「貴社」と「御社」違いを説明できますでしょうか?

実は「書き言葉なのか、話し言葉なのか」で使い分けされるのですが、ベテランの社会人ですら誤用しているケースも。

この記事では、そんな「貴社」と「御社」の違いから、正しく使うための例文の紹介、さらに会社以外のさまざまな施設に対する言い方も掲載。

初めて目にして戸惑っている就活生も、今更聞けなくて困っていた社会人の方も、ビジネスマナーが向上すること間違いなしでしょう。

営業歴5年。ライター歴3年。ビジネス用語の詳しさには定評のある筆者が解説します。

意味は同じ。貴社は書き言葉、御社は話し言葉。

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「貴社」(読み方:「きしゃ」)、「御社」(読み方:「おんしゃ」)という言葉は、ビジネスに関連するメールや文書、会話などにおいて、相手の企業を指す言葉として用いられています。

「貴社」が用いられるのは、書き言葉として使うときです。つまり、メールや履歴書などの文中で用いられるのが「貴社」ということ。

それに対し「御社」は、話し言葉として用いられます。つまり、面接や商談、または電話などで用いられるのが「御社」ということ。

ビジネスマンであれば、用いる際には十分注意しましょう。

また、面接を受けるときや履歴書を書くときに、失礼のないようにと「貴社様」や「御社様」と言ってしまったり、書いてしまうことがありますが、尊敬を表す「貴」や「御」がすでに付いているので二重敬語になってしまうので注意が必要。

さらに、使い分けとして下記のような決まりがあります。

「貴社」下請けの会社や同系列のグループ会社、または立場的に自社よりも低いか同じ会社に使われる。

「御社」元請けの会社や他会社、または自社よりも立場的に上の会社に使われる。

このように厳密な決まりがあるので、正しく理解した上で使い分けていきましょう。

貴社と御社の意味をあらためて辞書で確認

まず、「貴社」「御社」それぞれの辞書での定義を確認してみましょう。

貴社

相手を敬って、その所属する会社をいう語。貴社。

出典:明鏡国語辞典「御社」

 

御社

相手を敬って、その所属する会社をいう語。御社(おんしゃ)。

出典:明鏡国語辞典「貴社」

これらの引用を見れば明らかなとおり、「貴社」「御社」はどちらも同じ意味で、相手が所属する会社のことを「相手を敬う気持ちを含めていう語」として定義されている語になっています。

違いとしては、「貴社」の貴という字は「貴邦」や「貴台」といった古文書や古典の中で用いられていた敬語表現であるのに対し、「御社」の御という字は「○○殿の御恩で、、、」という言葉があるように、日本古来から伝わる敬語表現なのです。

逆に、自分の会社を表す言葉として「当社」や「弊社」という言葉がありますが、「当社」は同じ社内の相手と、自分たちの会社について話すときに使われます。主に会社内のミーティングなど。

「弊社」は自分の会社のことを社外の人に説明するときなどに使い、「弊社はぜひ御社のビジネスパートナーとして尽力して参る所存です」などと商談の際に使ったりします。

「貴社」と「御社」の使い分けは?

次に、「貴社」「御社」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

上記のように、「貴社」「御社」は意味としてはどちらも同じものになっているものの、使う場面が「文書」、もしくは「口頭」か、という点が差異です。

たとえば、以下のように文書であれば「貴社」、口頭では「御社」を用いるので注意。

いくつか例文を見てみましょう。

貴社の使い方1(ビジネスのシーン)

送付状・挨拶状などにおいて、

・師走の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます

・貴社におかれましては、創業30周年を迎えられたということで、、、

・この度は、貴社に設計から施工まで担当して頂けることになりまして、、、

などと用いられるパターン。特に挨拶状では、最初の文と最後の締めの文で用いられることが多いです。

貴社の使い方2(就活のシーン)

エントリーシートにおいて、

・私が貴社を志望する理由を以下に3点記載いたします

・貴社の事業内容を知り、私のこれまでの経歴を生かせると思ったからです

・以前から貴社が扱っている商品に興味があり、、、

などと用いられるパターンです。「御社」は使用厳禁。

\次のページで「なぜ、貴社と御社の使い分けが行われているの?」を解説!/

御社の使い方1(ビジネスのシーン)

