5月は春から夏に移り変わる時期で、夏が近づいてくると同時に、春に別れを告げる頃でもあります。

今回の記事では、5月に送る手紙の挨拶文に使用する「春の終わりを表す言葉」(晩春・残春・惜春・向暑・暮春)の意味と使い方を、翻訳経験のある現役ライターの筆者が説明していきましょう。

5月に送る手紙で時候の挨拶に用いる「春の終わり」を表す言葉5つ 意味と使い方

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5月に送る手紙のあいさつ文などでは、夏の始まりを表す言葉も使いますが、春の終わりを表す言葉を使うこともあります。

ここでは、後者の言葉で代表的なものを5つ挙げて、その意味や使用例を紹介していきましょう。

 

#1 晩春(ばんしゅん)

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「晩春」は、「春の終わりごろ」「春の末」を表す言葉です。二十四節気の清明から立夏の前日まで(4月5日から5月4日頃)にあたりますが、実際には4月上旬は春の終わりというより春が始まったばかりと感じる人が多いため、もう少し後からの季節を指すと考えて良いでしょう。

「晩春の候」などと使いますが、5月上旬を過ぎたら「立夏の候」の方が適切かもしれません。

「晩春」は、挨拶文などにおいて、次のように使用することができます。

「晩春の候、皆様には健やかにお過ごしのこととお慶び申し上げます」
「晩春のみぎり、新しい環境にも慣れますますご活躍のことと存じます」

なお、現在では春といえば3~5月を思い浮かぶますが、暦上では「立春から立夏までの間が春」とされる時期となります。

旧暦では、春を初春・仲春・晩春の3つに分けて「三春」としました。

初春は、立春(2月4日頃)から啓蟄の前日(3月5日頃)までのことで、現在の2月頃のこと。

仲春は、啓蟄(3月6日頃)から清明の前日(4月4日頃)までのことで、現在の3月頃のこと。

そして晩春は、清明(4月5日頃)から立夏の前日(5月5日頃)までのことで、現在の4月頃のことを指します。

晩春といえば、まだ肌寒い日もあります。そんなとき、「春寒の候」「余寒」「花冷え」のような言葉は使えるのでしょうか。

「春寒の候」「余寒」は、啓蟄の前日(3月4日頃)までに使う言葉ですから、5月にはふさわしくないでしょう。

「花冷え」は、桜の花が咲くころに寒さが戻ってくることを表す言葉なので、4月中旬頃までに使うのが適切です。

なお、北海道には「リラ冷え」という、5月下旬頃から6月初めの寒さを表す言葉があるそうですよ。

#2 残春(ざんしゅん)

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「残春」は、「残り少なくなった春」「春のなごり」「晩春、春の末」といった意味を持つ言葉です。

「残春の候」は「晩春の候」と似た意味になり、次のように用いることができます。

「残春のみぎり、いかがお過ごしでしょうか」
「残春の候、皆様には健勝にてお過ごしのこととお慶び申し上げます」
「残春のみぎり、皆様お変わりありませんでしょうか」

\次のページで「惜春(せきしゅん)」を解説!/

#3 惜春(せきしゅん)

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「惜春」には、「春の過ぎるのを惜しむこと、行く春を惜しむこと」といった意味を持つ言葉です。

「惜春の候」は、「春が過ぎ去ることを惜しむ季節になりました」という意味になります。

「惜春」を使った例文は、次の通りです。

「惜春の候、皆様お元気でお過ごしでしょうか」
「惜春の折から、皆様のますますのご健勝をお祈り申し上げます」

春を惜しむという考え方

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「惜春」は文字通り「過ぎ行く春を惜しむ」ということですが、「春惜しむ」の言葉もあります。

四季がはっきりしている日本では、過ごしやすい春と秋がとても好まれてきました。その証拠に、「惜春」「惜秋」という言葉はありますが、夏と冬にはありません。

昔の人はまた、春から夏へと季節が移っていく美しい自然の様子を詩歌で表現してきました。

春を惜しむことを表す季語には、他にも「行く春」「春探し」などがあります。

#4 向暑(こうしょ)

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「向暑」には、「暑い時節に向かうこと」といった意味を持つ言葉です。これに対する言葉に、寒さに向かう意味の「向寒」があります。

時季は立夏から芒種の前日(5月5日頃から6月5日頃まで)の梅雨入り前だとされていますが、6月は西日本では梅雨入りしている場合もあるため、5月末までと考えた方が無難でしょう。

「向暑」は、晩春(や初夏)における手紙の挨拶文や結びの言葉において、次のように使用することができます。

「向暑の候、いかがお過ごしでしょうか」
「向暑の折から、くれぐれもご自愛ください」
「向暑のみぎり、ご自愛専一のほどお祈り申し上げます」

#5 暮春(ぼしゅん)

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「暮春」には、「春の暮、春の末、晩春、春の終わりごろ」という意味を持つ言葉で、旧暦3月の異称でもあります。

「暮春の候」はやはり清明(4月5日頃)から立夏の前日(5月5日頃)までに使える時候の挨拶です。

この言葉は、次のようなあいさつ文に使います。

\次のページで「皐月の語源は?」を解説!/

「暮春の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」
「暮春の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます」
「暮春のみぎり、皆様におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます」

皐月の語源は?

