「応じる」と「よる」は日常、それぞれ「~に応じて」「~によって」という形でよく使われています。いずれも、ある物事の状況や状態と向き合ったときに使われる言葉ですが、意味や使い方に違いはあるのでしょうか?今回の記事では、「応じる(~に応じて)」と「よる(~によって)」、それぞれの持つ意味と使い方の違いについて、新聞記者歴29年の筆者が詳しく解説します。

「応じる(~に応じて)」と「よる(~によって)」は違う意味?

「応じる(~に応じて)」と「よる(~によって)」は、置き換えても問題がない場合がある一方で、意味が変わってしまうケースもあるので、使い方に迷うことがあるかもしれません。

ここでは、それぞれどんな意味があり、またどのようなケースで用いるのか、使い方と使い分け方を説明していきます。

「応じる(~に応じて)」の意味

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「応じる」の「応」にはいくつかの意味がありますが、この場合の意味は「対処する・処理する」「ちょうど合う・ふさわしい」の2通りでしょう。二字熟語でいえば「対応」と「相応」です。

つまり「~に応じて」と言うとき「それぞれの場面や人、状況に対応して、それにこたえた行動を起こす」という意味、また「それぞれの場面や人、状況・条件に見合った、それにふさわしいもの・こと」という意味の、2通りの解釈ができるといえます。

それぞれの使用例を、以下に紹介しましょう。

「応じる(~に応じて)」の使い方

【対処する】

「状況に応じてご相談ください」

「情報量に応じて、ページ数を変えなくてはいけない」

【ちょうど合う】

「金額はデータ量に応じて決まります」

「予算に応じて最適なオプションプランを提供します」

「チャートのランキングに応じて、商品の価格が算出される」

「応じる(~に応じて)」をほかの語と置き換えてみると

【対処する】の場合の「~に応じて」は「~を見て」と置き換えると、分かりやすいかもしれません。

また【ちょうど合う】の場合では「~に合わせて」と置き換えが可能です。

「よる(~によって)」の意味

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「よる」と一口に言っても、漢字にすると多くの候補が挙がります。「因・由・依」「拠」「寄」「選・択」「撚・縒」などですが、通常「~によって」と言う場合は「因・由・依」か「拠」を選択するのが自然でしょう。

「因・由・依」であれば「物事の原因となる」「手段とする」「ある物事に関係する」「状況・状態に依存する」という意味になります。

「拠」であれば「ある物事の根拠・基準・理由となる」ということです。

では、それぞれの使用例を、以下に紹介しましょう。

「よる(~によって)」の使い方

【原因となる】

「予想外の悪天候によって足止めを食らった」

「株価の暴落によって窮地に陥った」

【手段とする】

「要求は武力によって圧殺された」

「ICT関連の見直しによってサービスの質が変化した」

【関係する】

「同じ料理でも、地域によって味付けが変わる」

「顧客の反応によって、キャンペーンの実施期間が変わる」

【依存する】

「このアプリは利用環境によっては動作保証外となります」

「時と場合によっては大変失礼に当たるケースもある」

【理由となる】

「体質によって効果が出ない場合がある」

「社内規定によって処分を受けることになった」

「よる(~によって)」をほかの語と置き換えてみると

理解しやすくするため、再び置き換えを考えてみましょう。

【原因となる】の場合の「~によって」では「〜のために」、【手段とする】では「〜を使って」、【関係する】は「~に合わせて」と置き換えられます。

また【依存する】では「~の条件次第では」、【理由となる】は「~を基準として考えて」としてみると、分かりやすいのではないでしょうか。

\次のページで「「応じる(〜に応じて)」と「よる(~によって)」の共通点と相違点」を解説!/

「応じる(〜に応じて)」と「よる(~によって)」の共通点と相違点

それぞれの意味や使い方については、上記のようになります。すでにお気付きの方もおられると思いますが、「~に応じて」と「~によって」は置き換えが可能なケースもありました。

たとえば【対処する】の例文「情報量に応じて、ページ数を変えなくてはいけない」は、「情報量によって〜」と書き換えても意味は通じます。また【関係する】の「同じ料理でも、地域によって味付けが変わる」では、「地域に応じて〜」でも特に問題ないでしょう。

ですが【ちょうど合う】の「金額はデータ量に応じて決まります」を「データ量によって〜」とすると、相応のという意味が失われ、ニュアンスが変わってしまいます。さらに【理由となる】の「体質によって効果が出ない場合がある」を、「体質に応じて〜」と書き換えては意味が通じなくなるでしょう。