会話・電話などにおいて、

・明日の13時に御社にお伺いします

・先ほど弊社の○○様宛にメールを送信しておりまして、、、

・この度は、御社の長年のご尽力が身を結び、、、

などと用いられ、確認の意味で相手の会社に再度連絡するときに用いられるパターンです。

御社の使い方2(就活のシーン)

面接において、

・私が御社に入社した暁には、海外でのビジネス立ち上げに携わり、アジアの発展に貢献したいと考えています

・私が大学で学んできた分野を生かせるのは、御社しかないと思ったからです

などと用いられるパターン。しかし、あまり使いすぎると違和感が出てきてしまい、面接官にあまり良い印象を与えられないこともあるので注意が必要です。

なぜ、貴社と御社の使い分けが行われているの?

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「違いは分かったけれど、なぜこんなややこしい使い分けが行われているんだ!」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

このような使い分けがされている理由は、もともと話し言葉でも「貴社」を使っていましたが、同音異義語が複数あり、文脈によっては分かりにくいため、御社が使われるようになったと言われています。

たとえば「記者」「帰社」「汽車」「喜捨」など。極端な話、以下のような文が成り立ちます。

「キシャ(貴社)のキシャ(記者)がキシャ(喜捨)について取材をされた後、キシャ(汽車)でキシャ(帰社)されたようです。」

汽車や喜捨は珍しい例かもしれませんが、記者・帰社は業種によっては多用されることも想定されるでしょう。

話し言葉としては、少々運用が難しい部分がある、と言い換えることができるかもしれません。

一方、「御社」の同音異義語は、「恩赦」「音写」くらいのもの。いずれもビジネスの場によく登場するとは考えにくく、混合する可能性は低いでしょう。

「御社」はいつから使われ始めたのかは分かりませんが、貴社に比べて、まだまだ新しい言葉といえるでしょう。

そのため、若者にとっては常識の言葉として認知されていますが、年配の方にとっては少々違和感を感じることもあるのではないでしょうか。

会社以外の組織・団体に用いる場合は?

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会社への敬意を表す「貴社」と「御社」の違いを説明しました。ビジネスのシーンにおいて、相手の団体は必ずしも会社とは限りません。

教育機関や官公庁、宗教団体など、様々な団体がありますが、それらについてはどのように考えればよいのでしょうか?

結論としては会社と同様に、書き言葉では「貴○○」話し言葉では「御○○」という言い方をします。

具体的にどのような団体に、どのような言葉を用いるのか、代表例をみてみましょう。

事務所に用いる場合は?

法律事務所、税理士事務所などの「事務所」に対しての敬意を表す場合は、「所」という語を使用。

書き言葉:貴所(きしょ)

話し言葉:御所(おんしょ)

これ以外にも、市役所や区役所なども「貴所」や「御所」を使います。

例外として、研究所は一般的には「貴研究所」や「御研究所」が使われることが多いので、注意してください。

病院に用いる場合は?

病院に対しての敬意を表す場合は、「院」の語を使います。

書き言葉:貴院(きいん)

話し言葉:御院(おんいん)

寺院も院が付くので、これらに該当。

しかし、クリニックの場合は「貴クリニック」や「御クリニック」という言い方も間違いではないのですが、言いづらかったり聞き取りづらかったりするため、あまり使われてはいません。

\次のページで「銀行に用いる場合は?」を解説!/

銀行に用いる場合は?

銀行に対しての敬意を表す場合は、「行」の語を使用。銀行も株式会社であるにも関わらず、少し特殊な立ち位置ですね。

書き言葉:貴行(きこう)

話し言葉:御行(おんこう)

銀行に就職しようとしている就活生は、「貴社」や「御社」といってしまいがちなので注意しなければなりません。

ちなみに、銀行と似た組織として信用金庫がありますが、この場合は「貴庫」や「御庫」が適切な呼び方です。

図書館・博物館に用いる場合は?

