍾繇伝」のケースでは昔の人物になぞらえて「適当」と表現しています。
プラスかマイナスか
では、意味が「3.無責任」まで変化してしまうのはなぜでしょう。ある分析によると、「2.ほどほど」の解釈がカギとなるようです。
あまりギリギリまでやり切らない方がよいことを「ほどほど」で止めておくと、度をわきまえているとしてプラスの評価がなされます。逆に、最後までやり切るべきことを「ほどほど」で止めてしまうと、中途半端だとしてマイナスの評価となるでしょう。
つまり、後者のケースが「3.無責任」の意味につながったと考えられるだろうと言われています。また、マイナス評価の言われ始めは、大正の終わりごろまでさかのぼれるのだそうです。
以上を踏まえて、使い方を例文で見ていきましょう。
【うってつけ】
「その業界の面接に行くのであれば、その服装は適当ではない」
「何かうまいことを言おうと思ったが、適当な言葉が思い浮かばなかった」
「このままでは分かりにくいので、適当な例をいくつか挙げて説明しよう」
【ちょうどよい】
「二人で住むにはこれくらいの間取りが適当だろう」
「もう少ししたら、適当な時間をみて休憩しましょう」
「自分自身の健康管理のため、適当な運動を心がけている」
「3人分のカレーライスをつくるため、野菜を適当な分量だけ切り分けた」
「小学生の子供に読ませるため適当な本を選んであげた」
【無責任】
「真面目に考えるのも面倒だから、キャリアについては適当なことを言ってごまかしておいた」
「他人事だからって適当なことを言わないでくれ」
「無理して行く必要はないよ。頭が痛かったとか適当な言い訳をしておけばいいさ」
ちなみに、「不適当」という言葉があります。「適当」に打消しの意味の接頭辞「不」をつけた形なので、表面上は対義語です。ただし、意味は「相応しくない。そぐわない」ということで、「1.よく当てはまる。うってつけ」の逆の意味しか持ちません。「無責任ではない。いい加減ではない」という意味にはならないので、気を付けましょう。
言い換え表現種々
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以上のように「適当」は意味が多様で、相手関係によってはやや誤解や行き違いを招きやすい言葉でもあります。トラブルを未然に防ぎたい場合には、他の言葉に言い換えることを考えたほうがよいかもしれません。
次に、「適当」を別の言い方で言い換える場合の表現について見ていきます。
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