つまり、「応じる」が【対処する】、「よる」が【関係する】の意味で使った場合のみ、使い分けが不要。そのほかのケースでは、しっかりと意味を考慮して「応じる」「よる」を選択しなくてはなりません。

意味を考えて上手に使い分けを

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以上、「応じる(~に応じて)」と「よる(~によって)」の違いについて、詳しく解説してきました。

2つの語を同じ意味で使うことができるケースは限られていて、多くは異なる意味を持っています。まず、どういうことを言いたいのかを、きちんと把握することが大切です。その上でどちらを使うのが適切なのか、判断するとよいでしょう。

上手に使い分けると、言いたいことがしっかりと伝わるようになります。どちらを使ったらよいのか迷った時には、今回の記事を参考にして活用してみてください。

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言葉の意味

「応じる」と「よる」それぞれの持つ意味の違いと使い分け方。新聞記者歴29年の筆者がわかりやすく解説!

「応じる」と「よる」は日常、それぞれ「~に応じて」「~によって」という形でよく使われています。いずれも、ある物事の状況や状態と向き合ったときに使われる言葉ですが、意味や使い方に違いはあるのでしょうか?今回の記事では、「応じる(~に応じて)」と「よる(~によって)」、それぞれの持つ意味と使い方の違いについて、新聞記者歴29年の筆者が詳しく解説します。

「応じる(~に応じて)」と「よる(~によって)」は違う意味?

「応じる(~に応じて)」と「よる(~によって)」は、置き換えても問題がない場合がある一方で、意味が変わってしまうケースもあるので、使い方に迷うことがあるかもしれません。

ここでは、それぞれどんな意味があり、またどのようなケースで用いるのか、使い方と使い分け方を説明していきます。

「応じる(~に応じて)」の意味

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「応じる」の「応」にはいくつかの意味がありますが、この場合の意味は「対処する・処理する」「ちょうど合う・ふさわしい」の2通りでしょう。二字熟語でいえば「対応」と「相応」です。

つまり「~に応じて」と言うとき「それぞれの場面や人、状況に対応して、それにこたえた行動を起こす」という意味、また「それぞれの場面や人、状況・条件に見合った、それにふさわしいもの・こと」という意味の、2通りの解釈ができるといえます。

それぞれの使用例を、以下に紹介しましょう。

「応じる(~に応じて)」の使い方

【対処する】

「状況に応じてご相談ください」

「情報量に応じて、ページ数を変えなくてはいけない」

【ちょうど合う】

「金額はデータ量に応じて決まります」

「予算に応じて最適なオプションプランを提供します」

「チャートのランキングに応じて、商品の価格が算出される」

「応じる(~に応じて)」をほかの語と置き換えてみると

【対処する】の場合の「~に応じて」は「~を見て」と置き換えると、分かりやすいかもしれません。

また【ちょうど合う】の場合では「~に合わせて」と置き換えが可能です。

「よる(~によって)」の意味

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「よる」と一口に言っても、漢字にすると多くの候補が挙がります。「因・由・依」「拠」「寄」「選・択」「撚・縒」などですが、通常「~によって」と言う場合は「因・由・依」か「拠」を選択するのが自然でしょう。

「因・由・依」であれば「物事の原因となる」「手段とする」「ある物事に関係する」「状況・状態に依存する」という意味になります。

「拠」であれば「ある物事の根拠・基準・理由となる」ということです。

では、それぞれの使用例を、以下に紹介しましょう。

「よる(~によって)」の使い方

【原因となる】

「予想外の悪天候によって足止めを食らった」

「株価の暴落によって窮地に陥った」

【手段とする】

「要求は武力によって圧殺された」

「ICT関連の見直しによってサービスの質が変化した」

【関係する】

「同じ料理でも、地域によって味付けが変わる」

「顧客の反応によって、キャンペーンの実施期間が変わる」

【依存する】

「このアプリは利用環境によっては動作保証外となります」

「時と場合によっては大変失礼に当たるケースもある」

【理由となる】

「体質によって効果が出ない場合がある」

「社内規定によって処分を受けることになった」

「よる(~によって)」をほかの語と置き換えてみると

理解しやすくするため、再び置き換えを考えてみましょう。

【原因となる】の場合の「~によって」では「〜のために」、【手段とする】では「〜を使って」、【関係する】は「~に合わせて」と置き換えられます。

また【依存する】では「~の条件次第では」、【理由となる】は「~を基準として考えて」としてみると、分かりやすいのではないでしょうか。

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