図書館、博物館などに対しての敬意を表す場合は、「館」の語を使います。

書き言葉:貴館(きかん)

話し言葉:御館(おんかん)

この他にも、美術館や公民館などもこのように用いられ、言葉としては図書館であれば「貴図書館」や「御図書館」といっても問題はありません。

ただし、「御館」は「みたち」とも読み、国府の庁を敬っていう意味もあります。

小学校、中学校、高校に用いる場合は?

小学校から高校までの学校に対しての敬意を表す場合は、「校」の語を使用。大学のみ異なる点に注意が必要です。

書き言葉:貴校(きこう)

話し言葉:御校(おんこう)

民間の塾や英会話スクール、さまざまな資格を取得できる学校なども「貴校」や「御校」が用いられています。

大学に用いる場合は?

大学に対しての敬意を表す場合は、「学」の語を使用。ただし辞書的な扱いとしては下記の使い方が正しいですが、実際には一般に用いられることは少ないでしょう。

書き言葉:貴学(きがく)

話し言葉:御学(おんがく)

中学校や高校とは違うので、大学に入試面接を受ける学生は注意が必要です。

店舗に用いる場合は?

店舗に対しての敬意を表す場合は、「店」の語を使用。個人店や、チェーン店でも特定の店のみを指す場合はこちらの語が適切です。

書き言葉:貴店(きてん)

話し言葉:御店(おんてん)

就活生であれば、本社に採用された場合は「貴社」や「御社」を使い、系列店などに採用された場合は「貴店」や「御店」を使いましょう。

省庁に用いる場合は?

省庁に対しての敬意を表す場合は、「省」「庁」の語を使います。

書き言葉:貴庁(きちょう)・貴省(きしょう)

話し言葉:御庁(おんちょう)・御省(おんしょう)

県庁や省庁だけでなく、市役所や区役所などの地方自治体にも「貴庁」や「御庁」といういい方を用いても問題ないといえるでしょう。

\次のページで「組合に用いる場合は?」を解説!/

組合に用いる場合は?

組合に対しての敬意を表す場合は、そのまま「組合」の語を使います。

書き言葉:貴組合(きくみあい)

話し言葉:貴組合(おんくみあい)

たまに「貴社」や「御社」を用いている方が見受けられますが、適切ではありません。

しっかりと区別して使っていくようにしましょう。

協会に用いる場合は?

協会に対しての敬意を表す場合は、そのまま「協会」の語を使います。

書き言葉:貴協会(ききょうかい)

話し言葉:御協会(おんきょうかい)

協会の場合は、「協」を抜いて「貴会」や「御会」といういい方をしても問題にならないことが多いです。

保育園・幼稚園に用いる場合は?

保育園、幼稚園などに対しての敬意を表す場合は、「園」の語を使います。

書き言葉:貴園(きえん)

話し言葉:貴園(きえん)

今までの流れから話し言葉では「御園」といってしまいがちですが、御園という表現は存在しません。

よって、書き言葉も話し言葉も「貴園」が使われ、社団法人やNPO法人も「貴園」という言葉が使われているので注意が必要なのです。

また、少し柔らかい表現になってしまいますが、話し言葉としては「○○保育園さん」といっても問題ありません。

注意!一般的ではない語も

ただし上記の表現でも実際の場面ではあまり用いられないものもあります。

たとえば「御学」などという使い方をしても、実際にはほとんど通じることはないでしょう。それどころか、文脈によっては「音楽」と誤認されてしまうかもしれません

その場合には「こちらの大学では~」などという表現を用いるほうが自然で言いやすく、また相手にとっても聞き取りやすく良いかもしれません。

正しい言葉選びで、一歩抜き出よう

以上、「貴社」「御社」の意味や使い方を解説しました。

会社以外の団体にも同様の考え方で、「貴所」「御所」などの形で用いることも併せて覚えておきましょう。

「貴社」と「御社」は知ってしまえば、使い分けは簡単ですね。

意外と使い分けを理解していないビジネスマンも多いため、きちんと使い分けできるだけで注目されるかもしれません。

特に就活生などは、正しく使い分けることで、就職活動を有利に進めることができるでしょう。

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言葉の意味

今更聞けない御社・貴社の意味、違いは?会社以外の組織・団体への尊敬語も

「貴社」と「御社」違いを説明できますでしょうか?