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5月は「皐月(さつき)」とも書きますが、「皐月」という言葉はどこからきたのでしょうか。

旧暦5月は田植えの時期。稲の苗は苗床である程度まで育ててから田んぼに植え替えますが、その苗床で育てた苗のことを「早苗(さなえ)」といいます。「早苗月(さなえづき)」が省略されて「早月(さつき)」になりました。「皐」という字には、「神に捧げる稲」の意味があるため、「早月」が「皐月」になったというのが一つの説です。

 

去りゆく春を惜しむ5月

以上、春の終わりを表す言葉の意味や使い方を紹介しました。

新緑を目前にした晩春から初夏にかけては、上記のような、過ぎゆく春を表現する言葉や春の終わりを惜しむ言葉が用いられます。

この時期の手紙においては、これらの言葉を使って季節の情感を表しながら相手の様子を気遣った挨拶文を届けてみると良いかもしれません。

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言葉の意味

5月に送る手紙の挨拶文に用いる「春の終わり」を表す言葉5つ意味と使い方は?現役ライターがサクッとわかりやすく解説

5月は春から夏に移り変わる時期で、夏が近づいてくると同時に、春に別れを告げる頃でもあります。

今回の記事では、5月に送る手紙の挨拶文に使用する「春の終わりを表す言葉」(晩春・残春・惜春・向暑・暮春)の意味と使い方を、翻訳経験のある現役ライターの筆者が説明していきましょう。

5月に送る手紙で時候の挨拶に用いる「春の終わり」を表す言葉5つ 意味と使い方

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5月に送る手紙のあいさつ文などでは、夏の始まりを表す言葉も使いますが、春の終わりを表す言葉を使うこともあります。

ここでは、後者の言葉で代表的なものを5つ挙げて、その意味や使用例を紹介していきましょう。

 

#1 晩春(ばんしゅん)

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「晩春」は、「春の終わりごろ」「春の末」を表す言葉です。二十四節気の清明から立夏の前日まで(4月5日から5月4日頃)にあたりますが、実際には4月上旬は春の終わりというより春が始まったばかりと感じる人が多いため、もう少し後からの季節を指すと考えて良いでしょう。

「晩春の候」などと使いますが、5月上旬を過ぎたら「立夏の候」の方が適切かもしれません。

「晩春」は、挨拶文などにおいて、次のように使用することができます。

「晩春の候、皆様には健やかにお過ごしのこととお慶び申し上げます」
「晩春のみぎり、新しい環境にも慣れますますご活躍のことと存じます」

なお、現在では春といえば3~5月を思い浮かぶますが、暦上では「立春から立夏までの間が春」とされる時期となります。

旧暦では、春を初春・仲春・晩春の3つに分けて「三春」としました。

初春は、立春(2月4日頃)から啓蟄の前日(3月5日頃)までのことで、現在の2月頃のこと。

仲春は、啓蟄(3月6日頃)から清明の前日(4月4日頃)までのことで、現在の3月頃のこと。

そして晩春は、清明(4月5日頃)から立夏の前日(5月5日頃)までのことで、現在の4月頃のことを指します。

晩春といえば、まだ肌寒い日もあります。そんなとき、「春寒の候」「余寒」「花冷え」のような言葉は使えるのでしょうか。

「春寒の候」「余寒」は、啓蟄の前日(3月4日頃)までに使う言葉ですから、5月にはふさわしくないでしょう。

「花冷え」は、桜の花が咲くころに寒さが戻ってくることを表す言葉なので、4月中旬頃までに使うのが適切です。

なお、北海道には「リラ冷え」という、5月下旬頃から6月初めの寒さを表す言葉があるそうですよ。

#2 残春(ざんしゅん)

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「残春」は、「残り少なくなった春」「春のなごり」「晩春、春の末」といった意味を持つ言葉です。

「残春の候」は「晩春の候」と似た意味になり、次のように用いることができます。

「残春のみぎり、いかがお過ごしでしょうか」
「残春の候、皆様には健勝にてお過ごしのこととお慶び申し上げます」
「残春のみぎり、皆様お変わりありませんでしょうか」

\次のページで「惜春(せきしゅん)」を解説!/

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