実は「書き言葉なのか、話し言葉なのか」で使い分けされるのですが、ベテランの社会人ですら誤用しているケースも。

この記事では、そんな「貴社」と「御社」の違いから、正しく使うための例文の紹介、さらに会社以外のさまざまな施設に対する言い方も掲載。

初めて目にして戸惑っている就活生も、今更聞けなくて困っていた社会人の方も、ビジネスマナーが向上すること間違いなしでしょう。

営業歴5年。ライター歴3年。ビジネス用語の詳しさには定評のある筆者が解説します。

意味は同じ。貴社は書き言葉、御社は話し言葉。

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「貴社」(読み方:「きしゃ」)、「御社」(読み方:「おんしゃ」)という言葉は、ビジネスに関連するメールや文書、会話などにおいて、相手の企業を指す言葉として用いられています。

「貴社」が用いられるのは、書き言葉として使うときです。つまり、メールや履歴書などの文中で用いられるのが「貴社」ということ。

それに対し「御社」は、話し言葉として用いられます。つまり、面接や商談、または電話などで用いられるのが「御社」ということ。

ビジネスマンであれば、用いる際には十分注意しましょう。

また、面接を受けるときや履歴書を書くときに、失礼のないようにと「貴社様」や「御社様」と言ってしまったり、書いてしまうことがありますが、尊敬を表す「貴」や「御」がすでに付いているので二重敬語になってしまうので注意が必要。

さらに、使い分けとして下記のような決まりがあります。

「貴社」下請けの会社や同系列のグループ会社、または立場的に自社よりも低いか同じ会社に使われる。

「御社」元請けの会社や他会社、または自社よりも立場的に上の会社に使われる。

このように厳密な決まりがあるので、正しく理解した上で使い分けていきましょう。

貴社と御社の意味をあらためて辞書で確認

まず、「貴社」「御社」それぞれの辞書での定義を確認してみましょう。

貴社

相手を敬って、その所属する会社をいう語。貴社。

出典:明鏡国語辞典「御社」

 

御社

相手を敬って、その所属する会社をいう語。御社(おんしゃ)。

出典:明鏡国語辞典「貴社」

これらの引用を見れば明らかなとおり、「貴社」「御社」はどちらも同じ意味で、相手が所属する会社のことを「相手を敬う気持ちを含めていう語」として定義されている語になっています。

違いとしては、「貴社」の貴という字は「貴邦」や「貴台」といった古文書や古典の中で用いられていた敬語表現であるのに対し、「御社」の御という字は「○○殿の御恩で、、、」という言葉があるように、日本古来から伝わる敬語表現なのです。

逆に、自分の会社を表す言葉として「当社」や「弊社」という言葉がありますが、「当社」は同じ社内の相手と、自分たちの会社について話すときに使われます。主に会社内のミーティングなど。

「弊社」は自分の会社のことを社外の人に説明するときなどに使い、「弊社はぜひ御社のビジネスパートナーとして尽力して参る所存です」などと商談の際に使ったりします。

「貴社」と「御社」の使い分けは?

次に、「貴社」「御社」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

上記のように、「貴社」「御社」は意味としてはどちらも同じものになっているものの、使う場面が「文書」、もしくは「口頭」か、という点が差異です。

たとえば、以下のように文書であれば「貴社」、口頭では「御社」を用いるので注意。

いくつか例文を見てみましょう。

貴社の使い方1(ビジネスのシーン)

送付状・挨拶状などにおいて、

・師走の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます

・貴社におかれましては、創業30周年を迎えられたということで、、、

・この度は、貴社に設計から施工まで担当して頂けることになりまして、、、

などと用いられるパターン。特に挨拶状では、最初の文と最後の締めの文で用いられることが多いです。

貴社の使い方2(就活のシーン)

エントリーシートにおいて、

・私が貴社を志望する理由を以下に3点記載いたします

・貴社の事業内容を知り、私のこれまでの経歴を生かせると思ったからです

・以前から貴社が扱っている商品に興味があり、、、

などと用いられるパターンです。「御社」は使用厳禁。

\次のページで「なぜ、貴社と御社の使い分けが行われているの?」を解説!/

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